第8話 暴走の代償と新たな敵
朝、村の宿で目を覚ます。ライル――転生した俺、ジョン・ライリーの体は、10歳のガキとは思えないほどタフだ。昨夜の広場での戦闘、魔王軍の魔法使いを倒したが、ステータスの「封印された力(解放進度10%)」が疼く。力110が制御しきれず、地面にクレーターを作ったのはマズかった。シールズ時代、暴発した手榴弾で仲間を危険に晒した記憶がよみがえる。あの時の親友、マイクの最後の言葉。「ジョン、生きろ…」
ステータスを確認。
【名前:ライル】
【レベル:4】
【力:115】
【耐久:86】
【敏捷:126】
【スキル:超人的身体強化、戦闘適応、魔法適性(初級)、封印された力(解放進度10%)】
力の暴走が続くなら、村を危険に晒す。女神、なんのつもりだ?
宿を出ると、市場でトムが駆け寄る。「ライル兄ちゃん! これ、俺が作った!」小さな木のお守りを差し出す。「魔物から守ってくれるよ!」無邪気な笑顔。マイクの笑顔が重なる。「サンキュ、トム。大事にするよ」胸が熱くなる。守らなきゃ、この村を。
ギルドに着くと、リナが古い地図を広げている。エルフの耳が、朝日を受けてキラキラ。「ライル、図書館で調べたの。魔王軍が狙う『封印の鍵』は、魔王の心臓を復活させるためのものらしい。結界石はその一部で、あなたの力も関係してるかも」
「魔王の心臓? 俺の封印された力と繋がってるのか?」シールズの作戦会議を思い出す。敵の目的を知るのは戦術の基本だ。
リナが頷く。「エレシア大陸の伝説よ。1000年前、勇者が魔王を封じたけど、心臓は封印の鍵に分散された。魔王軍はそれを集めてるの。私、エルフ族の使命で、封印を守る役目だった…でも、昔、魔法を失敗して追い出されたから、こうやって冒険者やってるの」彼女の目が少し曇る。
「失敗か。シールズ時代、俺も訓練でやらかした。仲間が…」言葉を飲み込む。リナが微笑む。「ライルも人間よね。よし、村を守るために、もっと調べるわ!」
昼、村の広場で訓練。リナが魔法を指導。「ライル、MPを絞って。イメージは小さな風!」俺は試す。「ウィンドカッター!」ビュン! 木の的が真っ二つ。リナが叫ぶ。「抑えたつもりでも強い! 21世紀の技術でも使ってるの?」
「いや、ただの訓練だよ。村の剣より、俺のナイフの方がマシだけどな」リナが笑う。「そのナイフ、持ってきてよ!」
だが、笑い声は叫び声に変わる。村の外で爆音。煙が上がる。「魔王軍だ!」衛兵が叫ぶ。広場に急ぐ。ゴブリン30匹、魔狼15匹、そして黒ローブの男が5人。新顔の女が率いる。赤い髪、鎧、剣から黒いオーラ。「勇者ライルか。封印の鍵、頂くぞ」
「鍵はやらねえ!」戦闘適応スキルを発動。体が熱くなり、視界が鋭く。ゴブリンが槍を突き出す。金属が唸り、風圧が髪を揺らす。シールズの訓練通り、ステップで回避。手刀を首に。バキッ! ゴブリンが崩れ落ちる。力を抑えたのに死ぬ。封印の暴走か?
魔狼が跳びかかる。牙が光り、爪が地面をえぐる。マイクの声が頭に響く。「ジョン、生きろ!」叫びながらMPを集中。「ファイアボルト!」ゴウッ! 火球が魔狼を焼き、焦げ臭いが広がる。リナが援護。「ウィンドスラッシュ!」緑の風がゴブリン5匹を切り裂く。血が飛び、悲鳴が響く。「ライル、連携よ!」
赤髪の女が剣を振る。「ブラッドストライク!」黒い刃が空気を裂き、俺を狙う。跳躍で回避。地面が割れ、土煙が舞う。HPが360/500に減る。「強いな、お前!」女が笑う。「魔王軍幹部、クリムゾンだ。勇者、封印が解けつつあるな!」
封印が疼く。拳に力が溜まり、光る。試しに地面にパンチ。ドガン! クレーターが広がり、村の柵が崩れる。村人たちが悲鳴。トムが怯える。「ライル兄ちゃん、怖い…」
「くそ、抑えろ!」だが、力が暴走。リナが叫ぶ。「ライル、MPを制御して!」彼女が盾魔法を展開。青い光が俺を包む。だが、クリムゾンが突進。剣がリナを狙う。「死ね、エルフ!」
「リナ!」俺は跳び、剣を拳で弾く。ガキン! 衝撃で腕が痺れる。HP340/500。リナが叫ぶ。「ライル、無茶しないで!」彼女が杖を振る。「ストームバースト!」風の爆発がクリムゾンを吹き飛ばす。幹部たちが後退。「次は逃さぬぞ、勇者!」
戦闘が終わるが、村の柵は壊れ、トムが震える。リナが息を切らす。「ライル、力の暴走…まずいわ。封印、解けかけてる」
ステータスを確認。力:120、解放進度15%。村を見ると、壊れた柵。リナの腕に傷。俺の力が、仲間を危険に晒した。マイクの声が響く。「ジョン、生きろ…」
遠くで、魔王軍の軍勢の足音。クリムゾンの笑い声がこだまする。次は、俺の力が試される。
(続く)