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妙メモリー

援助交際していたぬいぐるみの富田

作者: みょめも

これは僕が高校生の頃だった。

当時は部活帰りによく繁華街で買い食いしており、富田を見かけたのはそんなときだった。


富田は薄暗い歩道で、足を広げて伸ばす格好で座り込んでいた。

僕は友達に先に帰ってもらい、富田にどうしたのかと話しかけに行こうとした。

すると「こんなところに置いていかれちゃって……」と富田に話しかける女性が現れた。


最初は何事かとぼーっと見ていたが、女性が富田を担ぎ上げると、富田はされるがまま、女性につれていかれてしまった。




次の日、学校で富田と顔を合わせたのでズバリ聞いてみた。


「富田さ、援助交際(ぬいぐるみ)してるだろ。」


富田は驚いた顔をしていた。


「昨日、繁華街で見たんだよ。女性に担ぎ上げられてたよな。」


「あぁ、見られちゃったか……。」


確かに富田はぽっちゃり体型ではあったけど、まさかではあった。


「見たことは誰にも?」


「ああ。」


富田は胸を撫で下ろした。

もちろん援助交際(ぬいぐるみ)してるなんて学校や家族に知られたら終わりだ。

けれど、それよりも僕は『友人に援助交際(ぬいぐるみ)しているやつがいる』という状況に大いにドキドキしていた。

絶対に言いふらさないという約束で、援助交際(ぬいぐるみ)がどんな感じなのか個人的に聞いた。


基本的には、一緒に食事をしたり、テレビを見たりするとのことだった。

その中で手を繋ぐだとかスキンシップをとるぬいぐるみもいるが、健全な関係しかとらないぬいぐるみもいるという。

それと話によると相手の自宅には元々からぬいぐるみがいる、という状況が割とあるらしい。

そういうときは、あらかじめ皆さんを壁側に向けておいてくれる人が多いのだそうだ。

それはそうだ。

見られながらのあれこれなど集中できるはずがない。

チャックひとつ下ろすのもままならないだろう。

援助交際(ぬいぐるみ)にも礼儀ありといったところだ。


しばらく話を聞いたあと、僕は最も気になっていたことを聞いた。


「でさ、ここだけの話、富田は援助交際(ぬいぐるみ)でどこまでやるの?」


「昨日はあの人と寝たよ。」


あまりにストレートな返答に眩暈がした。

高校生が言うセリフではないと思った。

富田が言うには一晩中、それこそ文字通り朝まで抱かれたようだった。

その証拠に富田の中綿は不自然に一部分だけ寄っていた。

僕は羨ましくて仕方なかったけど、どうやってもぬいぐるみにはなれない。

手や腹はいいとこ中肉中背だ。

そもそも中身が綿ではない。


「あーあ、俺も中綿だったらなぁ。」


僕がそう呟くと、富田は「意外とクリーニング大変なんだぜ」と笑っていた。


まず足を洗ったほうがいいのではと思った。

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