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第4話:王都アルスト

☆前回のあらすじ☆

《ナレーション:皇王鷹

魔法の書・入門を読んでいたらアルカの奴に喧嘩を売られちまった。

そしてアルカの魔法で死に掛けた時、ルビーっていうこの世界の主人公のような奴が駆け付けてきた。

んで、まさかの王都に招待される展開に。正直こええ》


第4話:王都アルスト


「突然だけどカルロ。アルストに来て欲しい。アルストっていうのはこの世界の王都の事さ」

(ええええ!いきなりイベント進むなこりゃ)

農民モブの俺にこんな激アツ展開あってもいいのか……

あと何度もいうけど俺の名前はカルロじゃねぇ。

そう思ってルビーにそれを言う事にした。

(あと、ルビーになら素性を明かしても問題ないだろうしね)

「訂正させてもらうけど、俺の本名は皇王(こうおう)(たか)だ。この身体はカルロかもしれないけど中身は26歳だからよろしく」

できるだけオルナちゃんには聞こえないように注意してそう言った。

ルビーは驚いた顔で言い放つ。

「た、鷹……?って!ええ!26歳!?」

「声がでけぇ!オルナちゃんには黙っておけ!」

俺はそう言ってオルナちゃんを見る。

オルナちゃんは欠伸をしていて、さっきの会話は全く聞こえていなさそうだ。

ルビーに振り返ると俺を見てウンウンとめんどくさそうに頷いていた。

(ふぅ……俺の馬鹿!なんでオルナちゃんの前でこんな真似をしてしまったんだ……オルナちゃんに年齢バレとかまだ展開的に早いだろ!)

そう慌てて俺は話題を変える事にした。

「と、ところで!ルビー。なんで俺をアルストに連れて行こうとしてるわけ?」

「鷹さんじゃなくて……カルロ。うん。理由は……着いてから話すよ。実物があった方が分かりやすいだろうし」

ルビーはオルナちゃんに俺の正体がバレないように気を遣ってくれたのかカルロと呼んできた。

案外いい奴だな。

そのルビーの発言の後、馬型の魔導機が俺達の近くにやってきた。

建設予定の家の骨組みのように作られたその魔導機はメカニック的で所々透けている穴から蒼い光が漏れ出ている。

いきなりの魔導機に俺は驚く。

「うわぁ!」

「ごめんごめん驚かせちゃったね。こいつは魔導機"シーホース"って言うんだ。さ、乗って乗って!」

どこに海要素があるのか分からんがシーホースらしい。

もしかして海要素、この蒼い光か……?

そんな事を思いながら俺とオルナちゃん、ルビーの三人でシーホースに乗る。

シーホースの中は、馬車と同じような構造になっていて四人がギリ乗れるくらいのサイズだ。

馬車と違う点は窓ガラスがあり、機械的な内装になっているところかな。

そんなシーホースが走り出したあと、ルビーが窓を開けた。

辺境な地、特有の気持ちのいい風が入ってきて俺の頬を撫でる。

突然、オルナちゃんが口を開く。

「カルロ君ってシーホース知らなかったの?常識じゃない?」

「え……あぁ!農民だから知らなかった」

最もらしい理由で嘘をつく事に罪悪感があったが、オルナちゃんにはまだ真実を打ち明ける自信はない。

(本当は現実世界から来た中身26歳の男でブラック企業の底辺やってました!なんてとてもじゃないが言えない)

オルナちゃんは「へぇ〜」とこちらを見ながら言った。

肩まで伸びる薄金色のツインテールが風に靡く、その横顔はまさに天使。いや女神。

思わず手を拝みそうになったのを抑えた。


数時間経過して、遂に俺達はアルストに着いたようだ。

正直クタクタだ。

途中からオルナちゃんは眠り始め、ルビーは何やら本を読んでいた。

俺は適当に外でも見ていた。

それほどシーホースの中はやる事がない。


「はぁ……着いたぁ。やっぱりリベラ村は遠いな。

オルナ!起きろ!着いたぞ」

「んー……あと5分」

オルナとルビーの2人はカップルのような会話をし始めていて、正直ちょっと妬いた。

ふと窓の外を見るとそこにはまさに異世界と呼ぶべき景色があった。

感動で思わず吐息が出る。

(マジで異世界だ……現実世界とは空気感がまるで違う)

大きな屋敷や商店はもちろん、赤黒いレンガで作られた地面の噴水通りが見える。

特に目立つのは奥の中央に聳え立つお城だ。

龍の絵が描かれた旗がヒラヒラと舞っている。

そんな窓の景色を見ていた俺に反応したのはルビー。

「あのお城に向かうよ。準備はいい?」

「心の準備はもうとっくにできてるよ。この長ったらしいシーホースのおかげでね」

そう言うとルビーはその良い顔でニッコリと微笑んだ。


シーホースから俺達三人は降り、白いレンガで塗装された道を歩いていた。

どうやらここは商店街のようで野菜の並んだ店や服を飾った店などが散在していた。

すると、ルビーが口を開く。

「お腹減ったなぁ」

その次にオルナちゃんも「私も……」と言った。

確かにその通りだ。俺もお腹が減っていた。

「よし、フリーの奴の店に行こう。この商店街の近くにあるからね!」

「フリー?」

俺はその聞き覚えのない名前に懐疑する。 

すると、オルナちゃんが答えてくれた。

やはり女神だ……もう好きすぎる。

「えっとね……フリーは私達の仲間の1人だよ。料理人をやってるからそれで今から向かおうって話だよ!」

「なるほどぉ。オルナちゃんありがとう。よしでは、レッツラゴー」

なんだか楽しくなってきた俺はそんな掛け声をする。

いやなんだ。26歳だけど見た目はカルロだし?子供っぽくても許されるのだ。

いやでもなんか変な気持ちだな。


そうして俺たちは料理人フリーのいるであろう店「チキンサラス」まできた。

なんで名前がわかったかって?

ルビーがそう言ってたからだ。

「さて、フリーはいるかな……っているに決まってるけど」 

そう言いながらルビーはドアを開ける。

店の中に入ると中華レストランのような内装が見えた。

丸いテーブルがいくつもある。

「ようフリー」

ルビーがそう言った。

「お、ルビーか。注文はいつもの?」

その男の子はカウンター席に立ち、和かに微笑んでいた。ルビーやオルナと同じく15歳くらいの男の子のようだった。

服装はコックの服で頭にはコックの帽子を被っていた。

両目が黒い布で隠れている。

(目隠し系のキャラもいるわけか……厨二病かよ)

俺は思わず心の中でそう思った。

ルビーはそのフリーという男の子に答えた。

「ああ。いつもの熱々唐揚げで頼む」

そう言ったあと、フリーがオルナちゃんと俺にも注文内容を聞いてくる。

「OK。そこの2人は?」

俺は適当にメニューを開き、なんとなく目に入ったタラコスパゲティを頼むことに。

オルナちゃんはオムライスを頼んでいた。

もはや何を頼んでも君は可愛い。


注文の料理は1分くらい経過してから来た。

案外スピーディーな店だな……ま、いいや。

「このスパゲティうま!」

俺は無我夢中で食べた。

思えばこの世界に来てから何も食ってなかったから尚更。

「やっぱりフリーのオリジナル魔法は早いね。唐揚げ、スパゲティ、オムライス。なんでもありだ」

「オリジナル魔法?」

そのルビーの悠長な話に俺は耳を傾けた。

「ああ。フリーにしか扱えない魔法、"インスタント"は即座に料理を生み出すんだ。だからこんなに早く料理が来たんだよ」

「へぇ……だからか!流石は勇者。仲間も優秀ってわけか」

すると、俺のその"勇者"という単語に頭を傾げるルビー。

「ユウシャ?それはなんだい?」

ルビーが真面目な顔で俺に聞いてきた。

(いや、とあるゲーム……の用語なんて説明してもルビーには分からないだろうし……)

苦悩の末、俺は的確な表現を見つけた。

「いや、なんだ!物語の主人公的な物かな。あっはは!」

「僕は褒められたのかな?」

ルビーが首を傾げる。

その隣でオムライスを上品に食べていたオルナちゃんも口を開く。

「物語の主人公!まさにルビーはそんな感じだよね。カルロ君、ルビーの事を褒めてくれてありがとう」

「お、おう……!ところで、オルナちゃんそのオムライス美味しい?」

オルナちゃんのありがとうと言いながらの笑顔……それに俺は思わず照れてしまった。

慌ててオムライスへと話を逸らした。

「え……?うん美味しいよ。当然だよフリーの料理はプロ級なんだよ?」

「へぇ。確かに美味いもんな」


そんな感じで俺達は食事を楽しんだ。 

そのあと、またあの白いレンガの道を歩き始めた。

ついにお城へと向かうのだ。

そして、俺とオルナちゃんとルビーの三人で歩き始めて少し経ち、ルビーは俺の耳に小声で話しかけてきた。

「(正直このままオルナとお城に行くと絶対に鷹さんの正体がオルナにバレちゃうと思うんだけど……それでもいい?)」

「(いーやダメだ!)」

小声で俺たちは話し始めた。

オルナちゃんはファフと会話しているのか俺たちには気付いてない模様。

「(んー、じゃあここでオルナとはお別れかな)」

「(!?)」

突然のルビーの発言に俺は驚いた。

(お、お別れは無いだろ!)

俺は内心でそう呟く。でも確かに仕方ないことでもある。

もしお別れしたくないのなら俺の正体を明かすしか無いのか……でもどの道、オルナちゃんにはいつかバレるだろうし、バラしてもいいかな。

そもそもいくら嘘も方便とは言っても嘘はよくない。特にオルナちゃんに嘘をついてるのは世界的に良くないと思う。

俺は意を決してルビーに言う。

「(ルビー、待った!やっぱりこのまま三人でお城に向かおう。……正体をオルナちゃんにバラす覚悟はもうできた!)」

「(わ、わかった……)」

ルビーは少し冷や汗をかきながら俺に頷いてくれた。

腹括ったぜ俺は。嫌われても泣かない。


どれくらい歩いたろうか?

多分、30分くらい。

やっぱりお城への道は長かった。

しかしもうお城は目の前にある。

お城の入り口へと続くであろう長ったらしい大階段が見えて俺はため息を吐く。

「はぁ……嘘だろぉ」

ふと2人を見るとあんまり疲れていない様子。

2人ともなんでそんなに元気なのさやっぱり若さかな。

俺はそのままゼェハァ言いながら階段を登り切り遂に俺達はお城の入り口へ辿り着いた。

「さぁ。着いたね。開けてくれー!僕だ。ルビーだよ」

その声に反応して城の兵士と思われる男が2人現れ、城の大扉が開く。

ゆっくりと歩きながら俺達三人は城の中へと足を踏み入れる。

中は豪華な装飾のされたまさに「城」って感じの内装だった。


「僕の部屋に行くよ。オルナ、カルロ。着いてきて」

オルナちゃんと俺は頷く。

ルビーが城の中央から右手辺りにある螺旋階段を登り始めたのでそれについて行く。

(一体、何が始まるってんだ?)

俺はこれから起こる事に何だか胸騒ぎがしていたが、なんとなく予想は着いていた。

(俺が選ばれし者で、魔王を討伐して欲しいとか言われるんだろうな……うん覚悟しとくか)


次回予告!

ルビーの部屋の中で、俺は予言の書ってやつを読まされる事になった!

んで、どうやら現実に一旦戻らなきゃ行けないらしい!

なんでこうなるの!

あと俺選ばれし者って奴でもないらしい……ガッカリだよ。


次回タイトル「予言の書を読めるのはお前しかいない」




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