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2、きっとそのインクからは潮の香りがしてる

【タイトル】

 海辺の街のリバイアサン ~わたせなかったプロポーズリングの行方~


【Nコード】

 N0485HC


【種別】

 完結済(全40部分)


【ジャンル】

 純文学〔文芸〕


【作者】

 ゆき


【掲載日】

 2021年 09月01日 10時00分

【最終投稿日】

 2021年 10月19日 10時00分


【文字数】

 104,232文字


◇◆◇◆◇◆


恋人アンリを事故で失った主人公タイラー。ある日仕事で彼は、竜の伝説が残る海の街を訪れる。そこはアンリが亡くなった場所でもあった。渡せないままになっていプロポーズリングを胸に秘め、タイラーはアンリの足跡を辿ることにした。

 滞在先で彼は、美しい青い髪を持つソニアと出会う。10歳も年下の彼女に、タイラーの心は惹かれていく。しかしソニアはVIPクライアントの関係者だった。ビジネスに支障をきたしてはいけないという理性と、異性への反応が初々しい彼女を意のままにしたい欲望、そして亡きアンリに対する後悔と慕情。波に揺蕩うようにタイラーは己との対話を重ねていく。


 ほろ苦い大人の恋の駆け引きに、おとぎ話の神秘さが織り込まれた不思議な味わいの作品です。


◇◇◇


 ウェブ小説なので、可能性は極めて低いのは明らかだが、読みながら「きっとそうだ」と確信してしまう自分がいた。


 この小説は手触りの良い原稿用紙に、ペン先の硬い万年筆で書かれたものだ。海辺のカフェテラスで優しい潮風に撫でられながら、作者は物語を綴ったに違いない。滑らかな紙が尖った筆圧を程よく跳ね返す。クリーム色の床に、黒いインクがステップの跡を残していく。スパンコールの水滴を纏ったグラスの中で、氷がカランと彼女を呼ぶ。でも彼女は執筆に夢中で聴こえない。白いテーブルの端で忘れられた琥珀色のアイスティーは、彼女とインクのダンスを傍で見守っている。

 やがて「フゥ~」と大袈裟な声と共に、彼女は呼吸方法を通常運転に切り替える。原稿用紙の束を両手で持ち、ミルフィーユの余分な粉砂糖を振り落とすかのようにトントンと整える。厚みのある茶色い角封筒に原稿を入れ、傍らの椅子でクタッと眠っていた布トートバッグに放り込む。バッグは急に舞い込んだ役目に気付き、背筋を縦に伸ばした。


 何を書いているんだと思われるかもしれないが、仕方あるまい。どうしてもこんな感じに書きたくなってしまったのだから。作者の美学が垣間見える文章は、一見静かなようで奥の方に熱を秘めている。蒸し暑い夏の夜には、体温と匂いのある物語が相応しい。時には艶めく読書を楽しもうではないか。

お読みくださりありがとうございます。

次回更新頑張ります。

どこまで続けられるかは、母なる海だけが知っている。

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