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第63話 SIDEクロード



「っ……」

 リゼさんが行ってしまった。

 この身に残る彼女の温もりが、まだかろうじてその存在を主張している。


「ちょ、殿下!! リゼが!!」

「私たちも行きましょう!!」

 アイネとジェイドが私に詰め寄る。

 この人数で王太子に殴り込みしようと言うのか?

 アイネはともかく、いつも冷静なジェイドにしては血の気の多いことだ。

 それだけリゼさんのことを慕っているのだろうけれど……。

 正直、俺も国同士のことなど考えずに殴り込みに行きたい。

 だが……。


「いや、それよりも幽閉されしカロン第二王子を救出に向かう!! ジェイド、騎士団と共に俺と来い!! アイネはここで皆と国民の援助を。まだ体力が十分でないものもいる。援助先の地方からベアル殿がこちらに帰ってきたら、俺は第二王子救出のため西の塔へ向かったと伝えてくれ。この恩は必ず返すと。道中気をつけるようにと」


 事前の調査の際に幽閉場所は特定している。

 手を貸してくれたベアル殿に挨拶ができないのは申し訳ないが、今は時間がない。


「……わかったよ。気をつけて」

「あぁ。行くぞ!! フルティア騎士団──!!」


「「おぉーーーーっ!!」」

 騎士団から声が上がり、俺たちは急ぎ西の塔へと向かった。





 ──西の塔の周りにはこれでもかと言うほどのベジタルの騎士が配置されていて、ここがいかに重要な人物を囲っているのかがわかる。

「誰だ、貴様ら……!!」

「カロン第二王子に会いにきた、フルティアの第二王子クロードだ。ここを通してもらおう」

「!! フルティアの!? こ、ここは何人も通さぬよう言いつけっております!! 通すことはできません!!」


 隣国の第二王子である俺に対して構えた剣もそのままに、騎士は首を縦には振らない。

 全く……早く終わらせてしまいたいんだが……。

 信じているとはいえ、やっぱり心配だ。

 早く行ってやりたい。

 あわよくば一発ラズロフにお見舞いしてやりたい。


「どうしてもとおっしゃるなら、剣を交える他ありません……!!」

「いいよ。そのつもりだ。何がなんでも通してもらう」

 俺が彼らに魔法攻撃のために右手を構えるのを合図に、戦いは始まった。


「ライトスネイク!!」

 俺から放たれた無数の光の紐が、蛇のようにうねりベジタル王国の騎士達目掛けて地を這う。

 そして獲物へと到達すると、その身体を以って縛り拘束する。


 リゼさんの故郷の騎士だ。

 彼女が頑張って、騎士団の環境を改善させてきたのは俺もよく知っている。

 だからなるべくなら怪我もなく済ませたい。

 俺の背後に回る敵はジェイドの大剣が手加減しつつ払ってくれている。

 もちろんうちの騎士団の皆にも死なせるなと伝えてあるから、彼らが剣を払い除け、(ひる)んだ隙に俺が光魔法で拘束していく。

 1人、また1人──。

 あぁでもだめだ。

 こちらは手加減しているし、人が少ない分時間がかかってしまう……!!

 くそ……!!

 俺が心の中で悪態をついたその時だった。


「クロード殿!!」

 俺の名を呼んで現れたのは、屈強な獣人部隊。

 ベアル殿だ──!!


「ベアル殿……!! どうしてここへ!? 伝言は聞かなかったのか!?」

「聞きましたよ。ですが、最後まで見届けるために私たちはここに来たんです。最後までお付き合いします」

「ベアル殿……ありがとう……!!」


 これがあのおどおどして、言いたいことも言えないまま俯いていたベアル殿か。

 1ヶ月前とは大違いじゃないか。

 獣人部隊に次々と指示を出していく姿は、まさに次の国王に相応しい姿だ。

 これもリゼさんが変えたものの一つ。

 彼女はこの短い期間でたくさんの人々の人生を、良い方向へと変えてみせた。

 それが今、リゼさんを助けるために動いている。

 やっぱり彼女はすごい。

 俺も、俺の為すべきことをしよう。

 彼女のために。




「──よし、これで全員かな」

 獣人部隊の加勢により一気に勢力を増した私たちは、あっという間にベジタルの騎士たちを傷つけることなく拘束することができた。

「中にどれだけいるかわかりませんが、ね」

 ジェイドが再び大剣を構えて塔を睨みあげる。

「そうだな。よし、塔へ入るぞ!! 皆続け!!」


 俺たちはなだれ込むように塔の中へと進み込んだ──。


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