第10話 暴走の果てと新たな影
朝、村の宿で目を覚ます。ライル――転生した俺、ジョン・ライリーの体は、10歳のガキとは思えないほど頑丈だ。だが、昨夜の戦闘で暴走した力――ステータスの「封印された力(解放進度20%)」が頭から離れない。村の柵を焼き、リナを傷つけた。シールズ時代、親友マイクを失った時の記憶がよみがえる。砂漠で、マイクが俺の手を握り、笑った。「ジョン、生きて、家族を守れよ…」その手は、すぐに冷たくなった。
ステータスを確認。
【名前:ライル】
【レベル:4】
【力:120】
【耐久:86】
【敏捷:126】
【スキル:超人的身体強化、戦闘適応、魔法適性(初級)、封印された力(解放進度20%)】
力120。封印が解けつつあるせいで、制御が限界に近い。女神の「試練の時」が、こんな形で来るとは。
宿を出ると、トムが走ってくる。「ライル兄ちゃん、リナ姉ちゃんが! まだ目覚めないよ…」トムの目が潤む。昨夜、リナは俺の暴走から村を守り、クリムゾンの剣で傷ついた。「トム、リナは大丈夫。俺が守る」胸が締め付けられる。マイクを救えなかった後悔、繰り返さない。
ギルドに急ぐ。リナはベッドで眠っている。エルフの耳が、弱々しく揺れる。村長が言う。「ライル君、リナは魔力を過剰に使った。結界石を強化し、君の暴走を抑えたんだ」
「リナ…無茶しやがって」シールズ時代、仲間が身を挺して俺を救ったことを思い出す。「村長、魔王軍の次の動きは?」
村長が地図を広げる。「エレシア大陸の聖地の一つ、ルナリス渓谷に魔王軍が集結してる。封印の鍵――君の力と結界石を奪う気だ」
リナが目を覚ます。「ライル…封印、制御しないと…」声が弱い。「私のエルフ族は、魔王の心臓を封じた一族。君の力、女神の計画を超える…誤算かもしれない」
「誤算か。なら、俺が正しい使い方を見つける」リナが微笑む。「ライル、21世紀の男って、ほんと頑固ね」
昼、村の広場でトムと訓練。トムが木の剣を振る。「ライル兄ちゃん、俺も戦いたい!」俺は笑う。「お前、コンビニ弁当以下のスープ食べて強くなる気か?」トムが膨れる。「スープ、美味しいもん!」
だが、笑いは中断。村の外で爆音。煙が上がる。衛兵が叫ぶ。「魔王軍の大軍だ!」広場に急ぐ。ゴブリン100匹、魔狼30匹、黒ローブの魔法使い20人。そして、クリムゾンと新顔――銀髪の男、青いローブから白い魔力が漏れる。「勇者ライル、封印の鍵は我々が頂く。女神の失敗だ」
「失敗は俺じゃねえ、お前らだ!」戦闘適応スキルを発動。体が熱くなり、視界が鋭く。ゴブリンが槍を突き出す。金属が唸り、風圧が髪を揺らす。シールズの訓練通り、ステップで回避。手刀を首に。バキッ! ゴブリンが崩れ落ちる。力を抑えたのに死ぬ。封印の暴走だ。
魔狼が跳びかかる。牙が光り、爪が地面をえぐる。マイクの声。「生きろ、ジョン!」叫びながらMPを集中。「ファイアボルト!」ゴウッ! 火球が魔狼を焼き、焦げ臭いが広がる。リナが駆けつける。「ライル、私も!」杖を振る。「ストームバースト!」風の爆発がゴブリン10匹を吹き飛ばす。「リナ、動けるのか!?」
「エルフの意地よ!」彼女の目が燃える。トムが叫ぶ。「ライル兄ちゃん、頑張って!」その声に、マイクの笑顔が重なる。
クリムゾンが剣を振る。「ブラッドストライク!」黒い刃が空気を裂く。銀髪の男が魔法。「アイススピア!」氷の槍が飛ぶ。俺は跳躍で回避。地面が割れ、氷が砕ける。HPが300/500に。「強いな、幹部!」クリムゾンが笑う。「封印が解けるぞ、勇者!」
封印が疼く。拳が光り、力が溢れる。試しに地面にパンチ。ドガン! クレーターが広がり、村の家が崩れる。トムが悲鳴。「ライル兄ちゃん、村が!」リナが叫ぶ。「ライル、制御して!」
「やってる!」だが、力が暴走。MPを集中。「ウィンドカッター!」ビュン! 風の刃が魔狼を切り裂くが、村の木々も倒れる。銀髪の男が笑う。「その暴走、魔王の心臓を呼び覚ます!」
リナが盾魔法。「ライル、私が抑える!」青い光が村を守るが、クリムゾンの剣がリナを再び狙う。「死ね!」刃が彼女の腹を貫く。リナが血を吐き、倒れる。
「リナ!」マイクの死がフラッシュバック。封印がさらに解ける。「解放進度25%」。力が暴走し、広場が炎に包まれる。銀髪の男が杖を掲げる。「封印に干渉する!」白い光が俺を包む。体が重い。ステータスが揺らぎ、新たなスキルが…。
村が燃え、トムが泣く。リナが倒れたまま。銀髪の男が笑う。「次はルナリス渓谷だ、勇者!」
(続く)




