モハメッド
モハメッドは机の上にある緑色の金属片を見つめていた。
この緑色の金属片には無重力の性質をもつことがわかっている。ただ、人の体に入った場合にどのような能力が使えるようになるのかは未知数だった。
モハメッドはオーパーツ研究所の所長としての責任に辟易していた。すべてが国際平和機構によるトラブルであり苛立ちを隠せなかった。
「どうして俺ばかりが責められる。俺のせいではない。すべて国際平和機構の常軌を逸した行動のせいだ。俺にはタガールとブリリアントの気持ちが痛いほど判る。もう嫌だ。これを体内に取り込めば何らかの力を手に入れることが出来るはず。俺がこの緑色のオーパーツの能力を使い復讐してやる。」
モハメッドは緑色の金属片を素手で掴んだ。
モハメッドが研究所から消えた。しばらくして、オーパーツ研究所も閉鎖された。
世間がオーパーツのことを忘れ始めた頃、全身にプロテクターを纏った者が暴れ始めた。自分のことを“復讐者”と名乗り、政府、警察、マスコミ、世間に対し宣戦布告した。
手始めに政府要人が乗る離陸前の飛行機を投げ飛ばし殺害、次に警察官僚を橋の上から車ごと川に投げ落とし殺害、平和国際会議のために用意された高速鉄道車両を投げ飛ばし破壊した。駆け付けた警官隊との攻防戦においては、パトカーや装甲車を手当たり次第に投げ飛ばした。全身を纏うプロテクターに銃撃は効かなかった。おそらく闇取引で手に入れたのだろう。警察ではとても対応できる相手ではなかった。
イアンは気づいた。この“復讐者”の戦い方には特徴がある。“復讐者”は必ず動かす対象物を素手で掴んでいるのだ。当初、人間離れした能力にプロテクターの中身は機械ではないかと思われたが、人間であることが分かった。まだ、現時点でサイボーグは実用化されていない。また、持ち上げている物体の重量を考えると、素手で触れた物体の重量をコントロールできるのではないかと推察された。
当時、モハメッドはオーパーツ研究所の所長としての責任問題の追求に辟易しており、政府、警察、マスコミ、世間に多大な恨みを蓄積させていたことがわかっている。よって、考えられるのは消えた緑色のオーパーツの能力を使っているのはモハメッドであるということだ。なぜなら、オーパーツの持つ特性を十分に研究して行っているからだ。
国は、正式に“復讐者”はモハメッドであると特定し公表した。これ以上のモハメッドによる凶行は止めねばならない。
狂人化したモハメッドではあるが、決して思い付きの行動はしていない。明確に国際平和機構に関係している者をターゲットにしていた。ターゲットはすべて仕留めている。
大統領はタガールの時と同じように、自分を囮にしてモハメッドを逮捕することにした。大統領はイアンへ協力を要請した。モハメッドの犯罪を止めてほしいと。




