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剣の記憶-影王-  作者: 青之屋
●剣の記憶-影王-●
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大祭3日前:予兆

  左手の中に数枚のカード。

 そのカードをチラッと見て、羅愛はカードから右手の資料へと目を移す。

 資料は、現状軍事状況が細かい文字で綴ってある。


「いつも思うんだが、中央集権のくせに軍事力散乱ってどういうことだよ」

「地方の治安維持も軍事に頼っているから、しょうがないじゃない?」


 深い溜息と共に吐き出した羅愛の独り言に、同じカードを数枚手に持って自分の番を待っている解が口を挟む。

 他国では治安維持を警察という団体にまかなっているところもあるらしいが、ユーロ国では治安維持も軍の仕事である。

 背景には、長年続く平和のために軍の仕事がないため、仕事を回した結果だ。

 

「何かあったら、団結力で負けるわさ」


 何か――それは、あり得ないかもしれないが。

 戦争に至る争いごとは、3回目の大きな戦争で人々は過ちを十分に理解できただろう。と、羅愛は思いたい。

 だが、人間は、同じ過ちを繰り返す生き物だ。

 羅愛が生きている時代はなくとも、遠い未来、もしかしたら何かあるのかもしれない。

 それに、国の外の問題以外にも目を向けることがある。


「困ったことだな~。そのうち、反乱でもされるんじゃないのか~?」


 他人事のように言う解は、数枚のカードと睨めっこをしていた。

 大きすぎる国には、内紛の可能性もある。

 王が表に出てない時期が何年も続いた後の即位式に、各地の軍事力が高まり、好き勝手に各地を治めている者達が謀反を企んでもおかしくはない。

 実際に、その予兆がチラつく。


「あー、難しい!」


 羅愛は苦悩する。

 長年の王不在で、謀反を立てられなかったのは、少しばかり自由に泳がせいたためだ。

 だが、これ以上は限界だろう。

 そろそろ腐った彼らを取り除く作業に移らねば……。


「難しいのは、オレの方だよ! もう、これでいいや」


 カイが頭を抱えながら、カードを出してきた。


「考えていた時間は、12分47秒か。カイ、女好きの癖にカードゲームのセンスなさ過ぎだぞ」

「いちいち時間を計るなよ! オレは賭博はやらない主義なんだよ」

「そんなに難しい物なのか? カードゲームは簡単だと思うけど?」


 首を傾げて、解は一枚カードを出す。


「頭の回転はユタカといい勝負だけど、頭の回転がいい人ってカードゲームが苦手なのかね? ユタカもカードゲームは嫌いらしいぞ。ほい、アタシは上がりだ」


 羅愛は数枚のカードを出して、両手を軽く上げる。


「うそぉ! 何でこんなにいいカードが揃っているんだよ」

「日ごろの行いが良いため」

「それは違います」


 ここに居ないはずの人物の声がして、3人は思わず飛び上がる。


「「お前は幽霊か!」」

「居るなら、存在感示せよ! ユタカ」


 羅愛の真後ろに影のように立っていたユタカは、3人の抗議に肩を竦めて反発する。


「ドアをノックしても反応がなかったため、勝手に入室したまでですが」

「お前は、影が薄くてアタシ達に気づいて貰えなかっただけなのだ。きっと、そうに違いない!」

「そんなこと言って、よろしいのでしょうか? このゲームに貴方が勝ったようですが」


 ユタカは意味ありげに言って、妖艶に微笑む。


「失礼します」


 羅愛は持っていた資料をユタカに取り上げられた。

 そして、その資料はユタカの手から離れ、床に散らばることになる。 


「「あ!」」


 床に散らばった資料と共に、数枚のカードが出てきて散らばった。


「やはり……。資料の間によいカードを隠し持っていて、二人の隙をついて取り替えていたのですね」

「人生は手先が器用なのが特なのだ!」


 ユタカにトリックを見破られた羅愛は、胸を張って開き直る。


「それとこれとは違うだろ!」

「そーだそーだ。もう二度と羅愛とカードゲームしないからなっ、いててててて」


 羅愛の卑怯な手口に興奮したカイは、腹に手を当てて疼くまる。


「怪我人は大人しく寝て、永眠してろ」


 ユタカが冷たい目でカイを見下ろしている。


「永眠ー!? オレに死ねと?」

「解釈はご自由に」


 ユタカが意地悪い笑みを浮かべている。

 羅愛はユタカのそんな表情を横目で見て、蛇に睨まれる蛙のようになっているカイに同情する。

 ユタカは意地悪い時は、とことん意地が悪いのだ。


「ユタカ。そんな意地悪言ったら、カイが可愛そうだろうに?」

「オレの心配してくれるの? 羅愛は優しいんだねっ」


 カイが羅愛に抱きつこうとした時だ。

 氷柱のように鋭く冷たい物体が、カイの喉元に向かって斬りかかってきた。

 それが、首の薄皮を一筋の赤い線をつけ、ユタカの腰にある鞘に戻る。


「……殺そうとしたな?」


 カイの顔は真っ青になる。


「そうなるな、見境なく異性に抱きつくのは関心しない」


 ユタカは冷ややかな目で、カイを見ている。

 口元は笑っていて、目は笑っていなかった。


「ちょ、ユタカ! 何喧嘩しているのさ」

「喧嘩じゃありません、貴方も少しコイツに警戒してくださいって」

「大丈夫だって、俺は羅愛好みじゃないもん」

「それって、どういう意味だ? 返答次第じゃアタシが殺すぞ☆」


 今度は羅愛が刀に手をかけている。


「ちょっと待った、待ったって! まったく、冗談も通じないな二人共」

「そこの3人、遊んでないで本題に入ったらどう?」


 解は、カードを一人片付けている。

 

  

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