『聖なる泉』
『聖なる泉』
「水はとても綺麗です。この水を入れて持って帰ればいい。ロメーロ様が持っているのよね入れ物は」
「持っているよ」
フーシフォンから預かった入れ物を神の袋から出した。
入れ物は瓶で、俺の袋は何本でも入るので便利。
フーシフォンに言って多めに瓶はもらってきたけど、どんだけ取っても足りないくらい泉の水は豊富だった。
単に瓶に水を入れれば終わりだ。
アスカとリアンにも瓶を渡す。
「瓶に入れたらいいのね」
「入れます」
「待て」
「誰だ?」
瓶に水を入れようとした時に声があった。
水を入れるなって意味か?
誰が言ったかわからないが、声は泉からだった。
「泉の水面から顔が出てます!!」
「魔族ですよ。魔族が顔を出して言ってきた」
「水を入れるのは待て。勝手に持ち帰らせないぞ。下がれ人族とエルフ」
魔族が言って来た。
急に水面から出てきて驚いたが、魔族は水を取るのを気にしているようだ。
なぜ水を入れるのがダメなのか。
この水を取るのに許可がいるわけないよな。
「なぜ取ったらいけないのかな。私達はこの水が欲しいだけ」
「私の許可なしのは水は取らせないわ。この水は聖なる水と人族は呼んでいるが、不思議な効果があるからだ。私はこの泉に住んでいるニンフ。なぜ水が欲しい、理由は?」
魔族はニンフと自分で言った。
姿は女性の美しい体をしている。
理由を聞いてくるとは思ってなかったので、俺は答えに詰まった。
目的は簡単であって、鍛冶師から頼まれたからと答えればいい。
でも相手は魔王とも繋がっているだろう魔族。
そんな答えでは、どうぞ水を差し上げますとはいかないだろうな。
俺は魔王の敵だし、敵を強くするのはあり得ないと思う。
何て答えたらいいのか悩む。
正直に答えるか、嘘をつくかだ。
アスカとリアンは黙っているのは、俺と同じことを考えているからだな。
ここは俺が代表して答える。
「水が欲しい理由は水が聖なる水だとして、持ち帰り鍛冶師に渡す。鍛冶師はアイテムや武器の作成に使える」
「武器なら鉱石を錬金して作れる。別に聖なる水が無くても作れるだろう」
「鍛冶師の話では聖なる水は鍛冶師にとっては貴重な水らしい。この水を鍛冶するときに使うと、レアなアイテムや武器が錬成できる。それで欲しい」
俺は相手が魔族だろうと知っていて、あえて魔族の都合の悪い話をした。




