『04 食事』
『04 食事』
「効果ないか」
まるで効果はなかった。
アスカはアンデッドのままだ。
失敗だった。
「失敗だった」
「どうして?」
「魔法を無効にしたけど魔法ではないのだろう」
魔法を無効にしたのであって、原因が他にある。
「私の魔法もやってみます。状態異常を戻すヒールジェネ魔法!」
「うううううううううう」
「私の魔法も効きません。アスカごめん」
「リアンでも無理か」
大神官であり聖女であるリアンには状態異常回復や体力回復魔法が使えるけども、残念ながらアスカは戻らない。
「見て! 店の外でもアンデッドがいますよ!」
「あわああああ、街中にいます。店内だけじゃない、広がっているみたい。原因がわかりません」
「どうなってんだよ。料理じゃないのか?」
店内の料理かと思いきや店主もアンデッド化してしまい、さらに街中にアンデッドが増えていた。
店内に入る前は何も異常はなかった。
俺達が店内に入り、アスカだけ食べた直後に異変が起きた。
わずかの時間で異変が起きたのは間違いない。
それが何かわからないし、アンデッドになった後にどうなるかも重要だ。
人を襲うのか、殺さないといけないのか。
「助けて~~~~」
「アンデッドになっていく~~~」
大混乱になったな。
アンデッドになっていない人が騒ぎだしている。
「みんな騒ぎ出しました」
「私もアンデッドになってしまうのかしら、いやあああ~~助けてロメーロ」
「ナミュール王女と一緒に俺もアンデッドになるかもな」
「いやああああ」
ナミュール王女はアンデッドになるのを嫌がるも俺も不安だ。
まだなっていないだけで、直ぐになるかもしれない。
この様子だと王都の一部ではなくて、多くの地域でもアンデッドが起きていると考える。
そうなると自然現象ではなくて魔族が関わっているな。
魔族のスキルか魔法が原因だな。
その魔族を探すか。
「あの~~あなたはロメーロですよね?」
「ロメーロですが」
「私の家の人もアンデッドになったの。でも私だけなっていないのは、今日手にした香辛料だと思う。私だけその香辛料を使った料理を食べていないので」
「香辛料ですか。それはいつも使っている香辛料とは違うのかい?」
「違いますね。今日になって商人が王都に来ました。その商人は珍しい香辛料だと言って、街の人に配ったのです。どうして配ったかはわかりませんけど、今となったらその香辛料が原因と思ってます。これが香辛料です」
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魔族ジャミロ編
魔族ジャミロはこの光景をそっと見ていた。
「クククク、たとえロメーロでも俺様のデススパイスには勝てまい。ロメーロがアンデッドになればもう勝ちは決まった」
王都の商人に変装してデススパイスを無料で配ったのはジャミロ。
無料ということで人々は喜んで手に取ると、家で香辛料として使った。
アスカの店主もその香辛料をもらい、料理に使っていたのだった。
その結果、食べてしまったアスカはアンデッドになった。
ジャミロは戦わずしてデススパイスだけでロメーロを倒せると疑わない。
これがジャミロの戦い方であり、魔族国においても誰も接しなかった理由である。
ジャミロに下手に手を出すとアンデッドにされるのを魔族は知っていて、逆らわないでいた。
状況はジャミロの想像通りに進んでいた。




