表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/8

第2話:「それよりオルナちゃんを見たい」

☆前回のあらすじ☆

《負け男、皇王(こうおう)(たか)は正体不明の男2人に魔法を掛けられる。

目を開けるとそこは異世界でどうやらカルロと呼ばれる男の子と入れ替わっていた……!

そして、金髪ドリル女にジュセルという謎の呪文を告げられ……さぁどうなる鷹!》


第2話:「それよりオルナちゃんを見たい」


「ジュセル」

その女の子特有の高い声が小さく響く。

(な、何やってんだ?)

「ふふふ……あと数分もすれば来ますわ。人生終わりですわね!バイバーイ」

悪魔のように笑いながらその女の子は言った。

「まさか…‥警察!」

「そうですね。"ジュエルリス自警団"に成す術なく僕くんは終わりますわよ!」

「は?」

じゅえ……なんだって?自警団ってことはこの世界にも警察が居るのか。

ってか長文の団名なんて覚える気にもならん。

そう思って金髪ドリル女を睨み付けると癪に触ったのか答える。

「ま、せいぜいあと数分の命ですわ!」


そのセリフの後だった。

ドアが物凄い勢いで開いた。

「今の蒼い光……"エマージェンシー"の魔法じゃな!おいカルロなんかしたなお前!」

そう言って俺を睨み叫ぶ。

「俺はカルロなんて名前じゃねぇよ。鷹!OK?」

そう言って言い返すとおじさんは思いっきり殴ってきた。

「痛ッッ!!」

「ふざけてる場合か!さぁ白状しろ!」

「はぁ?」

俺はなんも悪くないだろ?どう考えても。

勝手にこんな世界に飛ばされて知らねーよ。

そう思って不貞腐れたような態度を取る。

おじいさんはまた右手を振り翳す。

(くる……!)

その時だった。金髪ドリル女が口を開いた。

「待った!」

シーンと家の中が静まり返り、おじいさんは手を元に戻す。

そしてその女の子の方を向いた。

「その少年は捻くれているのか説明しないようだし私が話す事にしますわ」

その女の子がそう言うとおじいさんは礼儀正しく答える。

「はっ!よろしくお願いします!」

俺は不貞腐れながらその話を聞く。

いや、どちらかといえばあのゴツい男に負けた事の方で不貞腐れていたかもしれない。

「まず私はこのお店に買い物をしに来たんですわ。そして商品のお会計を頼もうとしたらそこの店員であろう少年はトイレに駆け込んだの。そしてやっと戻ってきたと思えば次はお会計の仕方を知らないとまで言うんですわ!」

「知らないですと……?そんなことあり得ない!」

「言いましたわ!ね!少年」

そう不敵な笑みで俺に聞いてくる。

こええ……

仕方なく俺は答えることにした。

「あ、ああ……そうだ言った。いや、なんだ……この機械。魔導機とでも言うのかな?初めてで無理だってこんなの」

「そう、それは魔導機の"レジャス"だ。忘れたのか?くっっ。全く……ありえんじゃろう」

やっぱり魔導機か、魔法+機械=魔導機。 

魔法のエネルギーがないと動かないのか、それとも違うのか?その辺もわからないしそもそもこのカルロって少年は魔法使えたのかも分からん。

その会話の後、女の子はまたもや金髪ドリルの髪を弄りながら言う。

「さぁて。そろそろかしら」

その発言の後、家の扉が開き、数人の剣士の格好をした男が駆け付けてきた。

「我ら、ジュエルリス自警団、今参りました!ルリ殿、御用は?」

「そこにいる者、カルロという緑髪の少年を捉えよ!!」

「はっ!」

(あ……この流れは完全に俺捕まるやつじゃん)

そう思って意気込むとまさかの展開になった。

「すみません!代わりに私を捕まえて下さい。カルロにはまだ未来がある。私はもう先は長くない……」

「おい、おじさん!嘘だろ!」

全く関係ないはずなのに何だか心が苦しかった。

しかしここで捕まるのも嫌だという小悪魔的な感性も俺にはあった。

(ま、まぁいいか。これで助かる……)

ルリと呼ばれていた女の子は言う。

「まぁいいですわ!では命令変更。そこの髭面の男を捕えるのですわ!」


そうして、おじさんはルリに会計を頼まれ、済ませた後、自警団に連れて行かれた。

俺は呆然とその場に立ち尽くしていた。

「あーあ……行っちまった。……それにしても、あの水族館事件からまさかこんな展開になるとはね」

そして、この時、俺は負け続けてきた人生の中での初めて勝利を実感した。

(異世界のキャラと入れ替わるなんて…………ある意味で勝者だ)

あとさっきルリを顔が可愛くて性格がいいとか思ったけど前言撤回しよう。あれはまさに悪役貴族だ。

「それにしても本当に異世界にいるんだよな俺……」

全く実感は湧かないが、本当はなんかの夢なんじゃないかとすら思っているのが実際だ。

異世界なんてこんなもんか……

それよりあのおじさん助けなくていいのか俺……

「んー……」

数分くらい悩んだ挙句、まぁどうせ助けに行っても農民モブの俺じゃ無理だろうしいいやと「放置」という手段に出ることにした。

「じゃあ……まずは情報収集かな」

俺はこういう異世界に行ってしまった時の事を案外日常の中で妄想していた。

こういう時はRPGみたいに情報収集から入るのがいい。

まぁ今ある情報としては……

・カルロという少年と入れ替わった事

・カルロはおじさんと農民生活をしていた事

・貴族や警察のような概念がある事

・カルロはいじめられっ子で悪ガキ貴族"アルカ"にからかわれてる事

だな。

明らかにこれは農民モブの設定なんだよな。

ゲームの世界ってわけじゃなさそうだがゲーム風異世界である事は察せられる。

(魔導機なんて物もあるしな……)

そう思いながらも家の中で、俺はぐるぐると回りながら考察していた。

(何かイベント起きねーかな?)

そう思いふと気づく。

「そういやあの倉庫の中、食料あったな。もしかしたら種とかもあるかもしれん。ま、農民は農民らしく農作業と行くか」

と、考えたが俺は気づく。

「いや、その前にまずレジの使い方の本とかないかな?レジ打ち出来なきゃまた変な貴族様に捕まるな……」

そう思い家の中をくまなく探す。

二階に行くと部屋が複数あり、その一つの部屋の中に入る。本棚があり、そこにある本を一つ適当に手に取る。

「魔法の書・入門ね……」

興味をそそられるなこれは……

目次を見ると、初級編と書かれた部分がある。

「なになに……"マナの放出は適性のある者が出来る"と……適性ってどうしたらわかるんだろうか」

そんなこんなで読み進めて俺は魔法の情報を得た。

まとめると

・適性のある者しかマナは放出できない。

・マナの放出に適性のある者は左手の甲に十字架の紋章がある。

・マナの放出は、マナを放出したい身体の部位で呼吸をする感覚。

・呪文を唱えないと魔法は発動しない。

・マナの放出ができる者しか魔法は使えない。

という事だった。

ふと、左手を見ると見事に十字架の紋章があることに気付く。

「やった!これで魔法が使える」

(ってそうじゃねぇだろ!!)

思わず俺は部屋の中でじだんだを踏む。

レジ打ちの方法を探してたのに!

まぁでもいいや……とりあえず魔法は使えるのは確定と。

そしてまた俺は本棚の中を探し始める。

数分後……


「あった!」

"魔導機コレクション(これで貴方も魔導機マスター)"

というタイトルの本だった。

さっきのレジみたいな機械はおじさんが言うに魔導機レジャス……

魔導機コレクションってんならここに情報は載ってるはず。

そして魔導機レジャスの項目を見つけた俺は内容を読み解き、レジャスの置いてある場所まで行き実践をする。

レジャスを動かすにはマナを出力しなきゃならん……

「マナよ出ろ!!」

右手をそのレジャスに掲げそう俺が叫ぶ。

すると、俺が意気込んだのが起因したのか分からんが右手が呼吸を始めるような感覚になる。

そしてレジャスの起動音が鳴った。

「なんか知らんけどマナの放出が出来たな……いちいち声に出すのは要らないんだろうが」

そんな事を呟いていたらどうやら扉が開き人が入ってきたようだ。


「お邪魔します」

な、なんだと……!!

そこに居たのはこの世の綺麗という概念を詰め込んだような美少女だった……!

年齢は15歳くらいで、薄金色のツインテールを靡かせ、黒と白のドレスを着ている。

そして、透き通る水色の瞳を俺に向け彼女は俺に話しかけてきた。

「あの……すみません。このお店にカボチャってありますか?」

「か、カボチャ……っすか。あ!あると思います」

店員としてはなかなか酷い受け答えをしてしまう俺。

あると思いますってなんやねん。

それも仕方ない。俺だってまだ転生したばかり。

このお店について何も知らない。

ただ、カボチャは倉庫で見たよな。

って事は商品として置かれていてもおかしくはない。

店内(家)に並んだ商品を物色してみると……

「あったあった」

ありましたよカボチャ。

何つーか異世界なのにカボチャってそのままのネーミングなのは不思議だけどさ。

そういう異世界なのかね。

「ありましたよーお客さん」

俺はそのカボチャを手に取り、名前が分からない美少女に手渡しする。

「ありがとうございます♪これでファフの餌も確保完了!」

「ファフ?」

「い、いや何でもないです!お、お会計お願いします!」

その子はツインテールの金髪を靡かせながら慌ててそう言った。

俺は魔導機コレクションにあった通り、レジャスをちゃんとに使い、お会計を終わらせる。

「ありがとうございました!」

その子はそう言ってクルリと踵を返す。

そこで俺はその子を止める。

「な、なぁ君の名前を良ければ教えてくれないか?」

あまりにその子が綺麗なもんで俺は完全に心を奪われていたようだ。

名前なんて農民の分際で聞くなんて烏滸がましいのは知っている。しかし身体が止められなかった。

「え!な、何ですか急に……自警団呼びますよ?」

当然のようにその子は警察の準備をする。 

「いや待って待って!それだけは勘弁!」

「じょ、冗談ですよ♩オルナ……オルナ・フォンス・レメタリア」

その子はこの世界を全て溶かしてしまうような笑顔で俺に言う。

ここで俺はみんなに言いたい。

嗚呼……ダメだ完全に恋に堕ちてるよ俺。

今絶好に蝶してるよ。つまり絶好調。

「オルナ……ちゃんか。でも君彼氏とか居るんだろ?」

勿論そこが肝心。俺は即座に聞いてみた。

「え……っと。ファフ……うるさい!今は居ないけど……その人とはいつか必ず恋に発展させてみせる予定かな」

「何だよぉ……好きな人いるんか」

俺はガックリと肩を下ろす。ってか今なんか変な事言ったような……ま、いいや可愛いし。

オルナちゃんは驚いたように言う、

「え、私のこと狙ってるんですか!私なんかの事を?」

「"私なんかの事"って……存外に、自己肯定感は低いんだね」

美人は基本的にプライド高い物だと思っていたが……さすがは異世界。現実世界の常識は通用しない。

「そうですね。私は昔から卑屈でした」

そして続けて言う。

「それと……君みたいな少年くんにはまだ早いからもっと大きくなってからじゃないと無理かな……」

今更だがその子の年齢は15の高校生くらいだ。

だから俺みたいな11歳くらいのガキ(見た目だけ)にはまだ早いって話だな……

俺はフラれたショックを誤魔化すように話す。

「っていきなりフラれてんだけど俺……!そうだった今の俺ってショタの姿なんだ。しかも襤褸(ぼろ)一枚」

そりゃそうだ……こうして俺の異世界に来てからの初恋は無惨に散った。

次回予告!

オルナちゃんにフラれた鷹はその悔しさをバネに農生活に精を出し始めた。

そんな時、ふとオルナちゃんと現れるルビーとかいう男。   


次回タイトル「異世界の勇者枠登場!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ