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『263』

『263』


「ロメーロには感謝します。農地が元に戻らない以上は、みんな農民をやめるしかない。残念ですが」


 農民ダンは悲しそうな顔で言った。

 他の農民も同じだった。

 もう農民をあきらめていた。

 別の仕事を探す決意があった。


「農民には残ですが、他の仕事を探してもらうしかない。王都の農業ギルドはも困っていますが、きっと国王は何かしらの助けはすると思います」


 受付嬢は泣きそうな農民に話すも、打つ手はないようだった。


「でも、俺らは農民しかできない」


「ロメーロ、みんな困っています。私も何とかしてあげたいわ。でもいくらロメーロでもこの状況はどうしようもないものね、無理よね」


「リアンは俺のスキルは戦闘だけではない」


「えええええっ、じゃああの酷い農地にスキルを使えるの?」


「使えると思う。俺も使ったことのないスキルを今回は使う。結果がどうなるかはやってみてだ。器用富豪スキルを使う」


 器用富豪スキルは数が膨大な数がある。

 実際に使ったのはほんの一部である。

 ほとんどは未使用スキル。

 初めて使うから俺にも効果の程はわからないのだ。

 だがやらないよりは増しだろう。


「ダン、ロメーロが農地に力を使うようです。あきらめないで農地に行きましょう」


「本当かいロメーロ?」


 ダンはリアンの説明では半信半疑だった。

 農民達と酷くなった農地に行く。

 確かに酷い農地になっていた。

 アスカも見てみて、


「農民ではない私が見ても酷いわね。これをロメーロ様は元に戻すのはちょっと難しい。スキルでも無理です」


「果たして無理かな。器用富豪スキルは神に近い力がある。俺の想像を超えた力がある。それを実行する」


「農民はみんなロメーロに期待している。農地を元に戻せるのかい、やってみて欲しい」


 ダンが俺に訴える。

 しかし俺がするのではないとだけは言っておく。


「農民の皆さん、俺は農地を回復させる為に力を使います、しかし俺が直接するのではない。農民が回復させるのです」


「えええ?」


「俺らには無理だぜ?」


「無理無理?」


 農民は俺の言葉を否定した。

 いっせいに首を振る。

 これは当然の反応と予想していた。

 農民はまだ器用富豪スキルを知らないからだった。

 戦闘以外にも器用富豪スキルが効果を発揮できるとなれば、俺はガブレラ神にも役に立てたと言える。

 今回はその第一歩となるかと思う。

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