ドM男の異世界TS転生ライフ
初の短編です。楽しんでもらえたら嬉しいです。連載小説もやってるのでそっちもよろしければご覧ください。
夜の街に様々な光が輝いている。車の騒音、街灯の明かり、人の流れ、そんな都会の風景に溶け込んでいる一つの建物。ただのビジネスホテルであるその建物の一室では、今とある出来事が起こっていた。
「やってくださいよ!思う存分!」
「い、いや、その」
二人の男性がベットの上で揉めている。いや、正確には片方は狼狽えているのだが。
「なんでやらないんですか!?あなたがヤるって言ったからこうして待っているのに!」
「いや別に、そういうつもりじゃなかったんだが」
ベットで四つん這いになっている男、この男の名は感応快一25才、しがないサラリーマンである。そして、もう一人の男は快一の上司であった。
「あの言葉は嘘だったんですか?俺を弄んだんですか!?」
「いや、だから」
快一は上目遣いで上司を見つめる。対して上司は後悔していた。あの言葉のせいでこうなってしまった、あの言葉さえ言わなければと。
「あんたが、あんたが本気でヤるっていうからこうして待ってるのに!!」
「まず、上司に対してその口の聞き方がどうなのかと、後その言葉に語弊がありまくりなんだけど!?」
時を少し戻すと、もともと快一たちは今日の取引先との打ち合わせでのことについて話をしていた。快一が取引先に対して失礼な態度を取ってしまったため上司は快一を怒っていた。
快一の態度についての話から上司の昔話にシフトしてかれこれ一時間経った頃だろう、上司はたまった怒りから、
「お前が本気を出さないなら、俺が気合いを入れるためにビンタでもしてやろうか?」
この言葉を口にしてしまった。それがまずかった。快一はその瞬間に目の色を変えたのだ。一瞬でベットの上に移動すると、ズボンとパンツを脱ぎ捨て
「じゃあ強めでお願いします!」
と言った。そう、快一は正真正銘のM、マゾなのである。その快一にとってビンタをしてくれると聞いたら、頭の中はお祭り状態である。
そして、そのことを知らなかった上司は完全にドン引きしていた。部下がこんな性癖を待っているとは思わなかったからだ。いきなりの出来事に混乱する中、今現在に至る。
「いい加減にしてください!俺、もう待てないんです!早く、ください!」
「お前その言い方やめろ!」
多分快一はビンタするまでこの調子のままだろう。上司は意を決して快一の尻にビンタをする。
ビシ
「なんですかそのビンタは!?もっとできるでしょう!」
「はあ!?」
快一にとってこの程度のビンタでは物足りないらしい。快一は抗議の声を上げるが、上司はもう限界だった。男の尻を見せられた挙句ビンタをする。それだけで上司の心は疲弊してしまった。
「む、無理だ。俺にはもうできない」
「諦めんなよ!もっと頑張れよ!」
「本当にお前俺の部下だよね!?」
もう意気消沈している上司の姿を見ると、快一は動き出した。素早く、脱いだ服を着ると部屋の外へ、
「上司に弄ばれたー!!」
そう叫びながら走り出す。階段をダッシュで下りると、ホテルから飛び出した。快一は走った、とにかくできる限り走った。なぜ走っているのか彼自身も分からなくなっていたが、それでも走った。
その時だった。快一の前に突然光が差し込んできた。快一は一瞬目を閉じてしまう。次の瞬間、その光の正体が大型のトラックであることがわかった。しかし、そのトラックは快一めがけて猛スピードで来ていた。快一は避ける時間すらなく、そのまま意識が消えていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「う、うーん」
目をうっすらと開ける、そこはまるで見たことのある景色だった。
「3バンノバンゴウヲオモチノカタハ、2バンマドグチマデオコシクダサイ」
ずらっと並べられた長椅子、それに座る人々は籠絡男女様々だった。その人たちは手に小さな紙切れを持っている。前には番号を表示する機械とともに、受付のように人が椅子に座って待っている。まるでここは、役所の窓口のようなところだった。
「番号はお持ちですか?」
突然女性から話しかけられた。よく見ると
受付の人と同じ服装をしている。シャツにベスト、スカートといったビジネススタイルだった。
「多分、持ってないです」
番号がわからないため少しあやふやに返事をしてしまう。
「では、こちらをお手になって番号が呼ばれるまでお待ちください」
そう言って'11'の番号の書かれた紙切れをもらう。多分、他の人が持っているものと同じものだろう。
「わかりました」
返事をすると、とりあえず近くの長椅子に座る。分からないことがありすぎるため少し整理しよう。俺は確か、上司と外回りをして、そのあとホテルで怒られて、ビンタするって言われて舞い上がって、それから……、そのあと走ったんだ!で、そのあとは?
「11バンノバンゴウヲオモチノカタハ5バンノマドグチマデオコシクダサイ」
考えてる間に自分の番号が呼ばれたらしい。とりあえず、窓口まで向かう。5番と書かれた窓口には、他の窓口と同じく女性が座っていた。
「11番の方ですか?どうぞそちらにお掛けください」
「あ、はい」
とりあえず、椅子に腰掛ける。
「11番様、感応快一様でよろしいですか?」
「はい、そうです」
机の上に置かれた液晶画面を見ながら、女性は俺の名前を答える。どうやら画面には俺の個人情報が表示されてるらしい。
「快一様、この度はご愁傷様です」
「ご愁傷様?」
なんでご愁傷様?俺、なんか不運なことあったっけ。
「もしかして、こちらに来られた理由がわかりませんか?」
「え?ええ、はい」
ここに来たのだっていつのまにかいただけだし、理由と聞かれてもわからない。というか、そもそも俺はホテルを出て走ってたはずなのになんでこんなところにいるんだ。
「少々お待ちください。えーと、快一様は、と」
女性は手慣れた手つきで机に置かれたキーボードを叩く。しばらくすると、打鍵音が止まった。
「なるほど、快一様は突然の事故だったために説明がされてなかったんですね」
「事故?」
事故なんて、そんなこと……。
「あ!思い出した!俺はトラックに轢かれたんだ!」
勢いよく叫んでしまったため、女性は驚いてしまった。軽くすいませんと謝る。
「突然のことに驚かれるのは当然だと思います。こちらから説明させてもらいます」
「はい」
ごほん、と咳払いをすると女性は説明を始めた。
「まず、残念なことに快一様はお亡くなりになられました」
「っ……やっぱり、そうなんですか」
忘れていた記憶の最後には猛スピードでトラックが俺に向かっていた。あのスピードでは俺は避ける間も無く轢かれていて、最悪死亡していてもおかしくない。ただ、やっぱり死んだと言われると悲しみを感じる。
「本当なら、死の直前に私共が説明に伺うのですが今回の場合のように急な死の場合は対応が遅れてしまうんです」
申し訳ありませんでした。と女性はお辞儀をした。謝られても、こっちとしては死んだ実感もないのだが。
「亡くなった人たちは魂となって、こちら、転生管理局へと送られます。ここは、来世を決める場所なのです」
転生、という言葉に反応してしまう。小説とかで聞いたことはあるけど、本当に実在するんだ。ていうか俺は今魂の状態なのか。
「転生では、前世の知識や経験を持ったまま来世の世界で生まれ変わることができます」
やはり、小説通りのようだ。
「快一様は来世にご希望はございますか?」
そう言われると、タウンページほどの厚さの本を出される。その本を開くとさまざまな世界についてのことが書かれていた。
「そちらの本には、転生で行ける世界について書かれておりまして。冒険ができる世界、前世と変わらないような世界、もっと文明が進んだ世界等いろんな世界が載っています」
ペラペラとめくると、冒険者求むとか、宇宙を旅しないか?などキャッチーな言葉とともに説明が載っていた。
「何がしたい、とか何が欲しいなどのざっくりとしたものでも検索は可能ですのでご希望がありましたらお聞かせください」
何がしたい、か。俺が前世にやり残したものってなんだ?俺がやりたかったこと。やりたかったこと?やり、やり、ヤり?
「痛くされたいです」
「痛く……はい?」
女性が困り顔になる。
「とにかく痛くされたいんです」
「い、痛くとは叩かれてとかつねられてとかの痛みという意味ですか?」
「はい、そうですけど」
女性の顔がみるみる歪んできた。
「えーと、そうですね。戦いの中でついた傷が、生涯の証になるとかそういうことですか?」
「いいえ普通にムチで打たれたり、叩かれたりです」
やり残したこと、やりたかったことなど等に決まっていた。痛くされること!それだけだ。女性は慌てた様子で本をめくったり、キーボードを叩いたりしていた。
「えーと、ですね。誠に残念ながら、そのような転生先が見つかりません」
「まじですか!?」
ものの数分で俺の夢は崩れ去った。
「快一様の場合、20代という若さで亡くなられたため転生規約によってそれ以上で生きるように転生しなくてはいけなく、快一様の希望の条件だとその条件に当てはまらないんです」
多分他の人からしたら好条件なのだろうけど、俺にとってはめちゃくちゃいらねえ。どうしよう。望み通りの世界に行けないのなら、もうどこでだっていいかな。だって痛くされないし。
「そしたら、なんか適当でお願いします」
「て、適当ですか?」
望み通りにいかないのなら真剣に考える必要はないだろう。どうせ色々されないみたいだし。
「で、でしたら人気のこの世界なんてどうでしょうか?」
渡された紙には、いかにもなファンタジーな世界が描かれていた。
「こちらでは魔王が世界を支配しておりまして、冒険者となってモンスターを倒したりなどの冒険ができます」
「あー、じゃあそれでお願いします」
どちらかというと冒険者より、モンスターになる方が楽しそうなんだけどな。冒険者とかがいじめてくれそうだし。こっちの態度を察してか、女性は申し訳なさそうな顔をしている。
「今回、ご要望にお応えできなかった分は色々優遇させてもらいます。本当に申し訳ございません」
「い、いえいえ、とんでもない。こちらこそ……いろいろすいません」
深々と頭を下げられたら、こちらとしても申し訳ない。まあ、自分で言うのもアレだが要望自体がぶっ飛んでる内容だしな。
「それでは、転生についての諸注意を説明させてもらいます」
その後十数分、説明を聞いてから別室の転生の間と呼ばれる場所に案内された。部屋の床にはよくわからない魔法陣のようなものが描かれており、周りは灰色の壁が囲む何もない空間だった。
「どうぞ、そちらの魔法陣の中央へ」
魔法陣の中央に立つと、女性は持っている端末(多分ノートパソコン)を操作し始めた。その瞬間、魔法陣が光り輝き始めた。
「規約によって、人に見られる場所には転送できないため街の近くの森林に転送します。なので向こうに着いたらまずは街に向かってください。街に着けばあなたのことも含めて諸々の情報は得られるはずです。後はご自由に生活を楽しんでください」
諸注意の時に言われたが、俺が転生先でどのような姿になるのかなどのことは事前に知ることはできないらしい。能力についても転生を公平にするために一つを除いては決めることができないとのこと。
他の人たちはその一つにチート級の能力を所望するらしいが、俺はお任せにした。女性曰く多少は優遇処置を取ってくれたみたいだが。
少しずつ光の粒子が俺の体を取り囲んでいく。
「あの、いろいろありがとうございました」
結果として、来世の生活を良いものにしてもらえたのにあんな態度では嫌な客である。最後に深く頭を下げる。
「いえいえ、よい転生ライフを」
顔を上げると女性はにこりと微笑んでくれた。その言葉とともに俺の意識は光に呑まれて消えていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
チュンチュンチュン
チュンチュンチュン!
チュンチュンチュン!!
チュンチュンチュン!!!
う、うるさい!
目を開けると、目の前には無数の鳥がこれ見よがしとばかりに群がり、メスに求愛行動だろう動きをしている。俺が動きはじめたのを見ると、鳥たちは飛び立ってしまった。
「なんだ?あの鳥」
鳥の模様が独特であり、今まで見たことのないような体躯をしている。あ、そうか俺転生したんだっけ。てことはここはファンタジーな世界なのか?
「ふぁ、ふぁー、んん!」
大きく伸びをすると不意にあくびが出てしまう。ん?なんか声が変だ。とりあえず立ち上がってみると、ふらついて倒れてしまう。
「これって、重心のバランスが変わった?」
転生後の姿が転生前と変わったせいか、体のバランスが取りづらい。なんとか立ち上がると周りを見渡す。周りは木々が生い茂っていて目の前には大きな湖が広がっていた。
「水面なら今の姿を確認できるか」
まだ慣れぬバランスで歩きながら湖へと向かう。湖の水は透き通っており、遠くの方では魚がたくさん泳いでいるのが見える。
少し緊張しながらも水面へと顔を向ける。そこには、想像もつかない姿が映し出されていた。
「え!嘘、これが、今の俺?」
その姿は、まだ幼く中学生くらいであろう見た目の白いワンピースを着た少女であった。ただ、普通と違っていたのは背中には真っ白で小さな翼が生えており、頭には金色に輝くリングが浮いていた。その姿は言うなれば天使の姿そのものだった。
「え、これって生えてるの?これ、なんで浮いてるの?」
翼やリングを触ってみるが抜けたり外れたりする様子はない。翼においては少しくすぐったさを感じる。
「って、たしかにそっちも驚くけど……こっちも驚くよな」
ゆっくりと胸元を触ってみる。まだはっきりとした膨らみはないが、明らかに男の胸とは違う柔らかさがある。股間に手を当ててみる。その手は何かに触れる前に、股に触れてしまう。あるものが無い、いやあったものが無い。体は完全に女の子のそれだった。
「い、いくら優遇するとか言われても女の体なんて……」
興味がないわけでは無いが、特別なりたかったわけでもない。嬉しいような、悲しいような。
そうだ!街に行かないといけないんだった。とりあえず考えるのは後だ。立ち上がると、草が生えている中で地面がむき出しになっている部分を見つける。それは長く続いていた。これが、道なのかな?とりあえずこの地面を進むことにする。
ガサガサ、ガサガサ
!?
進もうとした矢先、林の方から物音が聞こえる。ファンタジー世界ならモンスターとか出てきてもおかしくないよな。物音は大きくなり、突如なにかが飛び出してきた。
ポヨポヨ
「これ、スライムなのか?」
見た目が青色、頭の先っちょがちょんと跳ねているぽよぽよ?した物体。多分、スライムで間違いないはずだ。どこに目があるのかは確認できないが、俺を認識してるのは間違いないだろう。
ポヨポヨ、ポヨー!!
と、冷静に分析しているとスライムは襲ってきた。こっちめがけて体当たりを仕掛けてくる。
「う、痛!」
見た目と違って体当たりは結構な威力があった。例えるならそこそこ痛いビンタくらい。スライムは休む間も無く体当たりを続けてくる。
「痛、痛いって!ちょ、待って!ん!」
スライムは何度も体当たりをする。俺は何度もそこそこ痛いビンタをくらう。
「ん!これ、痛!結構、い!いいかも!?」
痛みが丁度いい。このそこそこ痛いビンタくらいの威力が程よく感じる。もちろん痛みはあるし、肌も赤くなってきている。でも、いい、気持ちいい。これだよこれ!俺が待ってたのは!上司にしてもらいたかったのはこれなんだよ!
「いいよスライム!もっと、もっと、もっと来いよ!!」
少しだけ身じろぎするスライム。すると、体を揺らしながら。
ポヨポヨポヨポヨポヨー!!
よくわからない声?を出し始める。すると、途端に周りの草むらから物音が鳴り始める。
ポヨポヨ!
ポヨポヨ!
ポヨポヨ!
草むらからは無数のスライムが姿を現した。ざっと数えても十数体はいるだろう。
「おお!待ってました!」
数が増えるのはこっちとしても好都合だ。だってもっとして欲しかったし。俺は両手を広げて待ち受ける。
「ほらほら、もっとやってよ!」
スライムは一斉に俺に体当たりを仕掛けてきた。体中にビンタのような痛みが走る。
く、くううう。これ、これなんだって!この感覚が堪んないんだよ。このスライムの弾力とその反動で痛みが体中に広がって、でも長く響かないあっさりした感じ。もっと、もっと、もっと!!
側から見たら、俺はスライムに蹂躙されているのだろうが俺は苦しむよりもむしろ喜んでいる。不思議と痛みがあっても、死の危険を感じない。そのためスライムたちがへばっていても、俺はまだまだ耐えられていた。
「ほらそこ!休んでないでさっさとする!そこも、勢い無くなってるよ!そんなんじゃすぐにやられちゃうよ」
スライムの動きが徐々に遅くなっていく。どうやらバテ始めたようだ。その時だった。
「そこから動かないで!」
一瞬声が聞こえたと思ったら、目の前を何かが横切る。それは、周りのスライムを巻き込んで吹き飛ばした。木やら林に飛んで行ったスライムたちは早々に森の中へと逃げていった。
「あ〜、あともう少し味わっておきたかったのに」
体が熱を帯びている。もう少しで満足いきそうだったのに、まるでメインディッシュだけおあずけを食らったような状態だ。そんな中、目の前には一人の少年が立っていた。
「大丈夫でしたか?怪我とかは?」
優しそうな顔で心配する少年。片手には少年の体躯と同じくらいの立派な大剣を握っている。背丈はそこまで大きくはなく、見た目的に中高生くらいかな?って、そんなことより。
「なんて事してくれたんだよ!あともうちょっとで満足いったのに!」
「え、ええ!?」
上司にはおあずけされて死んじゃうし、今度はスライムに寸止めとかもう我慢の限界である。とにかく、体を満足させなければ。
「叩いて」
「え?叩く?」
少年は鳩に豆鉄砲でも喰らったような顔をしている。
「そう。えーと、お尻でいいか。叩いて今すぐに思いっきり!」
「い、いやいやそんな事できませんよ」
「お前もかよ!」
こいつもあの上司のように躊躇うのか。最近の男は草食系が多いとは聞くけどもっとガツガツしててもいいと思う。
「いいからやれって!俺が言ってるんだから!」
「いや、天使様にそんなことしたら僕が罰せられてしまいます!」
「天使様?」
天使様って、俺のことか?
「なんで天使を叩くだけで罰せられるんだ?」
「そんなの、天使様が神聖な存在だからに決まってるじゃないですか」
神聖な存在?もしかして、これが優遇処置ってことなのか?
「天使の種族は世界を救ったという伝承があるほどにすごい力を持った種族で、加護の力で災いを退け、世界に恵みをもたらすと言われています。そんな天使様を叩いたなんて日には、僕が吊るし上げられてしまいます!」
加護の力、恵みをもたらす。どうやら転生管理局の女性が言っていた優遇処置というのは、この天使族に転生したことみたいだ。ある意味存在自体がチートみたいなものらしいし。
「なるほど。じゃあ、早速やってくれ」
「話聞いてました!?」
「いやいや聞いてたよ。まあ、短い人生だったと腹をくくって……「人を勝手に殺さないでください!」」
うーむ。どうしたものか。このままでは話が進まないし、実際もう痛み引いてきてるしぶっちゃけ満足感とかどうでもよくなってきたのだが。でも、この小柄な体で身の丈ほどの大剣を振るう腕力から放たれるビンタ……ごくり。気になる。
「あー叩かれないと、じ、持病の癪が悪化して死んじゃうかもしれないー。あー叩いてくれれば治るのになー叩いてくれさえすればなー」
「……それって本当ですか?」
「本当本当マジマジ!」
少年は疑った目を俺に向けている。往生際が悪いな、こうなったら。
「お願い!一回だけ!一回だけで満足するから!お願いします!」
「い、いやちょっと!」
少年の方に向かって頭を思いっきり下げる。そう、最終手段土下座である。とにかく何回も何回も頭を地面につけながら頭を下げる。多分少年はあたふたしてるだろう。でも構うものか。
「わ、わかりました!一回だけ、一回だけですよ」
「本当か!?」
顔を上げると困った顔の少年、以外に可愛いなこいつ。ようやく納得してくれると俺は少年に背を向けて四つん這いになる。
「では、思いっきりお願いします。手加減したらもう一回ですからね。思いっきり、全力でやってください」
「はい……わかりましたよ、もうどうにでもなれ!」
少年の息づかいが聞こえる。どうやら深呼吸しているみたいだ。多分、俺が同じ年の頃にこんな女にあったら一生のトラウマものだとおもうけど、まあいいか。
「いきますよ」
遂にくる。念願の、激しい痛みが、くる!
ヴァン!!!
「いっ!っ!たぁぁぁぁ!!!おぶ!!」
一瞬の出来事だった。痛みが来た瞬間に体が浮いた。そして慣性の法則に従って前の林に一直線に突っ込んだ。まるで、大砲か何かでお尻を打たれたような、そんな衝撃が、た、た、たまんない!!!!!
何これ何これ!?ヤバイ、今までの痛みなんかどうでもよくなるくらいの威力、衝撃、感触。そのどれもがただ痛いだけじゃなくて体全体に向けて放たれては戻ってきての繰り返しで体中をくまなく駆け巡っている。
「て、天使様!だ、だ、大丈夫ですか!?すいません!やりすぎました」
少年は慌てて俺に駆け寄ってくる。俺の姿はといえば、林に突っ込んだままお尻を手で押さえている。じゃないと痛みに翻弄されそうになる。それくらい少年のビンタはすごかった。
「いや、大丈夫、だから。少年、いいビンタ、持ってんじゃねえか」
「は、はあ、どうも」
それからしばらく、俺はお尻の痛みに悶絶していた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「えっ!?それだけで?」
「はい。天使族はそこにいるだけで土地が豊かになる能力があるらしく、種族のほとんどは街を転々と回ってその街から報酬金をもらって生計を立てています」
「それって人生遊んで暮らせるのでは」
俺は今、少年の案内で近くの街まで向かっている。少年は俺のことを迷子の天使と勘違いしたみたいだ。少年は冒険者らしく、ギルドに行けば天使の情報もわかるらしいのでそこまで送ってもらうことにした。
「と、名乗るのが遅れました。僕の名前はノーマ・アブール 、冒険者をしています。天使様の名前はなんですか?」
「あー、俺はかい……あ!」
今の俺って女じゃん!女が快一なんて名前怪しまれる。他にそれっぽい名前考えないと、名前名前……。
「かい、あ。カイアさんと言うんですか!よろしくお願いしますねカイアさん」
「え?あ、よ、よろしく」
なんか咄嗟に出た声から名前が完成していた。まあいいか、カイアで。
「にしても、カイアさんはなんであんなところにいたんですか?」
「えーとね、なんか色々あってあそこにたどり着いて」
「訳ありなんですか。大変なんですね」
転生とか諸々話してもややこしくなるだけだろう。とりあえずこの場は誤魔化しておくことにした。
そうこうしているうちに、大きな門が見えてくる。これが街の入り口だろうか。門の手前には小屋があり、何人かの守衛が立っていた。ノーマは守衛のもとへも行く。
「冒険者のノーマです。こっちの天使様は僕の連れです」
バックから交通手形のようなものを守衛へと渡す。
「はい、確認できました。それにしても、天使様がお越しになるのは数ヶ月先と聞いていましたが」
「どうやら迷子みたいなんです。ギルドに情報がないか確認しに行きたいんですが」
「迷子……ですか。わかりました、何かありましたらギルドの方から連絡をお願いします」
「わかりました」
話が終わるとノーマは俺の手を引き門をくぐる。守衛は難しい顔をしていた。
「俺、通るとなんか悪いのかな?」
「悪いわけではないですけど、言った通り天使族は偉大な種族ですからその名を語る者も後を絶たなくて。なので、正式な手続きをしていないと怪しまれてしまうんです」
「へぇー、そうなんだ」
「それに、その、天使様は可愛いですからついつい見てしまうんだと……思います」
「お、俺が……可愛い!?」
よくよく周囲を見渡すと男の人、男の人、男の人、女の人、男の人男の人……と通り過ぎる人が俺に視線を向けていた。今の俺って、そうなのか?
少しだけ不安になり、ノーマの手を握る。そのまま街の中央、大きくそびえる建物に向かっていく。ここが、ギルドなのかな?建物の中は広く、多くの人で賑わっていた。どうやら、中は飲み屋が併設されているらしい。酒をかわしながら話に花を咲かせているようだ。どの人たちも、重そうな鎧や剣やら弓やらの武器を持っている。冒険者で間違いはないみたいだ。
ノーマはそのまま奥のカウンターのようなところに向かっていく。そこには一人の女性が立っていた。
「おー、おかえりノーマ。ってノ、ノーマが女の子連れ帰ってきてる!」
「そうじゃないですから!迷子です!迷子の天使様を保護したんです!」
「本当に〜?いつもは奥手のノーマが精一杯の勇気で手にした彼女じゃなくて?」
「違いますよ!いいから早く、天使族に迷子がいないか調べてください!」
「まあ、ノーマが天使族の子に手を出せるわけないか」
「も、もう!」
仲よさそうに二人は話をしていた。なんか弟と姉みたいな仲の良さだな。どうやら彼女はここの受付を担当しているみたいだ。受付嬢ってやつかな。
「はじめまして!私はエクス・マソーチス。よろしくね。あなたは?」
「カイア、です」
「カイアちゃんかー、よろしくね」
挨拶を済ますと、エクスさんは机にあるよくわからない機械?のようなものを操作し始めた。見たことないなあの機械。
しばらくするとエクスさんの手が止まった。
「うーん、特に天使族で迷子があったなんて話は来てないみたいね」
「え!?じゃ、じゃあカイアさんは……」
う、怪しまれてる。ここは素直に転生のこと話した方がいいのかな。
「えっとね、実は……「フリーの天使ってことですね!?」……は?ふりー?」
なんだ、フリーって。アナウンサーじゃあるまいし。ノーマは興奮した様子で説明する。
「天使族は生まれが二種類あって、種族間で生まれるものと、神から生み出されるものの二つなんです!神から生み出される天使をフリーと呼んでいるんですよ」
「フリーって何が違うんだ?」
「えーと、種族間で生まれる天使は使命を持つんです。これがさっき言ってた街を転々とすることです。生まれ持っての仕事ってことですね。ただ、フリーの天使はこの使命を持ちません。なので、自らいろんな土地に赴いたり、冒険者にだってなれます」
なるほど、使命に縛られないってのはいいことだな。でも、それってただのフリーター天使なのでは。
バタン
「ぐ、か、帰ったぜ……」
「ちょっと、大丈夫!?」
ギルドの扉が開かれたかと思えば、そこには体格のいい男たちが全員ボロボロの格好で立っていた。どうやら手練れの冒険者のようだ。
「クエストの方は楽だったんだが、道中でドラゴンに出くわしちまってな」
ど、ドラゴン!?やっぱりそんなのまでいるのか。強靭な肉体の冒険者はようやく椅子に腰掛ける。体にはかなり痛々しい傷が多く付いていた。
「ドラゴン!?この街の近くに?」
「ああ、強力な尻尾や、ブレスの攻撃にパーティは全滅寸前だった。命からがら逃げてきたってわけだ」
!?ブレス、攻撃。尻尾。それにあの傷……。
「それなら、早く討伐依頼を出さないと。場合によっては他所から援軍も呼ばないといけないわね」
これは、チャンスだ。俺にとっての、最大の!
「俺、そのドラゴン倒します!」
俺の声とともに周りが一斉に振り向く。
「え、えっと、カイアちゃんが、ドラゴンを?」
「うん。ドラゴンくらい、けちょんけちょんだよ!」
けちょんけちょんにされるのは俺だけど。周りの人たちはみんな驚きの表情をしている。
「いやいや、例え天使だとしても女の子一人でドラゴンは危険すぎるわ」
「なら、こいつと一緒ならどうだ?」
そう言ってノーマの手を引き寄せる。ノーマの腕前ならギリギリいけるかもしれない。
「ノーマ一人だけ?うーん今ギルドにいる冒険者で腕が確かなのはノーマぐらいだし。他を待ってる時間もなさそうだし」
「いやちょっと。流石に天使様を危険なところへは連れて行けませんよ」
「なら、俺は冒険者になる!それならどうだ?」
「か、カイアさん!無茶苦茶すぎます!」
俺はフリーの天使だから冒険者にもなれるらしい。なら、ドラゴン討伐に向かっても問題はないはず。エクスさんはかなり悩んだ末に、
「天使の力なら、ドラゴンにも勝機がある、か。わかった。偵察として二人が向かうのを許可します。ただし、危険になったらすぐに撤退すること。目的は討伐じゃなくて偵察だからね。それと、カイアちゃん」
「はい?」
「冒険者になるには、試験が必要なの。だから、今回のクエストを試験の代わりとします。もちろん覚悟は出来てるわよね?」
覚悟なんてとうに決まってる。あんな、あんな、痛そうなことを仕事としてできるとか神じゃん!冒険者とか魔王討伐とかめんどとか思ってたけど天職じゃん!
「もちろん!」
「それじゃあ二人とも、気をつけて行ってらっしゃい!」
「え、ええー!ちょっと待って!」
「いいから行くぞノーマ!」
「いや、こんなパーティでドラゴンとか無理ですってばー!」
「男なら腹をくくれって」
「カイアさんこそ女の子ならもう少しお淑やかになってくださいよ〜」
ノーマの襟を掴むとそのまま引きずって行く。目指すは、ドラゴンだ!期待に胸を膨らませながら、街の外へと向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
グラグラァルゥゥアアアッ!!!
「おー!おー!いるいる!」
「ちょっと、カイアさん!前に出過ぎです!」
街から数キロ離れた草原、街道も通るその草原にヤツはいた。よくわからんが、とにかく暴れまわっている。ヤツの近くの地面は抉れ、草は焼け焦げている。不思議なことに、それを火種に火事などにはなっていないが。
俺たちはドラゴンからある程度距離を取ったところでうつ伏せになり、草むらに隠れて様子を伺っていた。
「よし!作戦はこうだ、俺が突っ込んでヤツの気を引くからその隙にノーマが偵察をする。うん、我ながら完璧だ!」
「どこがですか!?偵察ですよ!敵に向かって行ってどうするんですか!」
「情報収集だよ、情報収集。攻撃とか、行動の分析をして次の冒険者に情報を託してくれ。俺は、思う存分やられてくるから!」
「今更だけどこの天使様凄くおかしい!!」
ノーマが激しくツッコミをいれる。くっ、この真面目め。もし転生管理局の女性の話が本当なら、俺は早死にはしないはず。なら、例えドラゴンだろうとも俺に致命傷は与えられないはず。
つまり、やられ放題され放題!ノーマにはその辺でゆっくりしてもらえれば、まさにパラダイスだ。ノーマを連れてきたのも、エクスさんを納得させるためと万が一のためであるし。
と、突然視界が薄暗くなる。視線を上げると、ドラゴンさんと目があった。例えるならティラノサウルスくらいの大きさだろうか、見たことないけど。まあ、あれだけ大声で喋ってれば距離が遠くても気づくよな。
グルァァアアアッ!!!
ドラゴンの咆哮が耳に響く。脳が揺さぶられたように頭がクラクラする。ノーマを見ると、ピンピンした顔をしていた。場数の違いなのか、耐性でもあるのか、ノーマは冷や汗をかきつつ周囲を見渡していた。
「カイアさん!こっちです」
ノーマに手を引かれながらドラゴンの股下を潜り抜け、反対側にダッシュする。ドラゴンは俺たちを見ようと顔をしたに下げたせいで、動きに遅れがでる。
そこそこ距離を取れたが相手はドラゴンだ。背中の翼を広げるとこっちに向けて全速力で飛んでくる。
「ノーマ!作戦がある」
「何ですか?また、囮になるとか言わないですよね?」
「そのまさかだ!」
「却下です!無茶過ぎます」
「大丈夫。ちゃんと考えがあるから。俺を信じろ!」
ノーマと目が合う。返答に困ってるみたいだ。でも、ここで俺が囮にでもならなきゃ討伐はおろか、撤退さえできない。ノーマは苦渋の顔をしつつ、
「わかりました!でも、危険だと判断したら僕が変わりますから逃げてください」
「ありがと!勇者様!」
「っ!!」
少しだけ頰を赤くしたノーマを背にドラゴンと対峙する。ドラゴンは空中から炎を吐いて突っ込んでくる。
頼むぞ、ここで無理でしたとかになったら洒落にならないからな。
ドラゴンのブレスに合わせて、手を前にかざし受け止めるようにする。すると、
ピキーン
「ビンゴ!」
炎は手にできた光の壁のようなものに阻まれてそれ以上こっちへは来ない。しかも、
「熱が程よい感じで手に当たって、火傷とも言えないこの痛み、最高!!」
致命傷は与えられなくても、それなりにダメージはくるだろうと踏んでいた読みが的中した。手が燃え尽きる訳ではないが、それなりの痛みが伝わってくる。そして、ブレスで少し火傷のようになった手から自然と傷が消えていった。
「自己回復もあるのか、なるほどな」
傷を受けても自然に回復する。つまり、何度でもやられまくれる!
ドラゴンは一旦空中へと飛翔すると、俺めがけて落下してくる。ドラゴンの体重が全身にかかり、一瞬で視界が暗闇に包まれる。
「グァッ!!!」
全身に痛みが広がる。このズキズキと全身をくまなく巡る刺激、たまんない。
ドラゴンは大きく後ろに下がる。俺は何とか起き上がるとそこには俺の型が地面にくっきりとできていた。これ、普通なら死んでるんだろうな。普通ならば骨を何本も折ってるほどの力がかかっているのにもかかわらず、体に不自由さは感じなかった。
ガルァァギャァァ!!
ドラゴンも俺の耐久性に驚いてるのか咆哮を浴びせる。その時だった。
ギャアァァァァ!!
ドラゴンの咆哮はまるで悲鳴のように変わった。
「まったく、カイアさんは無茶しますね」
ドラゴンの後ろには大剣を携えたノーマが立っていた。ドラゴンの体には無数の切り傷がついている。
「お陰で隙だらけでしたけど。よし、これで終わりです」
ノーマは高く跳躍すると大剣を大きく振りかぶった。剣は激しく光り輝いていた。
「サジン!」
剣から放たれた光は衝撃波となり、ドラゴンを切り裂く。地面から大量の砂煙が上がり様子が見えない。
ようやく煙が収まる頃には、動かないドラゴンの上に立つノーマの姿が見えた。
「いくらなんでも無茶し過ぎですよ、カイアさん」
その姿は、まるでファンタジーの物語に出てくるような、そう勇者のように見えた。
俺はすぐさまノーマの元に駆け寄ると、右手を握り込み、勢いよく鳩尾にパンチを決める。
「痛っ!な、何するんですか!」
「何で倒しちゃうんだよ!もっと、もっと楽しみたかったのに!」
「やっぱりこの人変な人だ!」
草原の真ん中で、天使と冒険者が喧嘩をしている。空高くに昇る太陽もいつのまにか沈みかけていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「な、な、何で倒してるのよ!?偵察って言ったでしょ!」
「い、痛い。僕は止めたのに」
「えへへ、このげんこつも、結構いいかも」
あの後俺たちはギルドに報告に戻ると、エクスさんからげんこつをもらった。偵察だけと言われたのに討伐までしてしまえばしょうがないか。
「まったくもう。これ以降、こんな無茶はしちゃダメだからね。わかった?二人とも!」
「「はーい」」
「それと、カイアちゃん」
「はい?」
お姉さんの手にはカードが握られていた。そこには、「冒険者 カイア」と書かれていた。
「こ、これって」
「予想外なことになっちゃったけど、試験は合格よ。カイアちゃん、これからは冒険者としてよろしくね」
「やっ、やったー!やったよノーマ!」
「うわぁ、か、カイアさん落ち着いて」
喜びでついノーマの手を取ってしまった。笑顔を向けるとノーマは少しだけ顔をそらせる。
「ふふふ、それならカイアちゃんはノーマとパーティを組んだら?」
「パーティ?」
「ええ。なりたて冒険者一人じゃ色々大変でしょ。ノーマなら手取り足取り教えてくれるわよ」
「ちょ、ちょっとエクスさん!」
ノーマとパーティか。ノーマと出会ってからはまだ一日もたってないけど、なんかその、居心地の良さを感じた。それに、ノーマなら俺のこともわかってくれそうな……気がするし。
「よろしく、ノーマ!」
「っ!!」
ノーマに向けて手を差し出す。ノーマはいつのまにか顔が真っ赤になっていた。はて、なんでこんなに赤く?
「ちょ、ちょっとカイアちゃん!まえ!まえ!」
「まえ?」
視線を下にそらすと、いつのまにかできていたドラゴンから受けた傷跡が綺麗に服の胸元の部分だけを切り裂いて胸を露わにしていた。
「んっ!!」
なんとなく恥ずかしさを感じ、気づけば胸を腕で隠していた。帰ってくるときは服は切れてなかったし、もしかして時間差で服が破けたのか?
「あはは、これは先が思いやられるわね」
「うーー」
自分の顔が熱を帯びてるのがわかる。今まででこんな羞恥は初めてだ。
「カイア、さん。これから、よろしくお願いします」
ノーマは顔を逸らしたまま俺に言ってきた。
「だって、これじゃあカイアさんが心配ですから」
「な、な、なんじゃそりゃ!!」
こうして、俺の新たな転生ライフが始まったわけなのだが。この先に待つ、強靭なモンスターたちとの死闘(気持ちよかったです)。そして、伝説になるまでの物語はまた、別の話である。