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第56話 虐げられたたくあんの力


「クララさん、私────ベジタル王国に行ってきます──」

「リゼさん!?」「本気!?」

 私が発した言葉に、クロードさんとクララさんが声をあげる。

 ジェイドさんとアイネも驚きに目を見開き、レジィは口をぽかんと開けてうさぎのぬいぐるみのムーンぎゅっとを抱きしめる。


「私が行けば、万事解決、ですよね? なら私が行かなきゃ」

「だめだ!! ラズロフが何をするか──!!」

「それでも……!! ……私は、私のためにこの国の人たちが傷つくのは嫌です。ベジタル王国の国民だってそう。大切な、私が守るはずだった人たちです」


 王妃になって、国民が住み良い国を作る。

 辛い王妃教育の中で、ずっと心に秘めてきた私の目標。

 私が改革をしようとするときも、話を聞きにいけば嫌な顔一つせずに話を聞かせてくれた人たち。

 作業の工程を丁寧に教えてくれたこともあった。

 少しでも関わった人たちが苦しんでるのに、見過ごすことはできない。


「それに……」

「それに?」


「見返してやりたいんです。私は、クロードさんやフルティアの皆と、毎日幸せだから。お前の捨てた女はこんなにも毎日健やかに楽しく過ごしてるんだぞ、って。私を一心に愛してくれる人のおかげで、今とても幸せなんだぞ、って……」


 言いながらクロードさんに視線を移す。

 私の想い、少しは通じたかしら?


「……はぁ……。ずるいな。それじゃぁ反対しづらいじゃないか。……わかった。俺も一緒に行こう。元婚約者に、俺っていう存在をしっかりと見せつけてやろう」

 冗談めかして笑うクロードさんににっこりと微笑んで応える。


「はぁ……仕方ないわね。わかったわ。止めない。でも、準備はしっかりしていくのよ」

 そう言って私の頭をガシガシと乱雑に撫でるクララさんは、今はクララさんの姿なのにしっかりと【兄】の顔をしていた。


「はい!! とりあえず、たくあん料理を作って持っていきたいと思います。すぐに国民に配れるものを大量に。あと、向こうで炊き出しができるように、簡易キッチンと食材も!!」

 となれば配るのにも作るのにも人手がいる。

 私とクロードさんだけじゃ無理だ。


「なら、我が騎士団がお運びしましょう」

 申し出てくれたのは、それまでじっと話を聞いていたジェイドさん。

「簡易調理場だったら、騎士団のものがありますし騎士団の荷馬車を使えばベジタル王国まですぐでしょう」

 確かに騎士団が協力してくれるなら食材も痛むことなくすぐに持っていけそうだわ。助かる。


「ありがとうございます!! ジェイドさん!!」

「いいえ。あなたには、助けていただいたご恩がありますからね」

 ふんわりと笑って私を見るジェイドさんの目がとても優しくて、私は思わずその綺麗な瞳に見入ってしまう。

 大人の色気……!!


「……リゼさん。ジェイドに見惚れないでね」

 拗ねたように言うクロードさんに「す、すみません、つい」と苦笑いを返す。


「そう言うことなら、あたしもすぐ周辺の記者仲間に声かけてみるよ!! 人手は多い方がいいだろう?」

「ありがとうアイネ! よろしくお願いします!!」

「任せといて!!」

 ドンッと胸を叩いてニカッと笑うアイネに勇気づけられる。


「よぉ〜し!! 今日は午後から一般開店は休みにして、たくあん料理大量に作るわよ!!」

「ちょうどどっかの誰かがたくあん大量に出したばっかりだしね。レジィも手伝う!!」


「皆……ありがとうございます……!!」


 今こそたくさん錬成したたくあんが役に立つ時──!!


 虐げられたたくあんの力、見せつけてやるんだから!!



 

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