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第7話:カルロの才能

☆前回のあらすじ☆

《反転召喚を無事に成功させ、異世界に戻った鷹はルビーから報酬をもらった。

そしてリベラ村へ戻るため、オルナちゃんに村への戻り方を聞いた》


第7話:カルロの才能


「ところで……リベラ村にはどう帰ればいいの?あの魔導機シーホースを使うのか?」

「あ、それはですね…………」

そうオルナちゃんが言いかけた時、この部屋にノック音が響き扉が開いた。

「オルナ。そろそろ出発しよ……あ、鷹さん!もう帰ったのかと思いまし……思ったよ」

入ってきたのはルビーのようだ。

相変わらず敬語は使わないという俺の約束を守ってくれているみたいだった。

「ちょっとオルナちゃんにお別れの挨拶に来ただけさ」

そう俺は簡潔にルビーに言った。

「そういうことか……あ!そういえば鷹さんに帰り方を教えてなかったね」

ルビーが思い出したかのようにそう言うとオルナちゃんがそのルビーに反応した。

「今私が教えようとしてたんだけどね……」


そのあとルビーとオルナちゃんは懇切丁寧にリベラ村への帰り方を教えてくれた。

どうやら魔導機シーホースを借りれる場所があるとか。

城から出てフリーの料理店の近く……つまり商店街から少し歩いた海に近い所らしい。ただ正直不安だ。異世界の街なんて歩いても迷う予感しかしねぇ……

「あの……できれば地図とかくれないか?」


そのあと俺はオルナちゃんに地図をもらい、兵士に大扉を開けてもらい城から出た。

「まずやることは決まってるな」

俺は目を瞑り言い放つ。

「服装だよ服装!なんだよこれ襤褸(ぼろ)一枚ってふざけてんのか!」

お金を得た俺は尊大な気持ちが膨れ上がっていた。

颯爽と長ったらしい階段を降りると商店街へと足を運んだ。

20時頃の空気を漂わせる商店街はまだ明かりが灯っていた。

「さてっと……服屋さんは……」

俺の目的地はもちろん、服屋さんだった。

この襤褸とお別れできると思うと心が躍る。

綺麗な服がガラス窓から透けて見えるその服屋さんと思わしき店を見つけ、俺は店内へ入った。

扉を開けるとカラカランと鈴の音が鳴る。

綺麗な店内に無数の服が置いてあるのが見えた。

「さてさて……どうすっかな」

そして俺は遂に服を決め、試着室で着替え、購入を決意した。

選んだのは私服と農作業に使える硬質の服の2種類だ。

私服の方は黒がベースのフード付きのジャケットと白のガーゴパンツだ。

農作業の服の方はツナギのよくある農服って感じだ。

服を購入したあと、受付の店員が「試着室でさっそく着替えてもいい」と言ったので俺は早速私服の方に着替えた。

あと余談だが、この世界の金銭レートの全容が今のお会計でわかった。要は日本と同じだ。100円なら100ジュアルだし10000円なら10000ジュアルだ。

(分かりやすくていいねこの世界。野菜もカボチャとかあるし)

それから店を出て地図を開きシーホースの借りれる場所まで向おうと歩き出す。

ちょっと歩いたその道中……


街の人と思われる四十代くらいの男が叫ぶ。

「ゴブリンが!ゴブリンが出たぞ!!」

(おいおい嘘だろ!?)

俺は心の中でそう騒ぐ。

ふと噴水通りを見ると確かにゴブリンが見えた。

木造りの大きなハンマーを持ち、破れた襤褸を着ていた。

そして俺はそのゴブリンの三白眼と目があってしまう。

「なんだぁ?坊主」

どうやらそのゴブリンは俺が喧嘩を売ったと勘違いした様子だった。

(まずい……殺られる……!)

そう思って焦ったがよく考えてみれば俺にはアビスリングがある。

「くっははは!いいぜ?」

俺は指に指輪をはめ、調子に乗ってそう言った。

「ほうぅ?いい度胸してんな!このクソ坊主が!!」

ゴブリンはそう言い放つと勢いよく大きなハンマーを振り翳しながら俺に向かってくる。

俺はアビスリングをはめている左手をゴブリンに向け叫ぶ。

「発動!」

すると……アビスリングは赤く光だした。

気付けば俺は右手にゴブリンの持っている大きなハンマーと同じ位の大きさの"鉄製"のハンマーを持っていて自動的に体が動き始めた。

「な、なに!?俺様の真似事か!?」

ゴブリンはその俺に驚いた様子だ。

自動的に動く俺はゴブリンに殴りかかっていた。

(まさか……アビスリングの未知の力か!)

俺はすぐさまルビーの言葉を思い出した。


【アビスリングの記録書は所々破れていて読めないんだ。だから"生物の特徴を借りる"って記載しか判らないのが現状だ。他にも効果があるかもしれないからそれだけは言っておくよ。】


"他"にも効果がある……

この自動的に動く力も鉄製のハンマーも……その"他"の効果の一つか?

そう思考を巡らしてる間にも俺の身体は気付けばゴブリンの間近にいて鉄製のハンマーを振りかざしていた。

そのままゴブリンのハンマーと俺のハンマーがぶつかり合い大きな衝撃音が鳴る。

その時だった……

「な、なにぃ!?俺様のハンマーが……!」

ゴブリンの木造りのハンマーが壊れた。

俺の鉄製のハンマーは無事なようだ。

(どうやら勝負あったな……)

俺はそう確信する。

「そんな……!許さん!許さんぞぉぉぉ!!」

ゴブリンは激情して壊れたハンマーを捨てた。

そして、俺に素手で殴りかかってきた。

(く……!まずい!)

俺はそう察して身構えた。

その時またもや、アビスリングが光を放つ。

「ふっ!どうやらこの指輪かなり使えるかもしれん!」

俺はそう叫び、ゴブリンの身体をその鉄製の大きなハンマーで叩き上げる。

「グギヤヮアアアアアア!!」

ゴブリンはそう悲鳴をあげて倒れた。

倒れたあと、そのゴブリンは黒いオーラを放ちながら霧散した。

「ん?何か落ちてる」

俺はそのゴブリンの霧散した場所の地面にコインが落ちていることに気づいた。

鷹の羽のデザインが描かれたコインだった。

俺はそのコインが何円なのか理解できた。

「100ジュアルか。やっす」

そのコインをひっくり返すとに100と分かりやすく書かれていて100ジュアルだと分かった。

そう言えばさっきの服屋でもお札がこのコインと似たように10000って書かれてたな。

その時、お釣りでコインも貰ったけどあんま気にしてなかったな。

(鷹の羽のデザインかいいね。俺の名前にもあるし)

そうブツブツ頭の中で言っていると周りの野次馬達が俺を見ていた。

何か感謝しているようだ。

「ゴブリンを倒してくれてありがとう〜!」

「あんたは救世主だ!」

俺はその人達に「実験台にしただけだ」と適当にカッコよさそうなことを言っておいた。

(というかこの王都の兵士は何してんだか……ゴブリンが出ても駆けつけてこないとか。いや……そもそも王都アルストにこんなトラブルは滅多にないのかもしれない)

俺はそう考えた後地図を開く。

その後ふと思いついた。

そういえばシーホースに乗った後は2時間くらい車内に拘束されるんだった。

暇ができるのは嫌だな……

よし、何か雑貨屋で買おう。

ルビーにもらったアルストの地図は分かりやすく、服屋の場所は勿論、雑貨屋の場所なども書いてあった。


(よし。雑貨屋に向かおう)

現在地から近くの雑貨屋に俺は向かいそして、着いた。

木造りのお店でそこそこの大きさだ。

ざっと直径10mくらいか。

扉を開け、中に入り店内に並べられた品を調べる。

するとふと目に入ったのは「農法の書」という本だった。

目次を開き見てみるとどうやらアルカも言っていた農作業に使う魔法が詳細に書かれている本らしい。

「これはもはや必需品だな。購入確定っと」

そう呟きその本を手に取り、他の商品も見て回る。

(500万もあるわけだし何買ってもいいな。ここは値が安いしね)

そしてその農法の書の他に俺はグミやポテチなどのお菓子と水を購入した。


その後、店から出てから、目的地である魔導機シーホースを借りる場所まで着いた。

夜の月が反射する綺麗な海が見える堤防があり、その近くに30mくらいの大きさのビルのような建造物が見える。

どうやらここであってるようだ。

なぜならそのビルの駐車場に魔導機シーホースが散在している広場が見えたからだ。

俺はその建造物の自動ドアを開け、入っていく。


ホールの受付と思わしき女店員を見つけ話し掛ける。

そのあと、魔導機シーホースの予約を完了させた。

その店員に外の駐車場にある地面に3番と書かれた場所のシーホースに乗って欲しいと言われた。

外の駐車場に行きその3番のシーホースを見つける。

前にルビーと乗った時は言わなかったがシーホースも普通の馬車みたいに運転手がいるのだ。

その運転手にリベラ村まで頼むと告げ、車内に乗り込む。

「こっから長いけど、この農法の書があれば暇は潰せるな。お菓子も準備ok」

そのまま乗せられるがままに俺はシーホースで農法の書を読みながらリベラ村まで向かう。

農法の書には農作業に使う魔法が書かれていてどうやら「農作業に使う魔法」=「農法」らしい。

だがここで変なことが起きた。


なんとその書の内容が不思議とすらすらと読めてしまう。

(なんだ……?なんだこれは)

そして数分考えその違和感の正体に気付いた。

(これはまさか……才能か!)

そうそのまさかだ。

農民のカルロは確かにこの異世界の中ではモブキャラという立ち位置かもしれない。

でも、農作業という一点では天才だったのかもしれない。

そのまま2時間くらいが経過しついにリベラ村に着いた頃には俺は分厚い農法の書を全て読み終えていた。


俺は運転手に感謝の礼をした後、シーホースから降りリベラ村へと向かう。

相変わらずの畑林が連なったその村は本当に何も無い。

木造りの家が数個散在し、閑散としていた。

そのままその畑林の奥にあるはずの、あの「例のマイホーム」まで戻るため、歩みを始めるとこの間、倉庫の前で会話した40歳くらいの青髪のおっさんが話しかけて来た。


「カルロ!お前どこ行ってたんだよお前がいない間俺が店番してたんだぜ?ったく……」

「あ、ごめんごめん。王都に行ってたんだ」

「王都!?あのアルストか!」

「うんそうなんだ」

俺は嘘を付かずに正直に言った。

別に嘘をつく意味はあまり無いだろう。

「なんだよぉ……それなら言ってくれればよかったのに……あ、お土産とかあるの?」

「いや……ごめん、ないよ。店番ありがとうね。じゃあ僕はこれで」

「なんだよないのかよぉ……ま、お互い農業頑張ろうな。じゃあな」

そう言って別れる流れになる。

お互いに背を向け歩き出した時、後ろからそのおっさんの声が聞こえた。

「あ、もしかしてその服装もアルストで買った物か?珍しいもん着てんなって思ってさ」

「うん……そうだよ〜」

その会話の後、何となく沈黙が続きその後本当に別れた。

お別れ後、俺は普通にマイホームに戻り、背伸びをする。

「いやぁ……とんでもない事になったな。それにしてもあのアルカも消えたしこれからは農業に精を出すとしようか。特にやる事ないし!」

俺はそう決め、農法の書にあった通り、農法を使ってみる事にした。

なんということだろう……カルロの才能は本物だった。

上手い具合に農法の魔法が扱えるのだ。

豊潤な壌土を作る魔法や害虫を寄せ付けない結界魔法などを駆使していたらあっという間に3日あたりで収穫タームに入るではないか……

次回予告!

アルカも消え、農作業がスムーズに進むようになり鷹は農作業に精を出していた。

そんなある日!風の噂で近々「バトルロワイヤル」と呼ばれる貴族達が嗜むイベントが開催されるらしい。

次回タイトル「バトルロワイヤル」

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