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第40話 SIDEクロード


 ベアル殿のはっきりとした拒絶の言葉に表情を無くしたリゼさん。

 あんなリゼさん、初めて見た。

 それもそうか。

 自信ありげに出した料理に対して、あんな風に言われて拒絶されては──。


 結局何もフォローできないまま、彼女は部屋へと帰って行ってしまった。

 すぐに追いかけようと席を立った俺を「待てクロード」と父上が止める。


「なぜ止めるんです!!」

 今こうしている間にもリゼさんは泣いているかもしれないというのに!!

 こんなことなら……、彼女をまた傷つけてしまうなら、こんな依頼しなければよかった。後悔の波が俺を襲う。


「クロードよ。彼女は、もう嫌だと言ったか? お前のことを、一度でも見て、(すが)ろうとしたか?」


 ……一度も見なかった。

 まるで俺の言葉など聞いていないかのようだった。


「いいえ」

 短く答える俺に、父上は少しだけ表情を和らげた。

「なら大丈夫だ。リゼリア嬢を信じなさい。彼女は、お前が思っているほど弱くはない」


 彼女が弱いだなんて、思ったことはない。

 むしろ彼女は、可哀想なほどに強いと思う。あんなことがあってもめげることなく懸命に日々を過ごしてきたんだ。

 でもそれは決して、心に傷を負っていないというわけではない。

 しっかりと傷が癒えるまで、俺がちゃんと守ってあげないと──。

 そう思っていたのに。


「見守ることも一つの守り方だ。ほれ、まずは朝食を食べなさい。リゼリア嬢は、我々の皿にもショコリエたくあんを添えてくれている。彼女の好意を受け取って、様子を見にいくならばその後でよかろう」


 そう言って父上は、ショコリエたくあんをパクりと口の中へと運んだ。刹那、大きく見開いたビー玉のような瞳に、キラキラと光が宿る。


「んっ!! うまい!!」

 嬉しそうな、子どものような弾んだ声。

 食事でこんなに楽しそうにしている父上なんて、初めてだ。

 さすが俺のリゼさんだ。


 俺は「そりゃリゼさんのたくあんですから」と自慢げに言うと、席に座り直してから朝食を食べ始めた。




 ──そして今。

 

 俺はリゼさんの部屋の前でウロウロしている。我ながら鬱陶しいやつだと思うし、これじゃ不審者じゃないかと思うけれど、気になるんだから仕方がないだろう。

 いつまでもこうして待っていても仕方がないので、そっとしておいて部屋へ戻ろうとした、その時だった。


 バンッ──!!


 勢いよく扉が開かれて、ベッドにでも転がっていたのか前髪に可愛い癖のついたリゼさんが顔を出した。

 天使か……!!


「あら、クロードさん?」

 彼女のアメジスト色の瞳が俺を認める。

 俺と視線が交わるや否や、いきなりガシッと俺の両手をその華奢な両手で掴んだリゼさん。


 な……なにこれ。

 っ、もしかして、愛の告──!!


「クロードさん!! 私、イケるかもしれません!!」



 ────は?



 俺の天使は、俺の想像以上に強いらしい。

 

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