第23話 ずぶ濡れの女性拾いました
今日も食堂は大繁盛!!
先日試食会で出したたくあんピザは、四角く一口大に切って、たくあんの量も大盛りではなく下品にならない程度に適度に盛り付け、上に差し色として緑のパセイラを少量まぶした。
そんな新作のたくあんピザは、思った通り夜の酒呑みたちに大好評!!
ここ数日は噂が噂を読んで、この王都ドリアネス以外からも酒呑みが集まるようになった。
そのおかげでクララさんは「がっぽり稼ぐわよぉ〜〜!!」と金儲けに燃えている。
ちなみにここの収益は私たちのお給料の他には、孤児院の維持費や子どもたちの教育や生活のために使われる。
意外と子供好きなクララさんは、自分の給料を使って時々子どもたちにお菓子を買って、休憩時間などに配っているらしい。
人は見かけによらないとはこのことだ。
「さぁて!! 今日はもう上がって良いわよ!!」
あらかた片付けを済ませたクララさんが言う。
夜の戸締りやら会計締めの係はクララさんが、朝の鍵開けや調理準備は私が、と、役割を分担している。前は全てをクララさん一人でしたというのだから驚きだ。
「ありがとうございます。じゃぁあとお願いしますね。お疲れ様でした」
「はぁい。お疲れ様ぁ。しっかりお肌のケアして寝るのよぉ〜」
お肌のケアには人一倍うるさいクララさん。
少し肌が荒れているとすぐに気づき、持ち歩いている携帯用の化粧水を塗りたくられる。
ここにきてすぐ、何も持っていなかった私に化粧品を一式揃えてくれたのも彼……彼女だ。
今まで侍女に任せていたがゆえにやり方を全く知らなかった私に、ケア術を叩き込んでくれた。
本当にクララさんには頭が上がらない。
私はクララさんに挨拶をしてから、食堂を後にした。
外はさらさらと糸雨が降り注ぎ、少しだけ肌寒い。
あいにく傘を持っていない私は、すぐ隣の神殿入り口まで走った。
「少し濡れちゃったわね、早く乾かさなきゃ」
神殿入り口ポーチまでたどり着いて、扉の方へと一歩踏み出すと──。
ぐにっ────。
何か踏んだ!?
「何!?」
靴底を通して感じる弾力のある感触に、私はタタラを踏みながらも先ほど自身が踏んづけたものを見る。
「へ…………?────人?」
びしょ濡れの黒い短い髪に、黒のシャツとパンツスタイルの、おそらく女性が私の足元でうつ伏せになって倒れている。
元公爵令嬢リゼ。
追放されてはや3ヶ月。
またもや人を拾ってしまいました。