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第80話 新婚とはなんぞ②〜Sideクロード〜


「──と、言うわけで、1週間、お暇をもらってしまいました」

「うん、俺も今日神殿長に1週間休みをいただいたよ」


 夕食を食べながら1日にあったことを話し合う。

 貴族社会ではあまり食事中にたくさん話をすることはないのだけれど、食事は楽しく食べたいと言う2人の共通認識と、普段あまり時間が取れない俺たちには大切なコミュニケーションの時間ということで、これが日常になっている。


「クロードさんは1日に何件もお仕事に奔走してますし、たまにはゆっくりしなきゃですものね。クララさんたち、粋な計らいですね」

「う、うん。そうだね」


 ……多分違う。


 午後の仕事を一件終えた後、神殿長に呼び出された俺が神殿長室に入ると、そこで待ち受けていたのは神殿長とクラウス、それにジェイドの3人だった。

 俺が入るなり、クラウスは「1週間神殿と神殿食堂への出入りは禁止よ!!」と俺を指差しながら力一杯言い放った。


 なんでも、最近のリゼを見ていて、俺たちが新婚だということを思い出したらしく、新婚なのに休ませていないという罪悪感に襲われたのだとか。

 最近のリゼは、俺との時間を作るために閉店作業をとても急いで終わらせ、俺が迎えにきたらすぐに出てきてくれる。

 きっと、友好国晩餐会で、俺との時間をゆっくりとってほしいという話をしたからだろう。

 真面目なリゼらしいけど、無理はしてないか俺も心配していたところだった。


 そこで俺は3人から、新婚とはなんぞやを色々と教えられた。

 一日中部屋でイチャコラしているものだ、とか。

 2人で旅行に行って思い出を作るものだ、とか。

 2人の生活に慣れる時間でもあるのだ、とか。


 なんで独身の3人にこんなレクチャーを受けねばならんのだ、俺は。


 俺たちには時間が足りていないというのは前々から思っていた。

 新婚にもかかわらず忙しすぎてなかなかイチャイチャできないし、正直もっとリゼとイチャイチャしていたい。

 が、毎日忙しく頑張っているリゼを見ていると、彼女の疲れを癒すことを優先させたいと思ってしまうのだから、惚れた弱みというのは恐ろしい。

 加えて俺の紳士な部分が邪魔をして、なかなかぐいぐい前に進めないでいる。

 これでは紳士というよりただのヘタレだ。


「リゼも毎日聖女業に食堂にってよく頑張ってるから、たまには2人でゆっくりしよう」

 俺が紳士の皮をかぶってみれば、なんの疑いもせずに「そうですね。2人でまったり過ごしましょう」と笑顔で返してくるリゼ。

 俺の妻が可愛すぎる……!!


「そうだ。どうせなら泊まりでどこかに旅行でも行こうか」

「旅行、ですか?」

「うん。新婚旅行。俺たち、結婚式の翌日しかお互い休みをとってなかっただろう? だから新婚旅行なんてものも行ってなかったし、2人でどこか別の場所でのんびりするのなんてどうかな」


 婚約期も、未婚の男女2人きりで旅行だなんて貴族社会ではあまり褒められたことではないから旅行には行ったことがなかったし、何より新婚旅行は今しかできない特別なもの。

 絶対にリゼと行っておきたかったのだ。

 だから今回1週間も休みをもらうことができてラッキーだった。


「素敵です……!! 行きたいです、新婚旅行!!」

 目をキラキラさせながら両手を合わせて喜ぶリゼに思わず頬が緩む。

 もう俺、この笑顔が見れただけでお腹いっぱいなんだけど。


「ん。じゃぁ決まり。明日兄上に旅行のことを伝えて、城で宿の手続きもしてこよう。その間リゼは義姉上に会っておいで。義姉上もリゼに会いたいとずっと言っていたから」


 所用で城に顔を出す度に、現在絶賛2人目を妊娠中の義姉上にリゼを連れてこいと言われる。

 もともとリゼの大ファンだった義姉上。

 今や2人は本当の姉妹のようにとても仲が良く、2人で城に顔を出すたびにリゼは義姉上に連れて行かれてしまう。

 加えて姪っ子である一歳のメイも、リゼのことが大好きみたいで、よく抱っこをせがんでいる。

 リゼがメイを抱っこしている姿を見ると、まるで未来予想図のようで幸せな気持ちになるのだけれど、同時にリゼを取られたような気持ちになるのだから自分に呆れる。


「はい。私もレイラ様にお会いしたいです」

「よし、なら後で、明日城に顔を出すと先触れを出しておこう」

 そう言って俺は、リゼがお土産に持って帰ってくれたショコリエたくあんを一つ摘んだ。

 ん。美味しい。

 疲れが吹っ飛ぶようだ。


「ふふ。クロードさんとの旅行、楽しみです」

 ウキウキしながら微笑むリゼに胸が高鳴る。


 あー……もう。

 俺のリゼが可愛すぎてつらい。


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