表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

しばらく走って、僕らは高台の公園に辿り着いた。

 ふもとに自転車を置いて階段を駆け上り、丘の上に向かった。

 どういうわけか、二人ともまるで申し合わせたかのように走っていた。丘の上にある見晴らしのいい場所まで来て、同時に止まる。


「うひゃー、最高だね!」

「……うん」


 眼下には、一面広がる橙色。

 鮮烈な色が、知らない街を包んでいた。


「夕焼けって、こんなに綺麗だったんだ」

「何言ってんだよ、ばっか! いつだって綺麗だけど、知らないだけだろ、みんな」

「こればっかりは、全面的に同意」


 ほんのり香る雨上がりの匂いと、美しい街。体の奥でじんわりと広がる、熱。

 僕は無意識のうちに、笑顔になっていた。気恥ずかしくなったけれど、隣の千晶も笑っていたので、僕は難しいことを考えるのはやめにした。


「ねえ、千晶」

「おい、憲一」

「あ、千晶からでいいよ」

「大したことじゃねえよ、憲一からでいい」


 言葉が重なり、もどかしい時間が流れる。やり取りの末、僕が先に話すことになった。


「こうやって自転車で気ままに走って、知らない物をちょっとだけ知れた。学校サボるのはよくないけどまあ、いいかなって。だから……ありがとう」

「何だよ。あたしも同じこと言おうと思ってたんだ。全面的にどーい」

「えっ、どうして千晶が僕に?」

「誘ったのはあたしだし、自転車も憲一のだろ? それにあたしだって、憲一みたいな奴もいるって分かって、よかったよ」

「何それ、大げさだよ」

「それを言ったら憲一の方だろ。何が『知らない物をちょっとだけ知れた』だよ。恥ずかしい」


 そして僕たちはまた、笑った。



「うわ……どうしよう」


 帰りの道は、千晶が自転車を漕いだ。とはいっても下り坂。すいすいと進んで行った。

 僕は後ろでスマホを取り出し、着信のあまりの多さにため息すら出なかったのだ。

 無論、着信元は僕の母親。


「憲一の親か?」

「そう、母親。いい言い訳、何か知らない?」

「さー。あたしは言い訳しないからな。正直に謝ればいいんじゃない?」

「簡単に言うけどなぁ」


 自転車は、坂道を進んで行く。

 帰ってからのことを考えると気が重くなったけれど、まあそれはその時に考えればいいだろう。


「なあ、憲一?」

「何?」

「明日は、屋上で食べる弁当の良さを教えてやる」

「よりにもよって屋上かぁ」


 強い風が千晶の髪を抜け、僕の顔にぶつかるようにして通り過ぎていく。

 風の強い日、僕はよく自転車に乗って登校する――。


読了ありがとうございました!

ご意見ご感想など、お気軽にお願いします。

次回作でもまた、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ