思い通り
楽しんで戴けたら、嬉しいです。
樹里亜は急いで部屋に戻った。
「祐樹っ!! 」
部屋で祐樹は頭上にナイフを両手で掲げ今にも振り下ろそうとしていた。
「だめーーーーーーーーぇっ!! 」
樹里亜は祐樹に抱き付いた。
「樹里亜! 」
樹里亜は腕を祐樹の首に回してしがみつき、祐樹の動きを阻止した。
「離して!
ボクが生きていたら、また誰かを殺す………………………! 」
そこまで言い掛けた祐樹の口唇に樹里亜は夢中で自分の口唇を押し当てた。
祐樹は驚き、放心状態になった。
樹里亜は口唇を離すと祐樹の肩に額を押し付けた。
「アタシが治してあげるから!
アタシが飛び切りの精神科医になって、
きっと治すから……………………………」
祐樹の顔に驚きの表情が貼り付いていた。
しかし、一瞬で祐樹の眼つきは変わり、祐樹のナイフを握った手がゆっくりと上がって行った。
気付かれないよう、静かに樹里亜の背中に狙いを定め、ナイフは樹里亜の背中を目掛けた。
「危ない!! 」
祐樹はナイフを持っていない手で樹里亜を突き飛ばした。
樹里亜の身体は勢い良く床に飛ばされた。
「祐樹? 」
樹里亜が振り返ると祐樹は自分の脇腹を突き刺していた。
祐樹は崩れる様に膝をつき、床に音を立てて倒れた。
「祐樹……………………………………?」
樹里亜は動くことができなかった。
見た事も無い広い室内に祐樹は倒れていた。
コツコツと靴音が近付いて来る。
祐樹が眼を開くと黒いズボンの裾と黒い靴が見えた。
「久遠………………………………? 」
久遠は祐樹の傍に片膝をついて屈んだ。
祐樹は久遠を見上げた。
「ボクは死んだの? 」
久遠は手を祐樹の頬に当てた。
「ええ」
祐樹は起き上がった。
「じゃあ、もうボクを欲情させてもキミの得にはならないね」
「気付いていたんですか」
久遠は祐樹に口付けた。
祐樹は眼を閉じて死神の口付けに応えた。
口唇を離すと久遠は祐樹の顔を覗き込み言った。
「でも君は、僕の手に堕ちた……………………………
永遠に……………………………………………」
樹里亜は祐樹の部屋で横たわる祐樹を見詰めていた。
祐樹が死んだとは信じたく無かった。
それを確かめる勇気が持てないでいた。
祐樹の指がピクッと動いた。
「祐樹? 」
樹里亜は微笑みかけた。
だが、眼を開いた祐樹の眼を見て凍り付いた。
その眼は、明らかに祐樹の物では無い。
もう一人の祐樹はおもむろに起き上がり、笑みを浮かべ言った。
「急所がずれてんだよ」
自分の脇腹に刺さったナイフを抜き取り、ナイフの刃を舐め、もう一人の祐樹は樹里亜の前に立ちはだかった。
祐樹は久遠に抱かれ微睡んでいた。
自分が死んだと思い込んでいる祐樹は久遠の傍で安心しきっていた。
久遠は祐樹の髪を撫で、ほくそ笑んだ。
『もう一人の君は、精子の様に女性を探し求め、次々と死を誕生させて行くことでしょう
絶大な僕の加護のもとで……………………………………』
fin
最後まで読んで戴き有り難うございました。
久遠が何故男になったかと言うと、女性を憎むと云う潜在意識持つ祐樹が女性に欲情するのは変だよなあ。
と、思いまして。
後、女性だとどうしても雰囲気がいやらしくなりそうな気がしたからです。
読んで下さいました皆様、お疲れ様でした。
そして、有り難うございました。




