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第9話 運び込まれた騎士



「──!!」

「────!!」


 何やら廊下の方が騒がしい。

 私たちはその騒がしさに顔を見合わせる。


「どうした?」

 廊下へと顔を出し状況を確認するクロードさんの背について、私も様子を伺う。すぐに一人の騎士が、クロードさんに気付いて足を止めた。


「クロード殿下!! 実は、ダグリス隊長が……!! 魔獣討伐に出かけた折、部下を庇って負傷し、重傷で運び込まれまして──!!」

 それを聞いてクロードさんの顔色がサッと変わった。

「ジェイドが!?」

 ひどく動揺した様子のクロードさんに、私は「ジェイドさん?」と聞き返す。


「あ、あぁ……、俺の剣の師でもあり、兄のような存在でもある方だよ……。まさかあのジェイドが……。──リゼさん。少し様子を見てきてもいいかな?」

「私もご一緒します!!」

「しかし──!」

「何かの役には立つかもしれませんし!!」


 【たくあん錬成】スキルしか能がない私だけど……。


「……わかった。──案内してくれ!!」

「はい!!」

 私は長いドレスの裾をたくし上げて、クロードさんと騎士の後について走った。



 ──食堂を出て門の反対側の建物へと入り、辿り着いたのは白いベッドが一定の間隔でずらりと並んだ医務室。一区切りずつカーテンで仕切られるようになってはいるけれど、今は一つしかベッドが使われていないからか、開放されている。

 1番奥の、複数の騎士が囲むベッドへと駆け寄る私達。


「ジェイド!!」

 焦ったようなクロードさんの声に、騎士たちがこちらに視線を向け「殿下だ……!!」と彼に道を開けていく。

 騎士たちの間から前へと進み出ると、そこには胸元を包帯で覆った男性が息も絶え絶えに横たわっていた。包帯には血が滲み、それが出血の多さを物語っている。


 彼がジェイドさん……。

 何もしようがない。それほどまでに彼の傷は深かった。


「でん……か……」

 男性がクロードさんに気づくと、薄く目を開けて震える口を開いた。端正な顔には汗と血が混ざり合っていて、とても苦しそうに歪められている。

「ジェイド死ぬな!!」

「はは……っ殿下の焦った……顔っ……。久しぶりに……見ました……っぐぅっ……!!」

 掠れた声で冗談を返しながらも痛みに耐える姿に、思わず目を背けたくなる。


 でもだめだ。

 クロードさんのそばについていないと。

 きちんと、逃げずにいないと。

 私はその光景の痛々しさに歯を噛み締めながら、ことの成り行きを見守る。


 するとふとジェイドさんの緑色の綺麗な目が私を捉えた。

「その方……は? ……まさか……拗らせすぎて……っ、……ついに、攫いました……か……!!」

 クロードさんの想いってこの国共通認識なの!?

「違う!! 合法的に連れてきたんだ!! お前にもゆっくり紹介したい!! だから死ぬなジェイド!!」

 必死の形相でジェイドさんに声をかけるクロードさんに、彼は薄く笑ってから、私に向けて口を開いた。


「令嬢……っ、どうか……殿下を、ぐっ……!! 殿下を……頼みます……!!」

 そんな遺言のような言葉を、掠れた声で紡ぎ出す。

「殿下……お幸せ……に……」

 そこまで言って、彼の瞼は静かに閉じられた。

 途端に医師たちが慌ただしく動き出し、ベッドの周りが騒がしくなる。


「そんな……!!」

「ダグリス隊長!!」


 騎士たちの悲痛な声が響いて、クロードさんの腕が力なく下ろされた。



 

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