『45話 王都に帰る』
『45話 王都に帰る』
俺はエルフ国皇女のアスカとダンジョンを出る。
アスカは魔法を解かれて嬉しそうであり、俺も来たかいはあるというもの。
アスカ皇女の今後のことを考えるのが大事だろう。
エルフ国の国王も、さぞかし心配しているはずだからだ。
娘が行方不明になっているのを探さない親はいないだろうし、一刻も早く無事を知らせたい。
アスカも早く国に帰りたいだろうから、俺のスキルなら一瞬だ。
「アスカ皇女、もうグールマスターは倒したのだから、国に帰るのがいいだろ?」
「ええと、私は、帰りません。ロメーロ様と一緒にいる。それと皇女てのは要りません、今後はアスカとお呼びくださいませ」
「はぁ?」
俺は思わず言ってしまう程に、アスカ皇女の発言が意外だった。
アスカと呼べと。
呼ぶのは構わないが。
これからはアスカでいいか。
皇女を呼び捨てで呼ぶのは、あまりいいことではないと思うも、アスカ本人が呼べというので、俺も呼ぶしかない。
名前の件はアスカということでいいとして、問題は他にあって、帰りませんという言葉だった。
俺の耳には確かに、帰りませんと聞こえたが、どう考えても聞き間違いだろうと思った。
エルフ国から連れ去られたのだから、帰りたいと思うのが普通だろう。
「ええっと、私はエルフ国王に会いません。ロメーロの行くところに……行きます!」
「いや、それはマズいだろ。心配しているし、エルフ国の第一皇女なわけで、俺が拉致したとなるだろう」
やっぱり聞き間違いではなかった。
アスカは俺と行動したいというのであった。
どうして俺といたいのかは不明だが、本気で言っている風に聞こえる。
「ああ、そうか、ロメーロ様に連れ去られるなら、むしろ歓迎ですわ!」
「何を言っているのだ。俺は王都に帰るつもりだが、来るか?」
「はい、行きます!」
俺はアスカを連れ去るつもりはないのだが、なぜかアスカの方が俺について来るのである。
困った者だなと考えていても始まらないので、アスカを王都に連れて行くとした。
王都からも『器用富豪』スキルの瞬間移動を使い来たので、帰りも瞬間移動する。
瞬間移動スキルは俺一人でなくても可能となり、アスカも一緒になる。
アスカは俺の器用富豪スキルを何度も見ているから、戸惑うことはないと考えていい。
グールマスターとの戦いを見ているから瞬間移動くらいなら、たぶん大丈夫だろう。
まあ、驚いてもこれから何度も器用富豪スキルは見ることになるから、慣れてもらう。
俺と一緒に行動するからには、人を超える力を見ることになる、その覚悟が必要だ。
覚悟がないなら、俺との行動はそもそも無理となるのは、わかってもらおう。
「アスカ、これからカイザール国の王都に移動する」
「アスカも移動します。馬車もないですから、徒歩ですよね。構いませんアスカは、徒歩でもロメーロ様と歩きます!」
「徒歩ではなく、瞬間移動だからな」
「えっ、瞬間、移動?」
「そうだ。心配しなくていい。そのままにしてろ」
「はい?」
「スキル、瞬間移動」
早歩き『器用貧乏』 Fランク
↓
瞬間移動『器用富豪』 SSSランク
アスカは、やや困っている感はあったものの、そのまま器用富豪スキルを使用し、一瞬で王都にまで移動した。
移動て言っても、実際には俺もアスカも動きは一切なく、場所だけ移動となる。
原理はどうなっているかは俺には説明できないので、詳しく聞かれても困る。
アスカに説明できる自信はない。
多くの器用富豪スキルは、化け物じみているので、説明するのはほとんど不可能で、俺はこの偉大なる力を説明するのでなく、使わせてもらっていると思っている。
「ほら、着いたぞ王都だ」
「ええっ、ちょっとロメーロ様。これは何でしょうか、私は夢を見ているのでしようか?」
「夢とは違う。現実の王都だ。見てみろ、王都だろ」
「あああああああああ、本当にダンジョンの辺りから、王都に来ちゃったああああああああああああああ!」
大丈夫かと思ったのだが、瞬間移動スキルは、それまでのスキルよりも衝撃的だったらしく、アスカは取り乱していた。




