『37話 勇者オリオン』
『37話 勇者オリオン 視点』
あまりいい状況ではないが、クランクを最前列から撤退させた。
こんなことはパーティーが弱い時にはあったものの、強くなってからは一同もなかった非常事態だ。
「ハニー、ヒールでいいから頼むよ」
「わかった、今する」
ハニーが撤退したクランクにヒールをするも減少した体力が大きいから苦しい。
クランクがいない分は、オリオンとボーデンで補うしかない。
すでにボーデンも前にいき、オリオンも魔法でいく。
「ファイアボール」
普段ならこんな弱い魔法使いは使いたくないのだが、オリオンも魔法が使えなくなっていたから、ファイアボールくらいしかないのだ。
「だああああああああああああ!」
ファイアボールで向かったものの、ハーピーを下に見ていた。
ハーピーはファイアボール程度の魔法を難なく防御していて、逆に攻撃に転じて来たのだ。
オリオンはハーピーの攻撃をくらい体力を減少させた。
劇しい激痛が走った。
こんなザコ魔物から激痛を受けるなんて、最悪だ。
オリオンの勇者としてのプライドがガタ落ちしたのを感じた。
あまりの痛さに、言葉が出ない。
これもロメーロを追放したからなのか。
「オリオン!」
「ファイアボール!」
少しでも攻撃しないとハーピーに押されていく。
このままだとまたも負ける!
前回はスケルトンに押されてしまい、ダンジョンから撤退という汚名となった。
今は撤退できないし、撤退したら勇者の資格やSランクパーティーの地位も危ないからだ。
「オリオン、ファイアボールをもっと打て!」
「お前も魔法を!」
「ああ、ストーンブレスト!」
ボーデンも魔法を使った。
ファイアボールよりも下級の魔法なので、大丈夫だろうが、ハーピーにはキツい。
ハーピーのランクよりも低い魔法では、倒せるわけなく、ボーデンにも攻撃が届いた。
「くがあああああああああああああああああ」
「ボーデン!」
ボーデンはハーピーの猛攻を受けて、倒れていた。
ボーデンのピンチにオリオンは動き出せない。
悔しいがハーピー程度の魔物は、余裕だったはずが、大苦戦していた。
大苦戦するのは、勇者パーティーになる前の頃だったらオリオンは理解できる。
破滅の団を結成した頃の強さだったなら。
そう思うも、オリオンは破滅の団が結成当時に近い強さにあるとは思いたくはない。
それに僧侶のハニーも魔法は期待できないとなると、厳しい。
「だから言ったのに、みんな私のこと信じないからよ。ロメーロがいないパーティーには、この依頼は困難。撤退でしょ」




