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しばらく走って、僕らは高台の公園に辿り着いた。
ふもとに自転車を置いて階段を駆け上り、丘の上に向かった。
どういうわけか、二人ともまるで申し合わせたかのように走っていた。丘の上にある見晴らしのいい場所まで来て、同時に止まる。
「うひゃー、最高だね!」
「……うん」
眼下には、一面広がる橙色。
鮮烈な色が、知らない街を包んでいた。
「夕焼けって、こんなに綺麗だったんだ」
「何言ってんだよ、ばっか! いつだって綺麗だけど、知らないだけだろ、みんな」
「こればっかりは、全面的に同意」
ほんのり香る雨上がりの匂いと、美しい街。体の奥でじんわりと広がる、熱。
僕は無意識のうちに、笑顔になっていた。気恥ずかしくなったけれど、隣の千晶も笑っていたので、僕は難しいことを考えるのはやめにした。
「ねえ、千晶」
「おい、憲一」
「あ、千晶からでいいよ」
「大したことじゃねえよ、憲一からでいい」
言葉が重なり、もどかしい時間が流れる。やり取りの末、僕が先に話すことになった。
「こうやって自転車で気ままに走って、知らない物をちょっとだけ知れた。学校サボるのはよくないけどまあ、いいかなって。だから……ありがとう」
「何だよ。あたしも同じこと言おうと思ってたんだ。全面的にどーい」
「えっ、どうして千晶が僕に?」
「誘ったのはあたしだし、自転車も憲一のだろ? それにあたしだって、憲一みたいな奴もいるって分かって、よかったよ」
「何それ、大げさだよ」
「それを言ったら憲一の方だろ。何が『知らない物をちょっとだけ知れた』だよ。恥ずかしい」
そして僕たちはまた、笑った。
「うわ……どうしよう」
帰りの道は、千晶が自転車を漕いだ。とはいっても下り坂。すいすいと進んで行った。
僕は後ろでスマホを取り出し、着信のあまりの多さにため息すら出なかったのだ。
無論、着信元は僕の母親。
「憲一の親か?」
「そう、母親。いい言い訳、何か知らない?」
「さー。あたしは言い訳しないからな。正直に謝ればいいんじゃない?」
「簡単に言うけどなぁ」
自転車は、坂道を進んで行く。
帰ってからのことを考えると気が重くなったけれど、まあそれはその時に考えればいいだろう。
「なあ、憲一?」
「何?」
「明日は、屋上で食べる弁当の良さを教えてやる」
「よりにもよって屋上かぁ」
強い風が千晶の髪を抜け、僕の顔にぶつかるようにして通り過ぎていく。
風の強い日、僕はよく自転車に乗って登校する――。
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