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第3話 魔法の第一歩と迫る影

朝、村の宿で目を覚ます。木のベッドが軋み、窓から差し込む光が埃を照らす。ライル――転生した俺、ジョン・ライリーの新しい体は、10歳の少年とは思えないほどしなやかだ。肩の傷は浅く、すでに痛みは引いている。昨夜の魔物襲撃で村を救ったが、ゴブリンとオークを軽く気絶させただけで村人たちの視線が半分恐怖に変わった。強すぎる力は、制御が難しい。

ステータスを確認する。

【名前:ライル】

【レベル:2】

【力:102】

【耐久:82】

【敏捷:122】

【スキル:超人的身体強化パッシブ戦闘適応アクティブ、魔法適性(初級)】

レベルアップでステータスが少し上がった。魔法適性が気になる。シールズ時代、戦術や格闘は極めたが、魔法なんてSF映画の話だった。この世界じゃ現実だ。今日こそ、ギルドで魔法を学ぼう。

宿を出て、村の通りを歩く。市場では商人が魚や野菜を売り、子供たちが笑いながら走り回る。だが、昨夜の襲撃の影響か、村人たちの会話には緊張感が漂う。「魔王軍の斥候が来たなんて、そろそろ本隊が来るんじゃ…」そんな囁きが聞こえる。

ギルドに着くと、リナがカウンターで書類を整理している。エルフの長い耳が、朝日を受けて微かに輝く。「おはよう、ライル。昨夜はすごかったわ。村の英雄よ」

「英雄はいいけど、目立ちすぎた。力、抑えたつもりだったのに」

リナがクスクス笑う。「10歳でオークを気絶させる子が、目立たないわけないでしょ。で、今日は?」

「魔法を学びたい。ステータスに『魔法適性(初級)』ってあるけど、使い方が分からない」

リナの目が輝く。「いいわね! 魔法は冒険者の基本よ。ギルドの裏に訓練場があるから、そこで教えてあげる。簡単な魔法から始めましょう」

訓練場は、ギルドの裏にある広場だ。土が踏み固められ、的になる木の人形が並ぶ。リナが杖を取り出し、説明を始める。「魔法はMPを消費して発動するわ。初級魔法なら、イメージと呪文で簡単に使える。ライルは『魔法適性(初級)』があるから、すぐに覚えられるはず。試しに『ファイアボルト』をやってみて」

「ファイアボルト? やり方は?」

「手を前に出し、炎をイメージ。MPを流す感じで『ファイアボルト!』って唱えるの」

俺は言われた通り、手を木の人形に向ける。炎をイメージ。シールズの訓練で培った集中力を発揮し、MPが体内で動く感覚をつかむ。「ファイアボルト!」

ゴウッ! 手のひらから赤い火球が飛び出し、木の人形を直撃。爆音とともに人形が炭になり、地面に焦げ跡が広がる。リナが目を丸くする。「え、ちょっと! 初級なのにその威力!? ライル、MPの出しすぎよ!」

「悪い、力加減が…」またやりすぎた。魔法も制御が難しいのか。

リナが杖を振る。「次はもっとMPを抑えて。イメージは小さな炎。もう一回!」

今度は慎重に。MPを絞り、小さな火花を想像。「ファイアボルト!」シュッ! 小さな火球が飛び、木の人形に当たる。焦げただけで済んだ。「よし、これでいいか?」

リナが拍手。「バッチリ! 次は『ウィンドカッター』を試してみて。風の刃で切る魔法よ。イメージは鋭い風、呪文は『ウィンドカッター!』」

同じ要領で試す。MPを抑え、風の刃を想像。「ウィンドカッター!」ビュン! 鋭い風が人形を切り裂き、木が真っ二つに。リナが叫ぶ。「ライル、抑えたつもりでも強すぎ! 普通の初級魔法はこんな威力じゃないわよ!」

「マジか…魔法も制御が難しいな」

訓練を終え、ギルドに戻る。リナが言う。「ライル、魔法の才能もあるみたいね。でも、力の制御はもっと練習が必要。クエストで実戦経験を積む?」

「いいね。簡単なやつで」

リナがクエストボードを指す。「村の東の森で、魔狼が暴れてるって。単体なら危険は少ないけど、油断しないでね」

クエストを受けて森へ。木々の隙間から陽光が漏れ、鳥のさえずりが響く。だが、森の奥から低いうなり声。魔狼だ。体長2メートル、銀色の毛、鋭い牙が光る。目が合った瞬間、唸りながら突進してくる。地面を蹴る音、爪が土をえぐる。

「よし、魔法で試すか!」

力を抑え、MPを調整。「ファイアボルト!」小さな火球が飛ぶ。魔狼は横に跳び、回避。素早い! なら接近戦だ。シールズの格闘術を思い出し、体を低くする。魔狼が飛びかかる。牙が空気を切り、風圧が顔を叩く。俺は右にステップ、肘打ちを首に叩き込む。ゴキッ! 魔狼が横に吹き飛び、木に激突。気絶。

「ふう、力の加減、だいぶ掴めてきた」

だが、勝利の余韻は短い。森の奥から複数の咆哮。魔狼が3匹、さらにゴブリン5匹が現れる。ゴブリンが叫ぶ。「あのガキだ! 魔王様の斥候を倒したやつだ! 殺せ!」

魔王軍の斥候を追ってる? まずい、村が狙われてる。力を抑える余裕はない。魔狼が一斉に飛びかかる。爪が閃き、牙が唸る。俺は戦闘適応スキルを全開。体が熱くなり、視界がクリアになる。シールズの訓練通り、敵の動きを予測。

「ウィンドカッター!」ビュン! 風の刃が魔狼1匹の前脚を切り裂く。悲鳴を上げて倒れる。ゴブリンが棍棒を振り回し、襲いかかる。俺は体を捻り、棍棒をかわす。拳を握り、軽くパンチ。バゴッ! ゴブリンの胸が凹み、吹き飛ぶ。力を抑えたのに、死んだ。制御ミスだ。

残りの魔狼2匹が左右から挟撃。俺は地面を蹴り、跳躍。空中で「ファイアボルト!」ゴウッ! 火球が魔狼の背を焼き、1匹が地面に倒れる。もう1匹が牙を剥くが、着地と同時に蹴りを腹に叩き込む。ズドン! 魔狼が木々をなぎ倒し、動かなくなる。

ゴブリンたちが怯え、逃げ出す。「化け物だ! 魔王様に報告するぞ!」

「逃がすか!」追いかけようとしたが、森の奥に消える。追うのは危険だ。村に戻って警告しないと。

ギルドに急ぐ。リナに報告。「魔王軍が村を狙ってる。斥候が俺をマークしてるみたいだ」

リナの顔が青ざめる。「まずいわ…魔王軍の本隊が来る前に対策を! ライル、村長に話して。あなたなら信じてもらえる」

村長の家で、老いた村長に事情を説明。村長は震える声で言う。「ライル君、君の力は本物だ。だが、魔王軍が本気なら、村は…」

「俺が守ります。シールズ時代、仲間を守るのが任務だった。この村も守ってみせる」

夜、村は静寂に包まれる。だが、遠くで魔物の咆哮。ステータスを確認すると、レベル3に上がってる。戦闘で成長した。魔法の制御も少し上達。だが、魔王軍の本隊が来るなら、力を抑える余裕はないかもしれない。

この世界での戦いは、どんどん厳しくなる。俺の力、どう使うべきか。

(続く)

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