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第1話 転生の始まり

爆音が響き渡る。砂漠の空気が熱く、重く、肺を焼くように感じる。俺はジョン・ライリー、米海軍特殊部隊ネイビーシールズの隊員だ。任務はいつものように過酷だった。アフガニスタンの山岳地帯で、テロリストの拠点を制圧する。仲間たちと連携し、夜の闇に溶け込んで進む。

「ジョン、右翼を抑えろ!」

隊長の声が無線から聞こえる。俺はM4カービンを構え、岩陰から敵の影を狙う。銃声が連続し、砂煙が舞う。敵の反撃が激しい。グレネードが飛んでくるのを、素早く避ける。訓練通り、体が動く。心臓の鼓動が速くなるが、恐れはない。俺たちは世界最強の戦士だ。

だが、運命は残酷だ。突然の爆発。IED(即席爆発装置)が作動した。地面が揺れ、俺の体が吹き飛ばされる。痛みが全身を駆け巡る。視界がぼやけ、仲間たちの叫び声が遠くに聞こえる。

「ジョン! 持ちこたえろ!」

最後の意識の中で、俺は思う。家族の顔、故郷の海、戦友たちの笑顔。すべてが遠ざかる。死ぬのか? これで終わりか?

――そして、闇。

次に目覚めた時、周囲は真っ白な空間だった。無重力のような感覚。体が軽い。いや、体がない? 俺は慌てて自分の手を見る。透明な何か……魂の状態か?

「ようこそ、勇者よ」

突然、柔らかな女性の声が響く。視界に美しい女神のような存在が現れる。金色の髪、輝く瞳。ファンタジー映画から飛び出してきたみたいだ。

「あなたは戦死した。でも、神々の慈悲により、異世界に転生する機会を与えられるわ。あなたの強靭な精神と戦闘スキルが、この世界を救う鍵になる」

女神の言葉に、俺は呆然とする。転生? 異世界? 冗談か? でも、死んだのは本当だ。受け入れるしかない。

「どんな世界だ? 俺に何を期待してる?」

女神は微笑む。「エレシア大陸。魔法と剣のファンタジー世界よ。魔王の軍勢が脅威を広げている。あなたは新しい体を得て、冒険者として生きる。特別な力も授けるわ。あなたの経験を生かして、平和をもたらして」

特別な力……。俺はシールズの訓練で、射撃、格闘、潜入、サバイバルを極めた。異世界でそれがどう活きるか。面白そうだ。

「了解。やってみるよ」

女神の光が俺を包む。意識が再び遠ざかる。

――目覚め。

柔らかな草の上。青い空、木々が揺れる森。鳥のさえずり。体が……人間の体だ。10歳くらいの少年の姿。服は粗末な布切れ。手足が細いが、筋肉の感触はしっかりしている。

「これが転生か。体が軽いな」

周囲を見回す。森の奥から、獣の咆哮が聞こえる。野生動物か? 俺は本能的に身構える。武器はない。素手で対処するしかない。

突然、茂みから飛び出してきたのは、狼のような魔物。牙を剥き、俺に向かって突進する。レベル1のスライムじゃなくて、いきなりこれか?

「来いよ!」

俺はシールズの格闘術を思い出す。体を低くし、タイミングを計る。狼が飛びかかる瞬間、俺は横にステップ。首に肘打ちを叩き込む。ガキン! という音。狼の体が吹き飛ぶ。木に激突し、動かなくなる。

「え……?」

一撃で倒した? 俺の力、強すぎないか? 少年の体なのに、まるで訓練された兵士の力。いや、それ以上だ。女神の言う特別な力か。

ステータスを確認しよう。異世界ものでは、ステータスがあるはず。心の中で呟く。「ステータスオープン」

すると、視界に透明なウィンドウが浮かぶ。

【名前:ライル(ジョン・ライリーの転生体)】

【レベル:1】

【職業:なし】

【HP:500/500】

【MP:300/300】

【力:100】

【耐久:80】

【敏捷:120】

【知力:50】

【幸運:30】

【スキル:超人的身体強化パッシブ戦闘適応アクティブ、魔法適性(初級)】

力100? 普通の人間は10くらいじゃなかったか? これ、チート級だ。女神の慈悲が過ぎるぞ。

森を進む。村を探さないと。道中、もう一匹の魔物――今度はゴブリンが出てきた。棍棒を振り回す。俺は軽く避け、蹴りを入れる。ゴブリンの体が粉砕されるように吹き飛ぶ。

「ヤバい……力加減が分からない」

力を抑えようとしたのに、相手が脆すぎる。転生直後で、制御が効かないのか。恐れられる前に、力をセーブする方法を考えないと。

やがて、森の出口に小さな村が見えてきた。木造の家々、畑、煙突から煙が上がる。ファンタジー世界らしい平和な景色。

村の入り口で、衛兵らしき男が立っている。鎧を着て、槍を持っている。

「子供か? どこから来た?」

俺は丁寧に答える。「森から迷い出てきました。名前はライルです。泊めてくれませんか?」

男は怪訝な顔。「森から? 魔物だらけなのに、無傷か。まあ、冒険者ギルドに行け。そこで登録すれば、仕事が得られる」

冒険者ギルドか。定番だな。俺は頷き、村に入る。

村は賑やかだった。人々が行き交い、市場で野菜や道具を売っている。子供たちが遊ぶ声。俺はギルドを探す。看板に剣と盾のマーク。入ってみる。

中は酒場のような雰囲気。カウンターに受付の女性。エルフっぽい耳。

「こんにちは。冒険者登録をお願いします」

女性は微笑む。「子供さん? 珍しいわね。名前と年齢は?」

「ライル、10歳です。でも、力はあります」

テストとして、簡単なクエストを勧められる。村外れの森で、薬草を採ってくること。報酬は銅貨5枚。

「了解。すぐ行ってきます」

森に戻る。薬草はすぐ見つかる。だが、帰り道でトラブル。3匹のゴブリンが現れる。棍棒を振り、俺を囲む。

「クソガキ、食らえ!」

一匹が叫ぶ。俺は力を抑える。素手で対応。軽くパンチを当てる……はずが、ゴブリンの頭が吹き飛ぶ。

「しまった! 抑えきれなかった」

残りの2匹が怯える。「つ、強え……魔王の手先か!?」

いや、違うって。俺は慌てて手を振る。「待て、誤解だ!」

だが、ゴブリンは逃げ出す。村に戻ると、噂が広がっていたらしい。ギルドの受付嬢が驚いた顔。

「薬草、ありがとう。でも、森でゴブリンを一撃で倒したって本当? 目撃者がいるわよ」

俺は苦笑。「運が良かっただけです。力を抑えようとしたのに……」

これが始まりか。強すぎて恐れられる。タイトル通りだ。俺は心に誓う。力を制御する。目立たず、普通に生きる。でも、この世界を救うなら、いつか本気を出さないと。

村で一夜を過ごす。宿のベッドで、天井を見つめる。シールズの経験が活きる世界。楽しみだ。

(続く)

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