『99』
『99』
娘が死ななくて良かったと思う。
もし死んでいたら大事だったろう。
国王も悲しむし、国としても損失は大きい。
次期王妃になるのだろうし、しかも国王にも伝えるというので、俺の名前が伝わるとなった。
俺は知らずに古城に来たので、全くの偶然出会った。
そもそもギルドに救出の応援が入ったのがきっかけだった。
ギルドに居なかったら、緊急依頼を受けることはなかった。
「娘だったら、なおさら助かって良かった。俺達は王都のギルドの緊急依頼で来た。だからギルドもナミュール王女が古城にいるとは知らなかったと思う。俺達も聞いてない」
「そうでしたか、助けてくださり感謝します。王都に帰るとして、私も一緒に帰ります。お一緒に帰りましょう」
「そうですね。俺達もちょうど帰るところだった」
一緒に王都に帰るとなった。
「それがいいでしょうね。何と言っても娘が古城で魔物に閉じ込められたと知ったら、国王も心配でしょう。でもね一緒にというのは、ちょっと不安ですが」
アスカが不安そうに言う。
なぜ不安なのか。
別にカイザール国の国王とは関係ないだろうに。
しかしアスカはナミュール王女に対して何か言いたそうな感じだな。
「なぜアスカが不安になるんだ。カイザール国の国王なら不安になるけど、アスカは何も不安になる必要はない」
「そうよ、どうして不安になるのよ」
「だって、ロメーロ様とご一緒に王都に帰ると言い出すから。ロメーロ様を奪うのではないかと思ったの」
なんだ、ナミュール王女が一緒と言うのに反応したようだった。
アスカらしいと言えばアスカらしかった。
どうでもいい理由だった。
もっと深刻な理由があるかと考えてしまった。
「奪うですって。私はそんなつもりはないですけど」
「あああ、気にしなくていいですから。アスカは俺が好きなんだ。だからナミュール王女が俺を奪うと思っただけ。気にしなくていい。どうでもいい不安だから」
俺が説明した。
ナミュール王女はよく理解できなかったらしい。
困惑していた。
そりゃ困惑するだろう。
いきなり王女に対してライバル心を出すなんて普通はないからな。
アスカくらいだろう。
「私にとっては、どうでもよくないからねロメーロ様」
「あああ、どうでもいい」
さすがに、あきれるよな。
「ちなみにアスカはエルフ族ですよね」
「私はエルフ族で、あなたと同じ王女です。アスカ皇女ですから、よろしく」
「えええ、エルフ国アスカ皇女でしたか。お名前は聞いてました。よろしくです」




