第2章 29 同志認定……?
「一年前に……?!」
「あぁ、正確にはわからにゃいがにゃ。お前のその反応を見る限りじゃお前も転移してきたみたいだにゃ」
俺の反応を見て宛が外れたように少し残念そうな顔をするダンミミ。
いや、そんな事より、一年前にここに来たのか……?
いや、ミミックコドラがいるし、コルストって言う薬草も生えてるから色々と困らないし大丈夫だとは思うが……
「……あの、村ごと転移したってことですか?」
「まぁ、そうにゃるにゃ」
なるほど。村ごとか……
村ごと…………ん? いや待て。何か忘れてないか……? 何かが引っ掛かって……
………………………あぁっ!?
村ごと転移したってことは、もしかすると、俺たちも村ごと転移した可能性があるってことか?!
だとすると……すると……!
そこまで考えて、悪い予感が頭をよぎる。いや、まさか。そんな事はないと言いたいが、どうにも否定出来ない。
急に俺が黙りこけてしまったのを見てダンミミが不審がって声を掛けてくる。
「おい、どうした? 大丈夫か?」
ダンミミが横から顔を覗いてくる。
「……いや、そんなはず……ってうわぉっ!?」
俺は横からいきなりダンディーな顔にネコミミのなんとも言えない表情をした顔がにゅっと出てきたのでびっくりして変な声を出した。
「んにゃおぅっ!?」
「い、いきなりびっくりさせないでくださいよ……し、心臓に悪いですよ!」
俺の声にびっくりしたのかダンミミも変な声をあげた。
それにまた妙なギャップを感じつつも、俺はダンミミにそう言った。
「それはこっちのセリフだ! いきにゃり叫んだりするんじゃねぇ!
ったく……ところで、お前も転移してきたんだよにゃ?」
ダンミミがそう問い掛けてくる。さっきも言ってたがまぁ俺達も転移してきた訳で。
「そうですが……何か問題でも?」
「いや、そういうわけじゃにゃいんだが……もしかして、お前は一人で転移してきた、のか……?」
やや、躊躇うように少しだけトーンを落としてダンミミが聞いてきた。
「いえ、家ごと転移してしまってですね。家族と一緒ですよ」
「そ、そうか……にゃらいい」
どうしたんだろうか? よく見れば少しだけ安堵の表情を浮かべている。心配してくれたんだろうか?
……もしかすると、俺は人質から転移させられた同志に昇格したのかもしれない。
まぁ、いっか。元々身の危険はあまり感じていなかったし。あ、そう言えば俺も聞きたいことが。
「あの、ところでダン……ネコミミのおじさん。さっきケイトさんと話している時に、僕の首元を強打したのって、何処の誰ですか?」
俺の純粋なその問いにダンミミはビクッとしてその安堵の表情が凍り付く。
「……いや、あの、にゃ、にゃんの事で……?」
「はい。ですから、僕の首元を強打したのは誰ですか? と聞いています」
俺は出来るだけ穏やかな表情を浮かべ、それから問い掛けと同時にニッコリと笑った。
何故かダンミミからひぃっと聞こえた気がした。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「多分、レントは誰かに連れ去られたのかもしれん」
「えぇ、そうね」
カントが仕切りながら話を進める。それにベスタが頷きながら相槌を打つ。
「だから、捜索範囲としてはそう遠くないはずだ」
「そうね」
カントの言葉に即答とも言えるレベルで早い相槌をベスタが打つ。
「という訳で手分けして探すよりは皆でまとまって探した方がいいし、そうすればまた誰かが連れ去られることも……」
「その通りだわ」
遂にはカントの言葉の途中で相槌を打ち始めるベスタ。
「…………」
「……?」
当の本人は気付いていないようで、しかも悪気は全くないらしい。
「……なぁ、なんでさっきから肯定ばかりなんだ? いつもは自分の意見も混ぜてくるだろうに」
カントがため息をつきながらベスタにそう言う。それに対してベスタは、
「だって、あなたの言ってるのが間違いな訳ないじゃない。あなたの言う通りに動けばなんでもうまく行くと思うの」
屈託のない笑顔でそんな事を言う。
そんなベスタの様子をキャリルは呆然としながら見ている。
ローナに至ってはカントと同じように額に手を当ててため息をついている。
「……はぁ、あのなぁ、ベスタ。俺は神様かなんかじゃないぞ? 俺だって間違うし、ミスだってする。
俺が間違う所を散々見てきただろう?」
カントが小さい子をあやす様にベスタに言う。
「でも、あなた。あなたが考えた以外に他の方法は思い付くかしら? 少なくとも私はあなたの言った案が一番効率もよくて安全な方法だと思うのだけれど」
カントに色ボケしていても一応頭は回るようだ。カントはそれに気付いていないのだが。
「はぁ……分かったよ。じゃあ、皆。支度したらすぐに探しに行こう。もう昼過ぎだし、日が沈むまで時間が無い」
「えぇ」
「……あ、わ、分かりました!」
「……かしこまりました」
やけにため息が多いが、気持ちを切り替え、皆に声をかけるカント。
それぞれ反応は違うがレントを早く見つけたい気持ちは同じであろう。
皆、徐ろに立ち上がると急いで準備を始めた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
見渡す限りの荒れた大地。そこに不意に黒い影が差し、瞬時に通り過ぎていく。
「くくく……くははははは!
さて、面白い事になってきたぞ! 我は高みの見物と洒落こもうではないか!
……っと、その前に早く追いつかねばな」
家を出て30分程経つが、自分を罵倒しまくり侮辱した家族共は見つからない。
まぁ、何処にいるかはある程度見通して分かってはいるのだが。
「あやつらめ……無駄に動き回りおって。
近場で狩りだけしていっその事ここで暮せばいいものを……
まぁ、ここを出たい気持ちは分からんでもないが」
そう一人呟くゲイル。その独り言の間にも速度を上げ飛びながら目的地へと向かう。
「さて……次はどうでるか……非常に楽しみであるな」
ニヤリと不敵に笑いながらそのままスピードを上げ目的地へと急いだ。
もっとも、楽しみなのはゲイルだけであるのは言うまでもないが。




