??? どこかの舞台
(どうやらここは舞台の上。スポットライトが眩しいせいで、観客達の顔が見えない)
黄色の少年「クリック?」
観客達「クラック!!」
黄色の少年「ようこそおいでくださいました!これは君達の物語!今宵言の葉を積むぎますは、哀れな1匹のハリネズミ。身体から引き抜いた1本の針で、巧みに言葉を奏でます!」
(歓声が上がる。僕は筆を取ったが、頭は真っ白だ)
黄色の少年「おや。渋っていらっしゃる。さあさあ小さな作家様、はやくその針を踊らせて!さもなくば飽きた皆さんが、回れ右してしまいます!」
(少し待ってほしい。こんな場所で、物語が書けるわけないじゃないか……ああ、ちょっと待って。僕は座る君達の顔に見覚えがある。僕は君達を知っている……!?)
観客達「……(ざわめいている。顔は変わらず見る事ができない)」
黄色の少年「おや、そろそろ時間が迫って参りました。どうします? 1文字も書けていないじゃないですか!?」
(どうするも何も、僕は降りるよ。そもそも僕は役者じゃないし、劇作家でもない)
黄色の少年「それは許されないと思います」
(……何故?)
ナレーター:舞台に立った青年が小首を傾げていると、文字通り顔の見えない観客達が次々にステージに上がってくる。彼等は何も言わずに青年の足を、腕を、肩を掴むと、深い深い闇の底に引きずり落としてしまった。