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剣の記憶-影王-  作者: 青之屋
●剣の記憶-影王-●
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大祭5日前:国政の内情

 ユーロ王国の国土は、砂の海のような砂漠全体だ。

 砂漠の中に、オアシスや水が沸き起こる中に群がるように、点々と国民は住む。

 

 その中で起きた、水不足問題―


 水も限りある資源であり、永久に水が沸き起こることがありえない。

 第三次世界大戦後の穢れた世界は、戦争のせいもあって環境が安定していない。この地域は特にその影響が酷く、雨が不規則だ。しかも、ようやっと降った雨は、風向きのよって穢れた物質が入った雨もある。

 

 それだけ、前時代の人間の技術が破滅に導く技術だったか―


 世界は滅びかけた。

 初代王である賢者が人々に知恵を与えなければ、この世界は生き物全てが生きられなくなっていただろう。前時代の技術の持ち主で唯一生き残れた初代王は、罪滅ぼしの旅に出た中で、人々にこの世界でも生きる知恵を与える。

 人々が生きていられるのも、この国の初代王のおかげなのだ。

 だから、ここの国はどの国よりも崇められ、王はどの国より立派だと言う―が、今の現状では

下手すると内乱が起こる可能性が予測される。


 水不足によって―


 問題のD-19地区という場所は、前王の前の王時代に水の資源が尽きたことにより、貧困地域へと落ちぶれることになった。


「水というのは恐ろしいものだ」


 羅愛はダートトラックという、前時代の乗り物をアレンジしてこの時代に合わせたバイクを走らせながら、前方に目を凝らした。

 遠くに小さな町が蜃気楼の中から浮かび上がるように現れた。

 スピードを上げて近づくと、日干し煉瓦で造られた簡素な門が見える。

 門をくぐって、建物の間をすり抜けるように走らせ突き進めば、突き当たりに人で溢れ返る広場が見えてきた。

 道理で街中はシーンとしていて死んだように静かだったわけだ。ここら一体の人口が全部広場に結集する様は、この区間の動力が中心に集まったような、それとも蟻が甘いものに集まったような、そんな様子だ。

 

『だからであり― 我々の怒りは今最高潮に達しているのである!!』


 木材で作られた高台が広場の中心にあり、そこから声を張り上げて演説をしている輩がいる。


『新国王は国の状態を見ておらず、ただ傍観するだけである!ここ数年水は法外な取引を

され、金のない者は干からびて死ねという』


 こぶしを上げて怒鳴った声を張り上げた演説者に、広場に集まった人々は同調し気持ちを高波のように押し寄せる。


「なーんかさ、それって王がサボっているようじゃない?一応仕事しているのにねー」


 羅愛はエンジン音を大げさにふかすと、この広く騒がしい空間全体にも響くような声を張り上げ、観衆に言った。


「この広場にいる人々に告ぐ!アタシはユーロ王国軍師長 羅愛・イシュナータである!こんなところで不満ぶつけるなら、アタシに直接ぶつけてきなさいよ!!意気地無し!!!!」

『何!?国の犬だと!?」

「誰か犬だ!誰か!!!お前、今そこに行くから待ってなさい!」


 バイクのスピードを上げて、羅愛は広場に突進した。

 人が密集し、バイクによって轢かれてもおかまいない。


「轢かれたくなかったら、どきなさいよ!ほら、ボサッとしていると、大怪我しちゃうよぉぉぉぉぉ」

 

 バイクエンジンを爆音の如く響かせ、暴走族のようにスピードに乗って広間に突っ込んでくる羅愛に人々は 


「うわー鬼!」

「なんやなんや!?なんでバイクで突っ込んでくるんだぁー」

「ちょ、危ないでしょう!!」


 等など罰声し、命が惜しいために広場中央の道を作ってやるのだ。


「はいはい羅愛様が通るよー♪」


 モーゼが海を割って道を作ったように、人の海が割れて羅愛のために道が出来た光景に

羅愛は気分を良くして調子に乗る。その道をバイクでぶっ飛ばすと、いつの間にか広場の中央に聳え立つ高台のふもとに着く。

 

 びしっと人差し指を指して、憎ったらしい相手に宣戦布告をするかのように高台の相手に言った。


「よいご身分だこと、あんたは上から自分の好き勝手にしか叫ぶことしか出来ないのだ?

そういうのって、負け犬の遠吠え?に東の島国の言葉であったけど、それに当てはまるのではないかしらね?」


『言いたいことばっかいいよって、貴様になにがわかるー!!』

「いやースピーカーという道具を使ってわざわざ叫ぶ必要もなくない?というか、スピーカー使っているのに叫ぶ必要もなくない?それに、アタシがそっちに行くし!アンタちょっと待ってなさい!!」


 と指を立てながら叫ぶと、羅愛はこれでもかっ!と言うほど愛車のエンジンを吹かすと

アクセルを最大限にしバイクを走らせ、高台へと突っ込んだ。

 この光景に誰もが高見台の粉砕をイメージしたが、心配を余所にバイクは重力の関係を無視し、高見台の梯子を道路にし垂直に走っている。なんという不可解な現象!!

 あっという間に羅愛は頂上へと到着した。


「ふっ、今日も我が愛車は絶好調」

「おいおいおいおいおい、それはあり得ないだろ!!」


 幾人かの人間が化け物を見るかの如く、羅愛を凝視している。


「え?このバイクのこと?アタシの愛車の“天かける馬”という名がついている、前時代の技術が搭載されているバイクなのだ。これぐらい出来て当たり前」

「「「いやいやいやいや、それはないだろ」」」


 この場にいた数人かは否定した。

 重力を無視して、壁等垂直に走るバイクを今初めて見たものは羅愛を除いて全員だ。


「あっそうか田舎者は見たことない人もいるものね、前時代のテクノロジーを復旧したものでも最高潮である“魔法レベル”と位置づけられている中でも、上級のテクノロジーを」

「なっ、魔法レベルだと!?」

「しかも、魔法レベルの中でも上級!!?」

「な、小娘が何でもっているんだー!?」


 驚くのも無理がない、戦争によって人間の文化レベルが低下したと同時にテクノロジーの技術レベルが失われたのだ。国々はテクノロジーの利便性を欲し、国の威信をかけてテクノロジーを復旧している。だが、今の人々の技術理解は前時代の人々の理解度に到底達しておらず、まだまだ未知なるテクノロジーが山ほどあるという。

 万が一理解できたとしても、使用の方法が難易度になるモノや燃料の問題で私生活に普及できないテクノロジーが多数あるのだ。そうした中で、普及されてきたテクノロジーはレベルに振り分けられている。

 その中でも魔法レベルといえば、使用の難易度が極端に高いモノが主に位置づけられてきている。


「だから、アタシは軍師長だから持っているの!そこ、小娘とかいうんでない、失礼な」


 魔法レベルのテクノロジーは、めったに一般庶民が手に入る品物でもない。大抵、国の保管し国のために使用する物だ。


「小娘、一人で何しに来た?」


 リーダー格の脂ぎり偉そうに踏ん反り返った中年オヤジが羅愛を睨みつけるが、羅愛はそんなことお構いなく高台から広場に集まっている人々に向けて叫んだ。


「みーなーさーんっ、国からの補助金でぇーす!!これで、水でも美味いものでも買ってくださいねー!!!!!」


 羅愛が高台から投げた物

 それは―


「お、お金?」

「おい、お金が振ってくるぞ?」

「うっそ―」

「天からの恵みじゃー」

「ありがたやー」


 お金だった。

 この国の紙幣がパラパラと、例えるならば北国に降ると言われている白い雪が、そのように降ると聞いたことがある。

 降ってくるお金を必死に取る人々を眺めながら、羅愛は深いため息をついた。


「偉いでしょ?アタシの今までの貯金全部プレゼントするからさー暴動止めてくれる?

大祭前の5日間、仲良くしよーよ」


 予想にもしなかった国の人間の行動に、リーダー格の中年オヤジは間抜けな顔をして、ぽかーんっとただいるだけであった。

 今や暴動の集会所は羅愛の独壇場になってきている。


「ちょっとリーダー?貴方一体何しているわけ?」


 羅愛に横槍食らわされ、その場を取り仕切れなくなってきているだらしないリーダーを一喝する声がした。


「まぁ、人間の欲に見事に漬け込む貴方の計算も素晴らしいけどね」

「ん?」


 羅愛は声がする方向に目線を移動すると、急に素っ頓狂な声を上げた。


「あ、アンタは!!」


そこには天使のような女が立っていた。

 この地区には珍しくきちんとした綺麗な身なり、透明感溢れる白き肌に太陽の光を反射し

神々しく光る金色の髪。慈悲深き表情をした女だが、羅愛を見る目は慈悲の眼差しの奥底に闘争心が湧き水のように静かに湧き出ているように静かに見ているのだ。


「お久し振り、羅愛。ユタカも一緒なの?」

「マリア・テレアージ!!!!!」

 

 聖女のように微笑んでいるが目が笑っていない女は、周囲を見た後羅愛を再度見た次の瞬間―


 

バシュッッツ

 


 空気が裂いた音が鳴り響き、マリア・テレアージが放った鋭い鞭により羅愛を狙ったが、

羅愛は素早く剣を抜きガードした。 


「久し振りの感動もつかの間これはどうだろうね?」


羅愛は旧知の手荒い再開の儀式に、残念そうに嘆いた。


「あら、貴方が悪いのよ。いつもいつも私の邪魔をして」


 そんな羅愛をよそに、聖女は冷静に冷ややかに言い放つ。


「マリア・テレアージは暴動がしたかったのかい?さすがは、血のマリアということだけ

ある」


 彼女、マリアは聖女の顔して、戦いを常に好む性悪女であることを知っている。人々への慈悲深き助けという理由をつけて、最終的には戦いを選ぶのだ。

 今回のことも、マリアが裏でこの男を操って騒ぎを起こしたのだと結論つけると、とても納得がいき彼女らしいシナリオである。


「勘違いしないで頂戴、貴方達城に居残り組が、ちゃんと政治を行ってこなかったから

こういう結果になったじゃないの?」

「無理言う出ないよ、あの政治家体制で、大祭前の混乱はつき物だったということだよ。

確かにアタシらも、もっともっとできることがあったかもしれないが、王が皆の前にでなき

今は発言力が弱まる。所詮数だ」

「甘いわね、裏で手を回せばいいじゃないの?こんな風に」


ふっと後ろから気配がして、羅愛は体をねじって後ろを振り向いた。


「この役人めがぁぁぁ!!!!!」


 少年がナイフを振りかざす。


「ほ、ほんとーにアンタって名前がマリアなのに、汚い手使うのが好きだわね!」


 少年の手を狙って蹴ってナイフを落とすが、その間に隙ができる。


「そーやって、敵を倒すのが楽なのよ」


 出来た隙をカバーしようと右半分身体を捻るが、相手の鞭は俊足に隙を捉える。

 こんなのありかよ!って心の中で叫んで、重症につながる衝撃を覚悟した。

 だが、想像した衝撃はいつまでたっても来なかった。



「二人ともいい加減にしろ」


 羅愛とマリア・テレアージの間に入ってきて、マリア・テレアージの攻撃を羅愛の変わりに防

御した第三者が現れたからだ。


「ユタカ!!」

「なんて運がよろしいやつなのでしょう」


 ユタカは冬のような静かな眼差しを羅愛に向け、何か訴えたがっていそうな表情をした。


「う、ユタカ君やい、コミュニケーションも大切ということを毎回話しているだろうに?

確かに、アンタの無言の圧力はよく効果があるよ…。はいはい、すいませんでしたぁー

勝手に城抜けて」


 ユタカ特有の無言の圧力攻撃に、羅愛はタジタジになった。


「あと、誤ることあるだろう?」


 腕組をして考えるが、全然出てこなく「なんだっけ?」と呟くと、ユタカの鉄拳が飛んできた。


「痛いじゃないか!!」

「一人で、こんな危ないところに突っ込んでごめんなさいだろ!!まったく、羅愛お前が負傷

したら仕事は誰がやるんだ!誰が!!!!!」


 雷が羅愛を襲った。

 

「わー、仕事の鬼ぃぃぃぃぃ。普通に心配しないか!仕事のためか!?この冷血鬼!」


 相手は本当に仕事の鬼だ。

 羅愛とユタカが言い争いし始め、マリア・テレアージは無視されイライラした。


「私がここにいるのに、無視してくださらないで欲しいですわ」

「「あ」」


 一件仲が悪そうな二人が、見事仲良くハモったときにマリアは深いため息をつく。


「ユタカ、喧嘩は後だ!この暴動の中心角のあの男とマリア・テレアージを重要参考人として

城に確保!それから、とりあえず一時金給付金としてこれぐらいの金をばら撒くぞ!!」


 テキパキと現場の収集に向けて指示して、懐から取り出したのはかなりの札束。 


「ら、羅愛!お前、これって―」

「何勘ぐっているんだ?不正なお金じゃない、これはアタシのヘソクリだ!ヘソクリを分け与えるのだから、アタシは偉いのだ。どうだ?褒めていいぞー」


 微妙にテンションアップしながら、バイクに乗り高台からバイクごと飛び降りた。見事着地すると、バイクを走らせながら羅愛はお金をばら撒く。


「さぁ、下々よ金が欲しかったらここまでおいでー」


 高い所からその光景を見ると陳腐で痛々しく感じ、ユタカは頭痛を酷く感じる。


「とりあえず、あの馬鹿はほっといて―」

「私達は拘束でしょうね」

「何で、暴動起こした?また、大祭前にメンドクサイことをしでかしてくれたな」


 マリア・テレアージはユタカの耳元で囁いた。

 

「これだけ暴動起こしたら城の祭りを取り仕切る古株の輩が脅えるでしょう?やつら注意したほうがよいわ、水をめぐってこの機会に人騒動起こす気でいるわよ」


 ユタカは思わず一歩下がってマリアを見た。


「どっから仕入れた情報だ?」

「ふふふふっ、それはじきにわかるわねー」

「まぁ、出所はわかるような気がする」


 一瞬昔なじみのまたメンドクサイ性格の知人二人組を頭の中に過ぎった。

 まったく、どうして自分の周りには問題を起こす人間が多いのか?


「気苦労耐えないわね~、しかも貴方羅愛の世話係りが仕事みたいに見えるわよ?」

「ちがーう!!!」


 断じて世話係りが仕事なのではないのだ。

 しかし最近羅愛に振り回されているような気がし、今までの気苦労を思い出したら頭痛がして意識が遠のきそうだ。


「ご愁傷様」


 ユタカの苦悩のオーラが身にヒシヒシ感じ、マリア・テレアージは目の前の男が物語の悲劇な役者のようで可愛そうになってきたのだ。


 自分が原因で苦悩している人がいるとは知らず、ノウノウと好き勝手している羅愛は今も

愛車を走らせてお金をばら撒く。


「いやー一度やってみたかったのよね。お金ばら撒くって理由がどうあれ、リッチな感じ?」


 この国の問題児なのかもしれない。

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