旅に出た女
※ミステリー風ですが、あくまでもミステリー『風』であるので、クオリティは低いです。
※殺人描写あります
※前回の登場人物である、高校教師、ガキ大将、スポーツ少年、年下の男の子は登場しません。
※誤字脱字はもちろん、文章表現が至らないのが予想されます。出来るだけ見直して訂正していきます。
※作者の執筆は趣味なのでマイペースな更新です。
日向ゆき、19歳。
彼女は他人には言えない秘密がある。
彼女はとんでもない不幸体質の持ち主だった。
幼稚園の頃には、金持ちの仲の良い男の子に間違われて、誘拐された。
小学校の頃には、村八分にあっていた男が小学校に立てこもり、人質になった。
中学校の頃には、校庭にいたところに、無差別爆撃テロが起きた。
高校の頃には、修学旅行で泊まっていたペンションで、殺人が起きた。
これだけでも、相当不幸なのではないかと思う。
しかし、ゆきは実感する。
今までは序の口だったのだ、と。
ゆきが大学生になってから、既に2回の事件に関わっている。
銀行強盗事件に新幹線運転士殺人事件。
両方とも人質として、その場にいた。
大学生になってから、短期間で不幸に遭うようになった。
いつ死んでもおかしくはない。
悔いはない人生をしたい。
そう思うゆきには夢があった。
幻想的な景色を見たいという夢。
空を映した鏡のようなウユニ塩湖やばら色に染まったレトバ湖、氷の洞窟やイグアスの滝・・・。
あげたらきりがないが、できることなら見てから死にたい。
そう思ってゆきは旅に出た。
今回の旅の目的は、幻想的な風景の代名詞とも言えるオーロラを見ることだ。
旅といっても海外旅行が初めてのゆきは、ツアーで行くことにした。
お一人様でいけるツアーだ。このツアーに参加している人は、全員一人での参加だ。
一人だと気楽だという理由から、参加する者が多いようだ。
ツアーの内容はこうだった。
豪雪で有名な国の、オーロラが見える僻地のコテージに1週間宿泊する。
オーロラが見えるかどうかは運しだいだが、1週間の宿泊なら見える可能性が高いという。
自分以外の参加者はいないのではないかと危惧していたが、意外と参加者がいてゆきは驚いた。
長いフライト、そして飛行場からの長距離の移動を終えて、ようやく宿泊場所であるコテージに着いた。
ざっと見てツアー客は10人。
女性はゆき含めて4人だった。
もちろん、お一人様のツアーなので、それぞれの名前は知らない。
名前を知っている人は、ツアーガイドである男性、『樋田』と、ゆきに声をかけてきてくれて仲良くなった女の子、『マナ』だけで、それ以外は知る由もなかった。
「長い移動お疲れ様でした。本日の予定は、 夕食だけなので、それまでごゆっくりなさってください。19時から21時の間に一階の食堂に来ていただければ夕食をお出しします。あと、オーロラなんですが、使用人が交代でオーロラの出現のチェックをします。だいたい出現する時間帯は23時から朝方が多いです。なので、オーロラが出現した際は、ツアー客の皆さんが寝ていても、部屋をノックして起こしますのでご了承ください。見逃したら次いつ見れるか分からないので・・・。朝食は7時から9時の間、昼食は12時から14時の間、夕食は今日と同じ時間帯の19時から21時の間に食堂でお出しします。部屋にはストーブしかありませんので、もし灯油がなくなりそうであれば使用人に教えて下さい。部屋から離れる際はストーブは必ず消して下さい。居間には暖炉があり、常に暖かい状態にしています。お好きにご利用ください。では、お部屋に案内しますね」
樋田がそう言い、ツアー客はそれぞれの部屋に案内された。
コテージは3階建てであり、屋敷のようなつくりをしていた。
1階は居間と食堂がある。
階段を上がると左右に4つずつ部屋がある。
2部屋が横に並び、廊下を挟んで向かい側にも2部屋がある。それが階段を中心に左右あるようなつくりだ。
2階は男性客と男性の使用人の部屋、3階は女性客と女性の使用人の部屋と分けていた。
ツアーの女性は4人いた。
ゆきの部屋は3階の階段を上がって、すぐ右にある部屋。マナは、ゆきの隣の部屋。
ゆきの部屋の向かい側の部屋にはショートカットの小柄な女性が、マナの部屋の向かい側の部屋には茶髪のロングヘアーの女性が案内をされていた。
左側は女性の使用人の部屋らしい。
ゆきは部屋に入ると、鍵をかけて、部屋を見渡した。
ユニットバス付きで、シングルベッドとドレッサーしか置かれていないシンプルな部屋だ。
寒い部屋には、樋田が言ったように、ストーブしかない。
ゆきは真っ先にストーブをつけた。
そしてベッドに腰をかけて、はぁ、と息を吐く。
長旅に疲れたのだ。
ふと、部屋の窓を見ると、雪原が広がっていた。
真っ白な世界。
ゆきは、それを見て、自分がひどく穢れているように感じた。
コンコンコン
部屋のドアがノックされる音で、ゆきはハッと目が覚めた。
ベッドに横たわり、うたた寝をしていたようだ。
ゆきは解錠して、ドアを開ける。
笑顔のマナが、そこにいた。
「あ、もしかして寝てた?」
「あ、うん。ちょっと寝ちゃってた」
寝ぼけ眼で言うゆきに、マナは申し訳なさそうに謝る。
「起こしちゃって、ごめん!あのね、19時になったから夕ごはん誘いにきたの」
「あ、全然大丈夫だよ。逆に来てもらえて良かった。このまま寝てたら、夕ごはん食べれなくなってたかもしれないし」
「なら良かったぁ。ね、夕ごはん一緒に行こう?」
「うん」
ゆきはストーブを消し、部屋に鍵をかけて、マナと一緒に食堂に向かった。
食堂に向かうと数人が座って夕食を食べていた。
4人用のテーブルが沢山あり、それをほとんどが1人で座っていたが、1組だけ男性2人で座っていた。
食堂の入り口側のテーブルには、ツアーガイドの樋田が座っていて、夕食を食べているのではなく、テーブルに書類を広げていた。
樋田は、食堂に入ってきたマナとゆきを見て、紙にレ点のチェックをつけた。よく見ると名簿のようで、ゆきの名前も書かれていた。
樋田は笑顔で挨拶をしてきた。
「こんばんわ」
「こんばんわー!」とマナ、「こんばんわ、お疲れ様です」とゆきが返す。
「あはは、ありがとうございます。使用人が食事を運びにきますので、お好きなところに座って下さい」
樋田の言葉の通りに、適当なテーブルについてマナとゆきは使用人達が運ぶ夕食をおしゃべりしながら味わった。
ここまではとても楽しく、順調だったのだ。
しかし、数時間後、ゆきはやはり自分が不幸であることを実感する。
気が動転している人々が目の前にいる。
その人々の中心には、背中をズタズタに刺されているうつ伏せの死体が横たわっていた。