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第70話 たくあん聖女、幸せになる

第一章本編完結になります!!

次から2話番外編を挟んで、いよいよ第二章に移ります!!

皆様最後まで応援いただけると嬉しいです♪


 ゴーン──ゴーン──……。


 荘厳な鐘の音が響き、扉が開かれる。

 孤児院の子どもたちの可愛らしい歌声が響き渡り、私は隣で男(女?)泣きを見せる義兄の腕にそっと手を添えて歩き出す。

 目の前では大好きな人が、少し緊張したような硬い表情で私を待っている。


 今日は待ちに待った私とクロードさんの結婚式。


 エスコート役は義兄であるクララさんことクラウスお義兄様。

 後ろで長いベールをお口に咥えて持っていてくれるのは愛犬のクロ。

 参列者は貴族関係の人から私の職場である神殿食堂で働いてくれているセレさんやその娘で私の友人のレジィ、アイネなど、馴染みのある人たちまで身分問わず幅広い。

 前の方には陛下や王妃様、王太子殿下と、もうすぐ一歳になる王女様を連れたレイラ様。

 そしてベアロボスの王太子ベアル様と、ベジタル王国のカロン様。


 ベアロボスはもちろん、ベジタル王国ともいい関係を結んでいるフルティア。

 ベジタル王国は貿易も盛んになり、私も定期的に【たくあん錬成】をしてベジタル王国に送っている。

 時々、母国だから、と言うことで交渉の場に一緒に行くのだけれど、その度にクロードさんとラズロフ様は言い合ってなかなか交渉が進まないのが難点ね。

 もう慣れたけれど。

 あまりに毎度毎度お互い突っかかるもんだから、最近では痴話喧嘩なんじゃないかとも思い始めた。


 そんなラズロフ様には、結婚すると言う旨だけ伝えたけれど、立場が立場なので招待はしていない。

 ただ、控室に綺麗なローゼリアの花束と、【幸せになれ】と一言添えられたメッセージカードが届いて思わず胸が熱くなったのは、クロードさんには内緒だ。


 クロードさんの目の前まできて歩みを止める。

 そして私は、クララさんの腕から、目の前に差し出されたクロードさんの手へと自分の手を移す。

 腕から私が離れる時に少しばかり寂しそうに私を見ていたクララさんに、思わず泣きそうになった。


 滞りなく永遠の愛を誓い、神殿いっぱいに拍手が響き渡り、参列客はこぞって持っていた花を一斉に宙に投げた。

 赤、白、黄色、オレンジ。

 色とりどりの花の雨が降る。

 次は夜まで外の広場の会場で飲んで歌って、どんちゃん騒ぎだ。


「リゼリア嬢、クロードをよろしく頼む」

「あぁまさかクロードの拗らせた初恋が実るだなんて……!! 執念って怖いわね。リゼちゃん、クロードが何かやらかしたら、遠慮なくやっちゃってね!!」

 そう言う陛下と王妃様が少しばかり涙ぐんでいる。

 どれだけ心配かけてたの、クロードさん。


「ちょっと、リゼに変なこと言うのやめてくれる?」

 婚約して一年。

 クロードさんの私の呼び方が変わった。

 少しくすぐったくて、でも嬉しい。

 私もそろそろさん付けは卒業するように言われたのだけれど、まだまだ慣れないでいる。


「リゼちゃんおめでとー!!」

「リゼちゃーん!! 幸せになー!!」

 神殿から出ると、神殿食堂の常連さんたちや街の皆が待ち受けて祝福してくれた。

 神殿食堂の目の前の広場には、いくつも設置されたテーブルの上にたくさんの美味しそうな料理がずらりと並んでいる。

 どれも時間がない中、朝からクララさんやセレさん、レジィやアイネや街の人たちがせっせと仕込んで作ってくれたものたちだ。


 ここからは貴族も王族も平民も関係ない。

 皆が集まって好きなように飲んで食べて騒ぐお祭りだ。

 私やクロードさんが大好きな人たち皆が集まって、たくさんの笑顔の花が咲く。

 私も自然と笑みが溢れる。


「はぁ……俺のリゼが可愛すぎて死にそう」

「えぇ!? だ、大丈夫ですか!? 疲れて目がおかしくなりました!? 今からでも病院に……」

「だめだよ」

 私の肩を抱いてクロードさんはそっと耳元で囁く。


「俺から今夜をお預けしないで?」


 妙に色っぽく告げられた言葉に、顔面へと熱が上昇していく。


 ……とりあえず飲もう。

 じゃんじゃん飲んで、今の発言は忘れよう。


「さ、さぁ!! 飲みますよクロードさん!!」

 苦し紛れに私が声をあげて、飲み物を取りに前に進もうとすると、クロードさんにガシッと手を掴まれた。

「クロード【さん】?」

 すっごい良い笑顔……!!

 でも怖い!!

「え、えっと……く、クロード?」

「ん。正解」

 満足げに笑って私の頬に口付けるクロードさんに、それを目撃した人々から悲鳴に近い声が上がる。


「さて、俺たちも飲もう。ほどほどに、ね?」

 見透かされてる……!!


「愛してるよ、リゼ。これからもよろしくね──俺のたくあん聖女」


 こうして私たちは大切な人たちの笑顔に囲まれながら、今までで1番幸せな日を過ごしたのだった──。


〜end〜


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