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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ポーション

作者: HORA

「おい!そこのお前。早くポーションを寄越せ!」

「は、はい。」

僕は奴隷としてダンジョンに入っている。

この理不尽な世界では奴隷に生まれれば一生を奴隷として暮らす。

主人が亡くなった時にだけ稀に解放はされるが、奴隷紋の入った体。その後の暮らしはけっして良い物ではない。自ら稼ぐ事、家を持つ事、暮らせる場所に大きく制限がかかる。ただ奴隷生活よりは幾分マシであり、奴隷は解放されて自由に暮らす事を夢見ている。


僕はアイテム調合の知識を親から教わったので多少なりとも待遇が他の奴隷よりも良い。とは言え毎日殴られ、蹴られ、ずっと働かされるのはそう変わらない。働くわずかなスペースを与えられることと、肉体労働やダンジョン攻略の時間が少し減るだけマシという程度だ。その調合にミスをして素材を無駄にすると食事を抜かれた上で折檻を受ける。ダンジョンで別の奴隷が一人モンスターに食われても補充され、誰も何とも思わない。そんな世界に僕は暮らしている。


奴隷は嘘を吐くことを禁止されている。所有者によってその罰の調整は変わるが、嘘を吐くと奴隷紋から不快な電流が流れる。その強度によってはしばらく流し続けると死んでしまう場合もある。酷い所有者だとそののたうち回っている様子を見ながら食事をしたりするそうだ。


『嘘を吐くと奴隷紋から電流が流れる』

という仕組みには穴が2つある。


1つ目は生粋の嘘吐きには通じないという点。本人が嘘を吐いているという自覚が無い場合には電流が流れない。真実かどうかではなく、感じた事をそのまま言っているかどうかが鍵となる。そうでなければ知識や教養の無い奴隷たちは発言ができなくなってしまう。ダンジョンに潜る以上、様々な意見や報告を上げる必要がある。ダンジョンに一緒に潜る主人もアタック中に奴隷に様々な質問をする。

ただし虚言癖がある人物の場合は自身に都合が良い妄想を現実のものとして書き換えてしまう。奴隷商人や奴隷を購入する貴族が慎重になる唯一のポイントであろう。


2つ目は僕だけが知る。僕にこれを教えてくれたお父さんとお母さんはソレを使い、奴隷から解放されてから僕を捨て別の集落に逃げた。後にその集落はモンスターの大群の襲来により全員が死んだと主人がにやにやしながら僕に言ってきたので、もう両親もこの世にいないだろう。その事実を僕に教えてくれた元主人もすでに前の前の前の前の前の主人だ。


僕は歴代の主人を殺している。僕は従順な奴隷だ。性格も大人しいと自認している。怒られても、叩かれても、殴られても、蹴られても、愚図で体の小さな、物覚えも良くなく、ミスをする僕だから仕方が無いと思う。


でも、殺すのは楽しい。他の雑多な何よりも最も尊い。僕の作った毒で主人がじわじわと弱り絶望の果てに死んでいく。何事にも代えがたい愉悦。こんな喜びを手放して、逃げて死んだ両親は愚かだ。


potion…液状で服用する薬、または毒。一服。盛る。

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