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第39話 ヒントは夢の中に


「ワンワン!! ワンッ!! ワンワンワンワンッ!!」


 元気の良い、深い低音が遠くで聞こえる。

 あぁ、懐かしい。

 この声、私が公爵家で買っていた、犬のクロだわ。


 クロードさんに良く似た黒い大型犬で、人懐こくて元気な私の大切な家族だ。


 私が小さい頃に馬車で街を通っていると、道の真ん中で倒れていたのだ。それを私が拾って、父と母に無理を言って飼うことになった。

 あの頃から私、何かしら生き物を拾っていたのね。


「ハッハッハッ」

 と荒い息を吐きながら、黒い塊が私のところまで走ってくる。

 サラサラの黒い毛に顔を埋めると、気持ちよさそうにクロは目を細めた。

 ふふ。この表情、本当にクロードさんそっくりだわ。


 久しぶりの感触を頬擦りしながら堪能する。

 あぁ、癒される。


 王妃教育が辛くて逃げ出したくなった時、よくこうしてクロの背に顔を埋めて慰めてもらってた。こうしていると、不思議と心が落ち着いてくるから。

 誰にも甘えることができなかったあの時、クロは私にとって唯一心を許した存在だった。


 でも忘れてはいけない。

 これはただの夢。

 私の頭は意外と冷静で、そこのところはよくわかっているようだ。

 いつまでも甘えて、縋っていてはいけないのよね。


 ……本物のクロは、元気かしら──。

 あの人たちは、クロを大切にしてくれているかしら?

 追い出されたりしていないかしら?

 ご飯も……毎食ちゃんと食べてるかしら?


 そういえば、あの子のご飯ってどんなだったかしら?

 えーっと……、あぁ確か、犬用のカリカリのフードとか、たまに公爵家の料理人がおやつを手作りしてくれていたわね。


 一度、私が調理場からこっそりと取ってきた食べ物をあげたら、珍しく私に向かって吠えて警戒したのよね。

 それを見た料理人が言ってたっけ。


『犬は嗅覚が優れているから、自分にとって悪いものや匂いの強いものを察知して拒絶するんです』──って。


 あの時渡したのは確か──。

 オニオーリのサラダ。

 そしてショコリエの小さな欠片。


 ……!!

 もしかして……犬科の狼獣人であるベアル様も──?


 そこまで考えて、一気に浮上していく私の思考。


 ワンワン!! ワン!!


 遠くなっていくクロの声と姿。


 クロ、私、頑張ってみせるからね。


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