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第52話 ベアルの決意


「クラウス卿はやはりご結婚はなさらないの? 私の姪なんていかがかしら? とても愛らしく器量のいい子ですのよ?」


「はっはっは。私にはもったいないですよ。それに私は仕事と結婚しているので、人間と結婚など、考えていないのですよ。新しくできた可愛い妹とも、まだしばらく一緒にいたいですしね。ねぇリゼ」


「ハイソウデスネ、オニイサマ」


「まぁ!! クラウス卿ったら。仲がよろしいのですわね!! ホホホホホ!!」


 そんな寒々しいやりとりをしつつ、ぴっしりと立ち上がる鳥肌を両手でさする。


 クララさんのクラウス様化はやっぱり慣れないし、そう簡単に慣れるものではないと思う。

 だってほら、このクララさんを前から知っているにも関わらず、見てはいけないものを見ているかのように、あのいつも爽やかなクロードさんが笑顔のまま固まってるし。


 楽しく会話が弾み、食事も進んだところで、最後のデザートがワゴンに乗せられ、クロッシュを被せた状態で運ばれてきた。

 給仕によってクロッシュが開かれると、中から現れたのは手のひらサイズのケーキ。

 黄色いドーム状の土台に、上にショコリエでコーティングしてあり、そのさらに上には小さく刻まれた乾燥たくあんの粒が振りかけられている。


「まぁ素敵」

「なんて可愛らしいデザートなの」

 見た目の印象は良いみたいね、よしっ。


「デザートはリゼリア嬢が作ったと聞いているが……」

 国王陛下の視線が私に向かい、それに続くように他の皆様の目も集中すると、私はデザートの説明をすべく立ち上がった。


「こちら、スイートポテトのケーキの上部をショコリエでコーティングをし、その上から匂いを消すため小さく刻んで乾燥させた聖なるたくあんを振りかけました。ベアル様のものはショコリエの代わりにシュガリエアイシングでコーティングしております。下のドームケーキは実り豊かなフルティアを。上の刻みたくあんは勇ましいベアロボスの国旗に描かれた星をイメージして作らせていただきました。両国の友好を願って……。さぁ、皆様、お楽しみくださいませ」


 そう言ってにっこり微笑めば、皆それぞれ様々な角度から眺めた後にケーキをゆっくりと口に運んだ。


「んっ!!」

「なんだこれは……うまい!!」

「とっても滑らかなケーキの食感と、上のサクサクしながらも瑞々しいたくあんがまた良い!!」


 良い感じみたいね。

 レイラ様のはおにぎりと同じように無理なく食べられるよう一口サイズにしたし……うん、よく食べてらっしゃるわ、よかった。


「……とてもおいしい……。……リゼリア嬢、あなたは本当に素晴らしい方だ」

 ベアル様がふわりと笑った。


「考え、分析し、僕でも食べられる料理を作ってくれた。それだけじゃない。まだ匂いの耐性もない僕に気付いて、匂いの配慮の行き届いた場作り。あなたの配慮によるものですよね? 本当に、ありがとうございます。そしてその配慮にご協力いただいたこの場の皆さん、城で働く全ての皆さんに感謝を──。本当にここに来ることができてよかった。……僕は──いえ、私は、これから必ず心強き王になります。他者を思いやることのできる、暖かい、皆さんのような心を持つ王に。ベアロボスはフルティアとの友好国であることを誇り、これからも変わることのない友好を誓います。皆さん、これからもよろしくお願いします!!」 


 そう言って深く頭を下げ、次に顔を上げたときのベアル様の顔は、どこか決意のこもった、凛とした王の顔をしていた。


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