『38話 勇者オリオン』
『38話 勇者オリオン』
「リアン、また撤退は無理だ。撤退したら、Sランクは降格させられるぞ」
「そうだよ、ハーピーごときに撤退なんて恥ずかしくて嫌です!」
「リアンも戦えば何とかなる!」
「無理ですと言ってるでしょ。相手のハーピーは私達の戦える魔物じゃないの。ロメーロが居たから楽に倒せただけのこと。オリオン、早く撤退しないと全員死ぬわよ」
リアンは撤退を求めるも、オリオンは嫌だった。
せっかくSランクにまでなったのを降格させられるのが。
ハニーがもっと回復させないからじゃないのかともオリオンは思う。
回復魔法のヒールアップが出来れば、状況は変わるはずと。
「ハニーよ、ヒールアップをしろ。クランクとボーデンと俺にだ。早くしろ!」
「ヒールアップは失敗する。今の私には無理だわ」
「ちえっ、お前がちゃんとヒールしないから、こうなるのだろうが!」
「なんですって、オリオンもう一度言ってみなさいよ」
「言ってやるよ、ハニーがしっかりヒールしないから、苦戦してるのだろ。お前が悪い、わかったか!」
オリオンが僧侶のハニーにムカついて言ったらハニーは、
「冗談言わないでよオリオン。なぜ私ばかり言うのかな。それならもっとダメなのもいるわよ、そこの役立たずの賢者が」
「なんだよハニー、俺に言ってるのか? 賢者様に向かって言ったなら、仲間のハニーでも許さねえけど」
「攻撃魔法できないくせに、よく言うわよ。今のボーデンなんて怖くもない」
「やめろよ、ケンカは!」
僧侶ハニーと大賢者ボーデンがケンカになり、さらにオリオンもケンカ口調だったのも含めて、重症のクランクがやめろと。
クランクは特にハニーを落ち着かせようとしていた。
「うるせえよ。もとはと言えば、オマエこそ、盾役をさずにハーピーを好き放題にさせているのだからな。本来ならハーピーに押されているのは、クランクのせいでもあるんだぜ」
「賢者らしからぬアホな説明ありがとう。今からお前を守る必要ねえとわかったよ!」
「痛いいいいいいいいい!」
「ハニー!」
今までハニーは後方で補助していたから平気ではあったが、ついにハニーまで攻められる。
パーティーの内部では争いが始まり、ハーピーを倒すどころではない。
仲間意識も薄まり、連携も無理だ。
いつもなら攻守にわたり、いい関係だったのが、一体どこにいったのかという低落ぶりだった。
ハーピーごときに撤退という不名誉。
もう撤退しかないのは、リアンの言うとおりになった。
オリオン的には最悪の選択でも、ハニーとボーデンとクランクの関係を見たら、これ以上ダンジョンに残るのは危険だった。
しかも傷も多く大量発生の流血もあり、撤退しかなくなるとリアンに、
「リアンの言ったのを受け入れる今はな。撤退する」
「ロメーロが居ないのが撤退の決めてなのよ」




