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第22話 第一回たくあん料理試食会



「みなさん、準備はいいですね?」

「いつでもいいよ、リゼさん」

「私も覚悟はできたわ」

「リゼ殿、大丈夫。自信を持って」

「私は今日ここにきたことを今すごく後悔してるわよ。ね、ムーン」


 ここは神殿横の食堂。

 今はランチタイムが終わり、仕込みも終わりあとはディナーの時間を待つだけというフリーな時間。


 そんな時間にたまたま集まったクロードさん、ジェイドさん、レジィを食堂の椅子へと誘い、クララさんもまた椅子へと着席したのを確認して、私は彼らの前にクロッシュを被せた皿を3皿と取り分け用の小皿を用意した。


「それでは始めます……!! 第一回!! たくあん料理試食会!!」

「待ってましたリゼさん!!」

 クロードさんの声援が飛ぶ。


 そう、彼らを椅子に座らせたのは全て、この3皿の料理を試食してもらい、評価を聞くため。

 新しいたくあん料理のレパートリーを増やすためなのだ!!


「ではまず一品目です」

 パカッと1番右側の皿のクロッシュをオープンさせる。


 中から白い湯気とともに出てきたのは、たくあんピザ。

 真っ白い生地の上にチーズと刻んだたくあんを乗せ、窯で焼いたものだ。

 黄色い。全体的に──黄色い。

 下の生地が隠れるほどのたくあんをこんもりと乗せてしまったから。


 4人の前に一皿ずつピザを切り分けて配膳していく。

 引き攣った顔でそれを眺める彼らに苦笑いを浮かべつつ「よろしくお願いします」と食べるよう促す。


「……」

「……」

「……」

「……」


 ピザを見つめたまま誰も手をつけようとしない。

 あぁ〜……やっぱり前衛的すぎたかな?

 無理もないか。

 私がこれ出されても戸惑うもの。


「……俺が先に食べよう」

 勇者クロードさんが先陣を切って手を挙げた。

「いや殿下の身を危険に晒すなど……!! ここは私が!!」

 そんなクロードさんをジェイドさんがすかさず止める。


 いやいや失礼じゃない!?

 私の料理をなんだと思ってるのよっ!?

 まぁ今回はちょっとばかしビジュアル系すぎたかなぁとは思わないこともないけれど……。


「じゃぁ、二人同時に」

 クロードさんが半分折れて、二人は視線を合わせて深く頷き合うと、たくあんピザを一口口の中へと噛み入れた。


 カリッ……。

 ポリポリポリ──。

 おおよそピザの咀嚼音(そしゃくおん)とはかけ離れたそれに、一気に不安が襲いくる。

 私は彼らのお口が落ち着くのを息を呑んで待った。


 そして。


「うん!! これおいしいよ、リゼさん」

「えぇ。とても美味しい。さすがリゼ殿です」


 【美味しい】いただきましたぁぁぁ!!

 よかったぁ〜!!

 安堵の息をついて私は二人に「ありがとうございます!!」と頭を下げた。

 先陣を切った二人の反応に安心したクララさんとレジィも、恐る恐るではあるけれどゆっくりとたくあんピザを口に入れる。


 カリッボリボリボリッ──。


「んっ!! これいいじゃないっ!! チーズとの相性も良いわね!! これはディナータイムの酒飲み連中の間で人気が出そうだわ!!」


 クララさんの商売魂に火がついた。

 でも確かにお酒のお供にいいかもしれない。そうなると少しずつつまめるように一口サイズに四角く切ってしまうのも有りなのかも。

 頭の中でどうすれば食べやすく食べられるかを思案していく。

 私もクララさんの商売魂に相当影響を受けているみたい。


「でもこれ、もう少したくあん減らしたほうがいいと思う。見た目が前衛的すぎるのよ。食べて美味しいの前に、食べてみたくなるような見た目を考えるのも大事だと思うわ」


 うっ……確かに……!!

 見た目を忌諱きいして、注文してもらえなかったら意味ないものね。

 的確な指摘だわ。

 やっぱりこの女児……できる……!!


「そうですね。見た目に関してはもう少し改善の余地あり、ですね」

 同意しながら私はメモ帳に改善点のメモを取っていく。

 このメモ帳、教えてもらったことや思いついたレシピ、その改善点をメモしていっているのだけれど、もうすぐ最後のページに到達する。


 それだけたくさんの経験をさせてもらっているっていうことなのよね。


 あのまま王太子妃になって王妃になっていたら決してできなかった経験。

 ふふっ。

 あのクソ王太子……ゴホンッ、バカ王太子に感謝しなきゃ。


「じゃぁこれは見た目の改善、っていうことで……。さぁ、張り切って次、いってみましょっか!!」


 気を取り直して次のクロッシュに手を伸ばす。


 再び4人が引き攣った笑顔を見せるまで、あと3秒──。


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