『34 勇者オリオン 視点』
『34 勇者オリオン 視点』
マンドラゴラを軽快に倒してダンジョンを進む。
ダンジョンを進んで行くと、ハーピーが数匹現れた。
ハーピーは人の形をしているが、頭と胴体は人、手は翼になっていて、飛行も可能、足もまた鳥の足をしている。
マンドラゴラよりは強いか。
しかも数もいる。
こいつらを倒せば依頼は達成となる。
受付嬢からはハーピーが大量に出ており、困っているとのことだ。
勇者パーティーなら余裕で全滅してくれるという期待から、依頼されたのだ。
ギルドの信頼を一度は失ったからな、ここはSランクの名誉を取り戻したい。
「俺のフリージアサンで行く、任せろ!」
ボーデンが先に仕掛けて、フリージアサン魔法を放つ。
フリージアサンならハーピーを全滅させてしまう力はある。
オリオンの出番はなさそうだった。
賢者魔法の一つフリージアサンがハーピーに放たれる。
はずだが?
「またか、また魔法が打てない?」
あれ、どうしたボーデンよ、魔法が出ないぞ!
またか、また魔法が使えないのか?
「フリージアサンは、いつもなら打てるはずだ」
ボーデンは慌てる。
しかし実際に打てていないし、何も魔法を打てないでいたのは、ショックだ。
冷静な賢者が慌てる様は、周りのオリオンらを不安に駆らせる。
「フリージアサンは上級魔法だからです、下の下級魔法を使いなさい」
今まで沈黙していた、リアンが提案する。
バカな、下級とか上級の話なのか?
「リアンよ、上級は打てないて、俺は賢者だぜ。その賢者に向かって上級魔法は使えないて、賢者を下に見てるのかよ、はっきり言ってみろよ!」
「下とか上を言ってない。私は中級下級魔法しか使えないのを認めろって言ってるの。あの人がいない今は」
「誰か知らないがボーデン、今はリアンの忠告だと思って魔法してみな」
「わかったよ、オリオン」
とにかく下級魔法をしてみろと言うとボーデンは納得いかないけど、
「ふん、こんな下級魔法を打つことはないと思ったが。シュート!」
風属性魔法シュートを詠唱した。
シュートなら問題ないはずだ。
おそらくは……。
オリオンはボーデンの魔法を見守る。
直ぐにシュート魔法がハーピーを襲った。
「大丈夫だ、シュート魔法なら打てるぞ」
ボーデンは自信を持って言う。
ハーピーにダメージを与えたものの、シュート魔法は風属性の中でも最弱クラスの魔法だ。
小さな風がハーピーにかすり傷をつけたくらいだから、喜べるものではない。
最弱の魔物なら何回か当てれば倒せるが。
「やはりね、ボーデンは下級か中級くらいの魔法しか使えないわね、こうなったら中級魔法当たりでハーピーを攻撃しなさい」
リアンが言う。
リアンに言われてムッとしたのはボーデンだ。
彼は大賢者の異名をとる。
それゆえに、誇り高いので、今のリアンのひと言は、ボーデンを傷つけたと思われる。
「リアンめ、余計なことを言うなよ。シュートなんてロメーロと同じレベルの魔法だぞ。ロメーロの器用貧乏のスキルはFランクだろ、シュートもFランク魔法だ。てことはロメーロと俺を同じて言ってるのだぜリアン?」
ボーデンが怒りつつあるぜ。
そりゃそうだ、いくら大神官リアンでも、言っていいことと悪いことがある。
今回のリアンは、明らかにボーデンを、いらつかせるには十分だった。




