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勇者  作者: 龍蛇
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邂逅

魔族と人間が果てしない戦争を繰り広げる世界...

「よく来たな、勇者よ。」

 その勇者は、魔王城の一室で魔王と対峙していた。人類が永年成し遂げんとしていた魔王討伐を、今、彼は目前にしていた。

 彼は、異世界から転生してきてチートを与えられたり、弛まぬ努力を経て競争を勝ち抜いたりして、勇者になったわけではなかった。彼は生まれながらにして勇者だった。彼が生を受けた世界では、誕生した時点で職業が決まっており、それを覆すことは難しいという、とんでもなく理不尽な世界だった。そんな世界で、彼は勇者として生まれたのだが、実は、この世界に勇者は大勢おり、彼もその一人に過ぎなかった。過ぎないはずだった。

 勇者養成学校を卒業し、魔王討伐に向かった者は、死ぬか、怖気づいて引き返してくるかの二択だった。しかし彼は、持って生まれた才や鍛錬の成果もあるが、強力な幸運によって、魔王城に辿り着いたのだった。

 その魔王は、女性だった。彼女は勿論、生まれながらの魔王だった。魔王は世襲制で、それで特に問題は起こらず、性別も特に関係なかった。

 その勇者は、養成学校で、ひたすら鍛錬に次ぐ鍛錬を繰り返してきた。無論遊ぶ暇などなく、また、必然か差別か、はたまた神の悪戯か、女性の勇者はごく僅かしかいなかった。したがって、彼は、今まで女性というものを一度も、肉親や僅かな学校の職員を除けば、見たことがなかった。

 そんな彼に、こんな女性をぶつけたならばどうなるか、それは明白だった。端正な顔立ち。漆黒の瞳。妖艶な口元。透き通るような肌。整った体つき。露わになった谷間。どれをとっても、彼の脳を刺激した。そして、ことさら際立つのが、魔族の象徴である、金色の角。黄金に光り輝くそれが、人にはあらず、という非現実さのようなものを付け加え、全体をより輝かせていた。彼は一目惚れした。彼女に心惹かれずにはいられなかった。しかし、見た目にほだされてはいけない。人類は、魔物や魔族によって甚大な被害を受けており、おそらくこれからも被り続けるのだろう。そして、その㋮のつく者たちを統べている人物こそが、この魔王なのだ。

 彼は思い直した。しかし、それでも、その想いはどうにもできず、葛藤に苛まれた。もし彼がこの戦いに敗れたとすれば、その敗因は人生経験の圧倒的な不足だろう。

 魔王は、そんな彼を値踏みするかのように眺めていた。と思いきや、彼女は勇者よりもチョロかった。魔族の男性は、見た目や性格が、う〜ん、まぁ、ちょっと、正直アレ、な者たちが多い。そんな折に、人間の、若い、少しだけハンサムな男が転がり込んできたのである。勇者よりも世間知らずな箱入り魔王は、一瞬で落ちてしまっていたのである。それに、この魔王は、こんな争いはもうやめたいと思っていた。彼女は、向かってくる勇者をことごとく葬り去ってきた、わけではなくて、父から魔王の座を引き継いでまだ日の浅い彼女は、これが始めて応対する勇者だった。彼女は、魔族と人類の争いを減らすために、魔物の生息域の調整に着手し始めたばかりだった。

「「すあみ、まあせのん、」」

 2人の声が被った。同じことを考えていたのだった。聡明な2人の頭は、同じ結論を導き出していた。しかし、それには、問題が1つあった。勇者の行方をどうするか、ということである。死んだことにしても、またすぐ次の勇者が送られてくるだろう。かといって、和平したことにしても、人類からはどちらも敵とみなされ、むしろ戦況は悪化してしまう。駆け落ちようにも、魔族である彼女は目立つし、魔王の後継者もおらず、何より彼女の父親が許さないだろう。二人の頭脳は、この刹那の間に、非情な難問を抱えていたのである。

第二章に続く。

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