三人の決意
複数の人数の会話が難しいです
あと、名前を考えるのも大変でした
それではこの話で説明が終わりますのでどうぞ
Side:藍
«ただ、少々不具合もあったが、うまくいったよ。もっともそこの彼には初めからわかっていたようだが……»
な、なんだこれは……!?
あ、頭の中に直接響くようなこの感じ……!?
それにこの声……!
「悪魔! お前どこか近くにいるのか!」
«いいや。君たちに与えた力を介して語りかけているのだよ。本当はもっと遠くにいる»
「オレ達を異世界に送るよう仕向けたのもお前か!」
«いいや違う。神が君たちを異世界に送ったのは本当にイレギュラーだった»
なにがイレギュラーだ! オレ達がこんな姿になったのはお前のせいだってのに!
それに……
「マゼンタ! 知っていたなら何故オレ達に……!」
「言わなかったのだ、と。言ったらどうする気だ?」
あ? どうする気って……
「神と闘うのをやめるつもりか? 死ぬより”姿”が奪われるのが嫌だから? それとも悪魔に利用されるが腹立たしいからか? その程度で神とは闘わないとでもいうつもりか?」
「そんな訳ねぇよ! ただ、なぜ隠し事をしていたんだよ!」
「ちょっと。落ち着いてよシアン」
こいつは本当に何を考えているんだ!
すかしたような顔をして!
「シアン。お前はまさか死んで功をなすとでも言うつもりか?」
「えっ……?」
マゼンタ……?
本当にこいつはいったい何を…………
「俺は死ぬのは御免だ。死んだ所で神は人に対する認識を変えるつもりはないだろう。ならば死ぬよりも、生きて神を倒すことが何よりも大事なことだ。わかるか」
「…………」
確かに、オレ達は命をかけて神と闘っているが、死んでしまっては何も意味がなくなってしまう。
死ねば勝てなくなるのだから。
「これはチャンスだ。もう一度神と闘うチャンスなんだよ」
「チャンス……」
確かに、もう一度神と闘う事は出来る。しかし……
「お前は、その姿になっても構わないというのか」
「そうだ。こんな姿になったのは心苦しいがこれもまた仕方のないことだ」
マゼンタ……お前そうまでして…………
「もっとも。勝手にお前らまで巻き込んですまないと思っている。本当は悪魔に助けてもらった後、悪魔に頼んで俺一人でやるつもりだったんだが……」
だからオレ達に話さなかったと。
けど、神に異世界へ送られたせいで勝手に巻き込んですまない、と
まったく、なに勝手なことを言ってんだこいつは……!
「まったく、あんたって人は……」
「イエロー?」
イエローがマゼンタに近づくと……
ドゴッ!
「ぐはっ!」
と、マゼンタに思いっきりボディーブローを、って!
「なにしてんのイエロー!?」
「シアンは黙ってて」
イエローは怖そうな表情で言う。
ってか、ボディブローって普通はビンタでしょ!
マゼンタすげー悶絶してるし……
「マゼンタ。あんたってば本当にぶっきらぼうだけどあたしたちの事を考えている。でもね、あたしたちはあの時死ぬ覚悟をしていた。もちろん死ぬつもりはないし、神を倒して人類を解放する気もあった。だからね、いまさらあたしたちを勝手に巻き込まないって思ってんじゃないわよ!」
「イエロー…」
「それを知ったらあたしたちが神と闘うのをやめるとでも思ったの? バカにしないで! あたしももちろんこのことに付き合うつもりだし、あんたに勝手にあたしたちの事を決められるつもりはない。それにあんた一人にやらせるつもりもない」
そうだ。マゼンタを一人こんなことにさせる気はない。
「オレもあんたに付き合うつもりだ。マゼンタ」
「あたしたちは仲間でしょ。大事なことも危険なことも常に一緒で構わないのよ。それを信じなくてどうするのよ」
「イエロー……」
マゼンタはしばらく俯いているがやがて顔を上げると、
「すまない。一言、言うべきだったな」
「わかればいいのよ」
「お前とは、長い付き合いだしな。遠慮するな」
さてと、俺はしばらく放っておかれた悪魔に対しこう言う。
「おい悪魔。もし、姿を奪われた誰かが姿を取り戻すのを諦めたらどうする気なのだ」
確かに、”もっともなりたくない姿”は嫌だがそれで妥協してしまう人もいるのではないか。
わざわざ命を懸けるよりはましだろう。
«ふむ、そのときはな……
……契約に違反したとして、力を剥奪し、人の姿からやめさせるまでだ»
「そうか……」
オレはあまり驚かなかった。
そりゃあそうだよな。相手がその姿で妥協するなんてことを想定しないはずがないもんな。
というより脅迫だ。
……仕方ない。
「マゼンタ。イエロー」
オレは二人の名前を呼び、ある確認をする。
「もう一度神と闘う気はあるか」
まあ、マゼンタはもう闘う気だと言っているが再確認だ。
「ある。俺は神と闘い、倒す」
「あたしもよ。諦めるつもりはないわ」
やる気十分だ。
よし、じゃああとは……
「おい悪魔!」
«何かね?»
「オレ達はあんたに利用されてやる。けど、オレ達もあんたを利用してやる。お互いの最終目的は一緒だ、だから……
……オレたちと協力しろ!」
そう言い切ったオレ。それに対し悪魔は、
«……っくっくっくっくっくっくっ……»
……不敵に笑うか。
まあそうだよな。悪魔なんだし。
«悪魔に命令とは恐れ知らずだな»
「神に逆らう時点で、恐れ知らずだろ」
«確かにそうだな»
これもまた、悪魔との契約なのかな。
«いいだろう、君たちに力を貸そう。まだまだ君たちは我の力を引き出し切れていない。しかしそれは時間が足りないという事もある»
「そうなのか」
«そうさ。これから時間をかけて力の使い方を知れば、自ずと強くなるだろう»
「わかった」
«したがって、協力するのなら我の事を名で呼ぶがいい»
「名前?」
あるのか、名前?
だって神は……神ってのが名前なのか?
«我の事は『ノワール』と呼ぶがいい»
ノワール
それが悪魔の名か。
これからの関係、しっかり覚えないとな。
「わかった、ノワール。お互い利用し、利用されよう」
«そうだな»
そんじゃ、まずは……
「早速だがノワールに頼みごとがある」
ノワールにしかわからないこと。それは……
「この世界について、教えてくれないか?」
周囲の把握である。
――――――世界説明――――――
剣と魔法の世界
その中でも世界最大の大陸は魔法大陸『ヨーリア』である
『ヨーリア』は世界で最も魔法が発達した大陸である
その中でも一番の王国は『フィアーラ王国』と呼ばれる
『フィアーラ王国』を創設したものは、人類で初めて魔法を作り出した賢者であり、
その知名度は、誕生日が記念祭になるほどである。
歴代の国王は、その賢者の子孫であり、皆生まれながらにして
魔法の才を持つものである
-世界の地理と歴史『レギエス大辞典 三巻』から抜粋-
――――――説明終了――――――
Side:紅
悪魔……いや、ノワールから一通り説明を聞いた後、俺は質問した。
「ノワール。魔法とは神や天使、それに俺たちが使っている力の事か?」
そうだ。俺たちの世界では魔法とやらを知る者はそんなにいない。
五十年前の戦争では存在したらしいが、神が戦争を終結させた後、人類に二度と魔法を使えないようにするため、魔法を教えさせず、記録も後世まで残さないようにしたとか。
まあもっとも、ノワールを召喚した儀式はメンバーの一人の家が、実は隠れて魔法を教えていたからだがな。
«違う。神や天使はいわば“神の力”であり、君たちは“悪魔の力”。そしてここにいる人たちは“精霊の力”を借りているようなものだ»
「精霊?」
«そうだ。簡単に言えば自然環境に宿る魂のようなものだ»
魂、か……
俺たちには解らない概要だな。
まだ、疑問はたくさんある。それは…
「ねえ、この世界にも神はいるの?」
イエローがそう質問してきた。
そうだ。魔法があるなら、神はここにもいるという事だが。
«いいや。神はいない»
「えっ?」
……予想外だな。
ここに神はいないのか。
«ここは神が管理を放棄した世界でな。まあ、放棄とは言ってもあまり世界が荒廃した様子がないから不干渉というわけだがね»
世界が荒廃した様子がない、か……
「つまり、あたしたちの世界は干渉せざるを得ないほどひどくなっていたというわけね」
と、言うイエロー
俺たちは都市の外の世界を実際に見たことは一度もない。
だが、もう二度と人の住めない環境になっていると教わっている。
具体的な内容は聞いてないが、実際にはどうなんだろうか。
「この世界の事はわかったから元の世界へ帰る方法を教えてくれないか」
シアンが速く言ってくれとせかすように言う。
そうだな。まず重要なのはそこだな。
«そうせかすな。そもそも君たちがどうやってこの世界に来たかわかるか?»
「えっ、そりゃあ神が次元の穴っつーよくわからん穴に吸い込まれてきたが」
そうか、そういう事か。
«そうだ。次元の穴とは文字道り、別次元へ行く入り口であり出口である穴の事だ»
「それがどうしたんだよ」
まだわからなさそうなシアン
本当にこいつは理解力がないな。
「つまり。この世界にも次元の穴があるという事なのね」
イエローはわかっているようだ
少しは見習え。
「そ、そうなのか!?」
«そう。歪んだ空間の力場というところがあるのだ。そこに別世界へ行く次元の穴があるのだよ»
「じゃあそこに行けば次元の穴に入って、元の世界に帰れるのか?」
«いや、そうはいかない»
「えっ?」
«実際に次元の穴の開くには、鍵となる人物が必要なのだ»
鍵が必要か、また面倒だな。
しかも人物となるとますます面倒なことだ。
「その鍵となる人物は誰だ。そしてどこにいる」
«悪いが、教えるわけにはいかない。教えられただけでは強くはなれない。自分の体一つで探すことだね»
「おい、それはないだろ! 世界は広いんだから一生見つからない事もあるだろ!」
«やれやれ、仕方がないね。ならせめて鍵となる人物の名だけでも教えよう»
名前だけか…
シアンの言った通り世界は広い。その人物が見つかるのだろうか。
«鍵となる人物は、『フィアーラ王国』の創設者である賢者の子孫であり、その血を最も濃く受け継いでいる人物………
……リヴィア・フィアーラだ»
次に登場人物紹介を書きます。
そしてその次から主人公たちが本格的に動き出しますでどうかもうしばらくお待ちを。