第7話 鍵と絆、暴走の兆候
朝、村の宿で目を覚ます。ライル――転生した俺、ジョン・ライリーの体は、10歳とは思えないほど頑丈だ。昨夜、廃神殿で魔王軍の魔法使いを撃退したが、ステータスの「封印された力(???)」が頭から離れない。女神の声が言った「試練の時」が近づいてる気がする。シールズ時代、制御不能の兵器を扱った時の緊張感がよみがえる。
ステータスを確認。
【名前:ライル】
【レベル:4】
【力:110】
【耐久:86】
【敏捷:126】
【スキル:超人的身体強化、戦闘適応、魔法適性(初級)、封印された力(???)】
力110。封印が揺らいでから、微妙に上がってる。暴走しないよう、制御に気をつけないと。
宿を出ると、市場で子供が駆け寄る。祭りで会った少年、トムだ。「ライル兄ちゃん! また魔物をやっつけたんだろ? 俺も強くなりたい!」キラキラした目。アフガニスタンで、仲間が爆発で散った時の記憶がチラつく。あの時、守れなかった新兵の笑顔。「トム、強くなるなら、まず逃げ足を鍛えな」俺は笑う。
「えー、ずるい!」トムが膨れる。癒されるな、このガキ。
ギルドに着くと、リナが古い羊皮紙を広げている。「ライル、聞いて! エレシア大陸の伝説を見つけたの。『封印の勇者』が魔王を倒す、って。あなたの力、関係あるかも」
「封印の勇者? 女神がそんな話、してなかったぞ。で、魔王軍は何で村を?」
リナが真剣な顔。「結界石が『封印の鍵』の一部らしいの。魔王軍は、封印を解いて魔王を復活させたいんだと思う」
「俺の力も封印されてる。鍵と関係あるのか?」背筋が冷える。シールズ時代、敵の計画を暴く任務を思い出す。情報が命だ。
リナが提案。「村の図書館に、もっと詳しい記録があるかも。私、行ってみる?」
「いいね。21世紀のデータベースよりマシだろ」リナがクスクス。「ライル、ほんと変な言葉使うわね」
図書館は、村長の家の地下。小さな部屋に、埃まみれの本が並ぶ。リナが本をめくり、声を上げる。「あった! 『封印の勇者は、女神の力で転生する。だが、力は暴走を招く』…ライル、これ絶対あなたよ!」
「暴走か。やっぱり制御が鍵だな」読んでいると、村の外で叫び声。窓から見ると、煙が上がる。「まずい、襲撃だ!」
広場に急ぐ。ゴブリン20匹、魔狼10匹、そして黒ローブの男が3人。紫の魔力が空気を歪ませる。「勇者め、封印の鍵を渡せ!」男の一人が叫ぶ。
「鍵? 俺の力のことか?」戦闘適応スキルを発動。体が熱くなり、視界がクリアに。ゴブリンが槍を突き出す。金属が唸り、風圧が頬を切る。俺はシールズの訓練通り、ステップで回避。手刀を首に。バキッ! ゴブリンが崩れ落ちる。力を抑えたのに、死んだ。封印が揺らいでる影響か?
魔狼が跳びかかる。牙が陽光に光り、爪が地面をえぐる。シールズの記憶――仲間が死に、俺だけ生き残った瞬間。「もう誰も失わない!」MPを集中。「ファイアボルト!」ゴウッ! 火球が魔狼の胸を焼き、地面に焦げ跡を残す。
リナが叫ぶ。「ライル、援護!」杖を振る。「ウィンドスラッシュ!」緑の風がゴブリン3匹を切り裂く。血が飛び、悲鳴が響く。「リナ、ナイス!」俺は笑う。彼女の目が少し誇らしげ。
黒ローブの男が魔法陣を展開。「シャドウバインド!」黒い触手が地面から伸び、俺の足を絡め取る。締め付けが骨を軋ませる。HPが380/500に。「くそ、動きづらい!」シールズの脱出訓練を思い出し、体を捻る。触手を引きちぎり、男に突進。「ウィンドカッター!」ビュン! 風の刃が男のローブを切り裂く。
だが、封印された力が疼く。拳に力が溜まり、制御不能に。試しにパンチを地面に。ドガン! 広場にクレーターができる。村人たちが悲鳴。「ライル、抑えて!」リナが叫ぶ。
「やってるつもりだ!」もう一人の男が火魔法。「インフェルノ!」炎の渦が襲う。リナが盾魔法で防ぐ。「ライル、今よ!」俺は跳躍し、男の胸に蹴りを。ズドン! 男が血を吐き、倒れる。だが、力が暴走。拳が光り、近くの木が砕ける。
最後の男が笑う。「封印が解けるぞ、勇者! 魔王様が待ってる!」闇に消える。追いたいが、村人たちの怯えた目。トムが震えながら俺を見る。「ライル兄ちゃん、怖い…」
心が締め付けられる。シールズ時代、仲間を救えなかった後悔。「トム、怖がらせて悪い。俺、守るから」トムがコクンと頷く。
リナが駆け寄る。「ライル、力の暴走…封印の影響よ。図書館で続きを調べないと」
ステータスを確認。力:115に跳ね上がり、封印された力が「解放進度10%」と表示。まずい、暴走が近づいてる。遠くで、魔王軍の軍勢の足音。村はまだ安全じゃない。
(続く)