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剣の記憶-影王-  作者: 青之屋
●剣の記憶-影王-●
21/40

大祭2日前:第3の遺言書開封(2)

 広々とした豪華絢爛な部屋に、円卓のテーブルが感覚を保って多数並んでいる。円卓のテーブルの上には、色鮮やかな多種類の料理がテーブルを飾り立てている空間。

 唯でさえ豪華で色鮮やかな空間であるのに、各国の来賓である人々が会場入りをすると更に色鮮やかで豪華な空間になる。

 それは、来賓である人々の衣装が贅沢で色鮮やかな生地で作られた物と、身につけている装飾品が眩しい程輝いているからなのだ。

 会場を眩しい程見渡し全体の様子を確認し、羅愛は頷く。


「第3の遺言書開封といきますか」


 セバンが頷き、会場上座の奥にある豪華で立派な椅子へ進んで行く。

 その椅子は、赤い別珍の布張り椅子で縁には精緻な金細工が施されている。玉座だ。

 まだ座る主なき玉座へセバンへ一礼すると、向きを180度変えてこの空間にいる全ての者を一瞥した。

 先ほどから穏かな雰囲気で包まれていた会場が、急激に糸を張り詰めたような緊迫した雰囲気へと変わり、静まり返る。


「本日、この度の王の成人儀式にお越しいただき感謝致します」


 セバンは近隣諸国の者達に向けて、一礼する。


「私は先代王に4つの遺言書を託された者でございます。先代王の言いつけにより、この度は3つ目の遺言書をこの場を借りて開封致します」


 背広の内側から静かに取り出したのは、真っ白い封筒だった。

 封筒の封にはしっかり糊付けされており、真ん中に赤い封蝋が垂れて国の紋章が押されている。

 

「私が偽物と取り替えていないか、先代王の寵愛を受けた子供達の一人ユタカ君に確かめていただきましょう」


 念には念を押し、セバンはユタカを指名して確かめてもらう。

 ユタカの登場に、会場はどっと沸いた。

 先代王の寵愛を受けた子共達、それは近隣諸国にも有名な話だったからだ。

 

「お願い致します」


 セバンは、繊細なガラス細工を扱うようにユタカに封筒を渡す。

 ユタカは受け取り、封筒裏の右下に書かれてある先代のサインを丹念に見て頷く。


「間違いありません」


 ユタカは封筒をセバンに返した。

 一礼して元の場所に戻って行くユタカを見届けてから、セバンは言った。


「確認できましたので、第3の遺言書を開封致します」


 ここにいる全ての人々が固唾を呑んで見守る中、セバンは慎重に開封し遺言書を取り出した。

 遺言書を開いて内容を黙読した後、顔色を変えずに会場を見渡した。


「では、第3の遺言書内容を発表します、第8代王が次期第9代目王をこの第3の遺言書にて任命する。次期9代目王は羅愛・イシュナータとし、これからの国の指導権全てを譲る」


 名前が挙がったとき、羅愛の顔を知る者達が一斉に羅愛を見た。

 

「以上でございます」


 セバンが一礼をし、振り返って玉座に一礼をする。そして、下っていった。

 それが、合図だった。

 息をするのも忘れ第3の遺言書開封の儀式を見守っていた人々が、魔法が解けたように動き出したのは。そうして、和やかな空間がまた戻ってきた。

 ただ、和やかな空間に緊迫の空気が隠し味のように混じっている。

 無理も無い、次期王が発表されたのだ。

 

「まさか、羅愛ねーちゃんだったとはね」

「羅愛お姉様、おめでとうございますわ」


 発表された直後7人に重い空気が漂っていたが、ジャスがそんな空気をあえて壊す。

 そして、ティンクルは羅愛に抱きついてお祝いを言った。


「不真面目な貴方が王になるとは、この国の行く末が心配になります」


 溜息をつきながら、マリアは羅愛の肩を叩いた。


「不真面目とは何だ? アタシはいつも真面目だよ」

「アタシを牢獄したことを忘れていた人間でしょう」


 まだ根に持っていたらしい。


「「とりあえず、おめでとう?」」

「なんで、アンタらは疑問系になるんだ」


 指摘され、解とカイはお互いの顔を見合わせた。


「これで正式な王になれます、という話じゃないんだろう?」

「賢者の石に認めさせなければ、王とは言えないよな~?」


 そうなのだ。

 この国の伝統では、"賢者の石"に認められた者が"王"であるのだ。

 認められてない者は、次期王候補という名目でしかない。


「しょうがないな~。アンタら、"賢者の石"が見てみたいのだな?」


 羅愛は、にやりっと笑って皆を見渡した。


「ら、羅愛。何をなさるのですか? ま、まさか――」


 ユタカは羅愛がこれからしようとしていることを感づいた。

 

「次期王候補から、皆の者に面白いものを見せてやろうじゃない」

「羅愛、止めなさい!」


 ユタカの制止を無視し、羅愛は王座の前へと進んで行く。

 羅愛に気付き、何事か? と不思議そうに見えている者達の視線を浴びながら、羅愛は一同に礼をした。

 

「この度は、我が成人の儀にお越しいただき、誠にありがとうございます」


 その言葉に会場内の者達が注目する。


「遠路はるばるお越しくださいました近隣諸国の皆様のため、今日は特別に我が国の秘宝をお見せ致しましょう」


 ショーを始める前に観客の様子を伺う奇術師ごとく、羅愛は会場の者達の様子を伺い微笑みかける。

 そして、手品を始めるような手つきで、ポケットから布の小袋を出した。

 

「昔々」


 羅愛は昔話を語るように、皆に語った。


「人類が犯した3回目の大きな戦争。それにより、世界に生き物がすめなくなりました。その生き物が住めなくなった世界を、我が国の初代王が"賢者の石"の力を借りて生き物が住める世界にした、という伝承をご存知ですよね?その伝承に出てくる代物"賢者の石"は、我が国の秘宝であり希望でもあります。よって、秘宝は皆の目に晒されることは殆ど皆無でありました。だが―」


 黒いビロードの袋から少しずつ中身を取り出して行く。

 その様子を会場の全ての者達が固唾を呑んで見守る。

 いつの間にか、また空間が緊張した空気へと変わってる。それも、先ほどの第3遺言書開封の儀式よりも高まっているようだ。

  

「これが――」


 袋から取り出したものを右手で高々と上げた。"賢者の石"を慎重に持ち、全ての者達に見えるようにする。

 

「これが、我が国の秘宝"賢者の石"です」


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