『157話 勇者オリオン視点』
『157話 勇者オリオン視点』
「まさか、勇者の俺に聞こえるように話したと」
「そうだろうよ、スケルトンに負けたのは事実だろ。ギルドで失敗したのが、どこからか噂になった。それが広まったんだよ」
「オリオン、冒険者が笑っている、耐えられないよ。こんな状況に。最低だよ」
「ハニーよ、最低とか言うな。俺だけが悪いわけじゃないだろ」
ハニーやボーデンにも聞こえていたのはショックだ。
オリオンだけの幻聴と思ったが、違った。
しかも受付嬢も笑っているように見えた。
「受付嬢、なぜあなたも笑っている?」
「すみません、つい冒険者の会話が聞こえてしまいまして。勇者パーティーがスケルトンに負けて帰ってきたというのは、聞いたことないですし、歴史的にも珍しい珍事ではないかと思います。それで笑ってしまいまして、謝ります」
「別に謝まらなくていい」
「ぷぷぷぷ」
「ぷぷぷ!」
冒険者からは失笑がもれる。
受付嬢から笑われたのは、さらにショックだった。
自分の存在を完全に否定された気分だ。
「笑うな」
「むきになるなオリオン。ここで怒っても無意味だ」
「だってよ。あいつら俺を笑う」
「仕方ないことだ。受け入れるしかない。俺だって賢者なんだ。笑われるのは耐えられないさ。でも失敗は失敗だからな」
ボーデンは賢者の自分も笑われるのは耐えられなかった。
国家が誇る賢者として、国王からも頼りにされてきた。
騎士団からはボーデン様と呼ばれるほどになり、若い騎士団の教育も申し込まれるほどだった。
ボーデンは誇りを捨てるのへ嫌だが、ロメーロを復帰させる案を考えていた。
「オリオン、やっぱりロメーロを復帰させたらどう?」
「バカ言え、アイツを追放したのだぞ、帰ってこいなんて言えるかよ!」
「オリオンの意見もわかる。だがロメーロが復帰してまた前の強い破滅の団に戻れるなら、俺は構わないと思う」
「バカを言えよ。俺は反対だ」
「バカだと? 俺にバカと言うのか」
「済まん、ちょっと口が滑っただけだ。気にするなボーデン」
ボーデンにバカと言ってしまい、謝る。
さすがに酷い言葉だったと反省した。
しかしボーデンはイラッとしたのは周りのハニー、クランクにも伝わる。
気まずい空気になった。
調子の良かった破滅の団では絶対になかった空気だった。




