『33 勇者オリオン 視点』
『33 勇者オリオン 視点』
ロメーロがカイザール国の森でアスカ皇女を助け出すのは知らずに勇者オリオンは冒険者ギルドにいた。
パーティーで次の依頼を思案していたからだ。
いつもなら、ギルドの受付嬢から依頼を頼まれて、まぁやってやるかくらいの横柄な態度であった。
勇者パーティーだし、こちらはお願いされるまで待っている。
ギルドからお願いされて、仕方なくやってもいいぞと、言うのが快感だった。
それが今日は違う。
いつもと違う雰囲気だった。
なんだよ俺を見る空気はよ、勇者を見る尊敬の目じゃないよなとオリオンは感じる。
周りからの会話が聞こえて、
「勇者のオリオン達は、Bランクの依頼に失敗したらしいぜ」
と言い、
「スケルトンに負けて帰ってきたらしいぜ」
とも会話していた。
くそっ、もう噂になっていたのだ。
前回の依頼の失敗が広まっていたのだ。
僧侶のハニーは、
「なんでスケルトンに負けたのかな、みんなの魔法やスキルがうまく発動しなかったもんね」
ハニーの言うのはわかる。
最悪だ。
ロメーロを追放して、パーティーの雰囲気は良いはずなのにだ。
「ロメーロがいなくて良かったのに、なぜか魔法が使えない」
賢者のボーデンが不満をぶちまける。
博識のある賢者ですら、魔法もろくに使えない理由が見つからなかった。
「気にするな、また依頼受けたらいい、きっとみんな疲れていたんだよ、少し休んだし、大丈夫だ」
とクランクが言った。
クランクの言ったのがオリオンも同感だったのは、これまで難易度の高い依頼を受けてきたから、気づかぬうちに、精神的に疲れていたのだと思う。
「ただロメーロを追放したから、こんな失敗になってことはないかな。あいつは『器用貧乏』だったが」
「ありえねぇよ、ボーデン。『器用貧乏』は『器用貧乏』。膨大なスキルを使えるらしいが、全てのスキルがFランクのスキル。使えねえスキルばかり使えるのがロメーロだ。だからロメーロが追放したからとかないぜ」
「俺もそう思う。ハニーは?」
「私も。ロメーロの『器用貧乏』は、逃げるのは最強よ」
「あはははは、言えてる」
ロメーロが追放されたのが原因かというのは完全に却下された。
それでみんな疲れから不調におちいったのだろうと考えはまとまり、受付嬢から新規に依頼を受けた。
スケルトンは失敗したが、今回は大丈夫だとオリオンは伝える。
依頼はBランクで、場所はダンジョンであった。
大神官リアンも一緒である。
リアンは前回の失敗した依頼を、まるで前からわかっているような言い方をしたのが気になった。
リアンは重要な仲間でありロメーロとは同じじゃないのは代わりはいないからだ。
ギルドにいる低ランク冒険者に、俺の強さを今一度見せる必要があるので、負けられない依頼になるな。
「普通にやれば難なく達成できるダンジョンでしょ、普通に行きましょうよ、怖い魔物もいないさ」
と僧侶のハニーが言ったところで、出発した。
ダンジョンに到着してから、いつもの落ち着きを取り戻す。
タンクのクランクが調子がいい。
前列に突き進み、いつもながらの盾役に徹した。
相手の魔物は、マンドラゴラで、野菜のにんじんの形をした魔物。
スケルトンと同じくらいの強さだな。
なら今回は余裕だろう。
俺の剣術でマンドラゴラを粉砕していったのは、いつものパターンだとオリオンは余裕を出す。
やっといつもの調子が出てきた。
ハニーの言うとおり、怖くもないし、ただ使えていただけなのだろう。
知らないうちに、魔物を倒すと疲れが溜まっていたのだとオリオンは疲れのせいにした。
ハニーからは、
「これでもう怖くはないわね」
「ハニーがいればいい」
付け加える。
ハニーは少し赤くなっていたのは、オリオンを意識したからだろう。




