第9話 炎の代償と決意の試練
朝、村の宿で目を覚ます。ライル――転生した俺、ジョン・ライリーの体は、10歳とは思えないほど頑丈だ。だが、昨夜の戦闘で暴走した力――ステータスの「封印された力(解放進度15%)」が疼く。村の柵を壊し、トムを怖がらせた。あの怯えた目は、シールズ時代に親友マイクが死ぬ直前の顔と重なる。「ジョン、生きてくれ…」最後に握った手は、冷たかった。
ステータスを確認。
【名前:ライル】
【レベル:4】
【力:120】
【耐久:86】
【敏捷:126】
【スキル:超人的身体強化、戦闘適応、魔法適性(初級)、封印された力(解放進度15%)】
力120。封印が解けつつあるせいで、制御がますます難しい。女神の「試練の時」が近づいてる。シールズ時代、制御不能の兵器で仲間を危険に晒した記憶。もう繰り返したくない。
宿を出ると、市場でトムが駆け寄る。「ライル兄ちゃん、昨日は怖かったけど…俺、信じてるよ!」小さな手で、編んだ草の腕輪をくれる。「これで、魔物に勝って!」無垢な笑顔。マイクの「生きろ」が響く。「トム、ありがとう。絶対守る」胸が熱くなる。
ギルドに着くと、リナが古い巻物を広げている。エルフの耳が、陽光に透ける。「ライル、封印の鍵について分かったわ。魔王の心臓は、エレシア大陸の四つの聖地に封じられた。その一つが村の結界石。魔王軍は、残りの鍵――あなたの力を狙ってる」
「俺の力? 女神の誤算ってやつか?」シールズの作戦会議を思い出す。敵の目的を潰すのが基本だ。
リナが真剣な目。「私のエルフ族は、封印を守る使命を負ってた。でも、100年前、私の魔法の失敗で…村を焼いたの。だから、ライルの暴走、他人事じゃない」彼女の声が震える。
「リナ、失敗は誰にでもある。シールズ時代、俺も…マイクを救えなかった」言葉を飲み込む。リナが微笑む。「なら、二人で村を守りましょう」
昼、村の広場で訓練。リナが指導。「ライル、MPを絞って! 小さな炎よ!」俺は試す。「ファイアボルト!」ゴウッ! 木の的が炭に。リナが叫ぶ。「強すぎ! カップ麺でも焼く気!?」
「カップ麺以下だろ、この村のスープ」リナがムキになる。「失礼ね! エルフのスープ、美味しいわよ!」笑い合う。こんな時間が、守りたい。
だが、静寂を破る爆音。村の外で煙が上がる。衛兵が叫ぶ。「魔王軍の大軍だ!」広場に急ぐ。ゴブリン50匹、魔狼20匹、黒ローブの魔法使い10人。そして、赤髪の幹部クリムゾン。黒いオーラの剣が輝く。「勇者ライル、封印の鍵をよこせ。さもなくば村は灰に!」
「灰にする前に、お前を倒す!」戦闘適応スキルを発動。体が熱くなり、視界が鋭く。ゴブリンが槍を突き出す。金属が唸り、風圧が顔を叩く。シールズの訓練通り、ステップで回避。手刀を首に。バキッ! ゴブリンが崩れ落ちる。力を抑えたのに死ぬ。封印の暴走だ。
魔狼が跳びかかる。牙が光り、爪が地面をえぐる。マイクの声が響く。「ジョン、生きろ!」叫びながらMPを集中。「ウィンドカッター!」ビュン! 風の刃が魔狼を切り裂く。血が飛び、悲鳴が響く。
リナが援護。「ストームバースト!」風の爆発がゴブリン10匹を吹き飛ばす。「ライル、連携よ!」彼女の目が燃える。エルフの使命、感じるな。
クリムゾンが剣を振る。「ブラッドストライク!」黒い刃が空気を裂き、俺を狙う。跳躍で回避。地面が割れ、土煙が舞う。HPが320/500に。「強いな、クリムゾン!」彼女が笑う。「女神の誤算だ、勇者。封印が解ければ、魔王の心臓は我々のもの!」
封印が疼く。拳が光り、力が溢れる。試しに地面にパンチ。ドガン! クレーターが広がり、村の家が揺れる。トムが悲鳴。「ライル兄ちゃん、怖い!」リナが叫ぶ。「ライル、抑えて!」
「やってる!」だが、力が暴走。MPを集中。「ファイアボルト!」ゴウッ! 火球が魔狼を焼き、村の柵を炎に包む。村人たちが逃げる。クリムゾンが哄笑。「その暴走、最高だ!」
リナが盾魔法を展開。「ライル、私が抑える!」青い光が炎を防ぐが、クリムゾンの剣がリナを狙う。「死ね、エルフ!」刃が彼女の胸をかすめる。リナが血を吐き、倒れる。
「リナ!」マイクの死がフラッシュバック。もう誰も失わない。拳が光り、封印がさらに解ける。ステータスに「解放進度20%」。力が暴走し、広場が炎に包まれる。クリムゾンが叫ぶ。「次は魔王の城で会おう、勇者!」
彼女が消える。リナが倒れたまま。トムが泣く。俺の力が、村を…リナを…。
(続く)