『44話 勇者オリオン』
『44話 勇者オリオン』
待てよ、待てよ、なぜ大神官が出ていくのだ。
大神官は俺の嫁になる予定なのだぞ。
それがよりによってロメーロのところに行くとは許せるはずもなく、俺は怒鳴る。
「だめだあああああああああああああ、ロメーロのところはたあああああああああ」
「オリオン、静かに……」
「これが静かにできるかよ、俺の将来の嫁だぞ、それをロメーロのとこに行くのを見とめるわけねえええええええええええ!」
つい言ってしまったオリオン。
以前からリアンを自分の女にする計画だったけども、パーティーの一員であるし、他の団員の目もあるので、大っぴらには言わなかった。
破滅の団から出ていくようなことを言うので、つい言ってしまったのだった。
「ちょっと、オリオン、あなたリアンを嫁にする気?」
オリオンの発言に驚くハニー。
「えっ、あっ、俺、今なんか言ったか?」
ハニーが言ったのは、オリオンがリアンを嫁にすると。
つい、うっかり言ってしまったのは、オリオンが勇者になり大神官を嫁にしてやるという本性だ。
だが、言ってしまったものを、今さら否定は難しいだろう。
これも全部ロメーロのせいだ。
弱くなったのだけでも納得していないのに、大神官まで奪う気かとオリオンはムカっとしていた。
こんなことになるななんて、天才のオリオンですら読めなかったと思っていた。
「言ったし、聞こえた。リアンを嫁にすると。本当なのかいリアン?」
「私はオリオンの嫁になるつもりはないけど。何を言ってるのか意味がわからないわ。ロメーロの嫁になるのならいいけど」
オリオンと結婚する話は初めて聞いたが、はっきり言って結婚する気はゼロだった。
言われて迷惑だったし、自信満々で言うオリオンが信じられなかった。
あまりにも自分勝手だと思った。
こんな自分勝手な男の嫁になるつもりは微塵もないので、はっきりと断る。
「なんだと! ロメーロの嫁になるつもりか!」
「そんなに怒ることないでしょ。別にオリオンには関係ないでしょ、私がロメーロとどうなるか、なぜあなたが出てくるのよ」
リアンはオリオンと婚姻しているわけではなくて、これから婚姻させてやろうと思っていたから、まるでバカな奴に思われている。
恥ずかしい話だが、リアンを横取りされた気分だ。
許せなかったオリオンは、歯ぎしりをする。
勇者の自分よりも、追放されたロメーロならいいと言ったことに許せなかった。
激しい怒りが込み上げる。
胃液が逆流するのがわかった。
「そうだぜ、リアンがパーティーを出ていくのはショック。本当に出ていくか?」
「出ていきます。これは決定したこと私の中で。だから止めても無駄。ロメーロのいる国を探しだす。どこにいるか知らないけど、ロメーロが活躍すれば直ぐに居場所は判明する。それではオリオン、ボーデン、クランク、ハニー、さよなら、私はパーティーを出ていきます」
そう言ってリアンはギルドを出た。
それを止めることは誰も出来ずに見ていただけで、リアンが居なくなり、パーティーメンバーはオリオンとボーデンとクランクとハニーの4人となった。
6人いた破滅の団は、2人減ったから少なく感じるものの、これからどうなるか、途方に暮れそうだ。
オリオンは喪失感があった。
大事なリアンを失った感じだった。
使えなかったロメーロならいいが、リアンはパーティーにいて欲しかったのだが、出て行ったのは現実だった。
それもロメーロが悪いと思う。
ロメーロがリアンを連れだしたとも思えて、ロメーロに一層の怒りがあった。
冒険者ギルド内には多くの冒険者がいたので、会話が届いた。
「オリオンのパーティーは依頼をまた失敗したらしいべ」
「それと今のはリアンだろ、大神官のリアンが離脱したんだ!」
「大神官リアンて、あのリアンだろ、いいのかよ大神官のいないパーティーがSランクになれるのか?」
冒険者らは破滅の団のことを影口していて、特にリアンを失ったのが致命傷だろうと噂していた。
オリオンらは途方に暮れていた時に、ロメーロはカイザール国の森にいた。
グールマスターと会っていたのだった。




