『140話 ダークエルフ村23』
『140話 ダークエルフ村23』
それでも戦いをしなければならないのが騎士の使命だろうから、何度もアスカに切りかかるも、結果は同じだ。
俺の富豪スキルの恩恵があれば、アスカの体は無事であるし、痛みもないはずだ。
とはいえ、これが重要ではなく、一番の目的はアスカを見て違いがあるかどうかで、みんな避難しているし、騎士は戦っている。
その時にみんなと違う行動をしているとしたら、そいつはかなり怪しいとなるのが俺の考えてわけだ。
アスカに注目が集まるなかで、俺だけはアスカは見ずに、周囲を見ていて、すると一人のダークエルフとは違う行動をしている風に思えた。
そのダークエルフは男性の姿をしていて、みんなが避難して行く方向とは逆の方向に走って行ったのだ。
普通に考えたら、同じ方向に逃げるのが人の心理だろうが、その男性エルフは、みんなと違う行動をしたのは、明らかに俺の目には異様に映った。
なぜみんなと違う方向に行くのか。
それはグールマスターの姿に予定外だと思ったからだろう。
そして逃げた先に行けば、何か原因がわかる。
俺が探しているのは見つかった。
アスカの演技に感謝する。
もう十分だ。
アスカの仕事は良かった。
もし怪しい者がいるなら、鑑定スキルを使えばいいと思うだろう。
そうすれば、もっと簡単に正体は発見できる。
しかし俺は鑑定スキルである、器用富豪スキルの神眼鑑定スキルは使用しなかった。
神眼鑑定では逃げる先まではわからないのだ。
逃げる先に、もっと重要な魔族がいると俺は考えていた。
だからあえて神眼鑑定スキルは使用せずに、アスカに暴れてもらったのだった。
よって一人の男がみんなと逆の方向へ向かった。
男と言うか魔族だろう。
そして向かった先が重要だ。
「どうも怪しいなあいつは。一人だけ別の方向に向かったのが見えるだろう」
「見えます。なぜですかね。あのダークエルフは怪しいと?」
「怪しいな。チークも俺と来い。あのダークエルフを追う」
「はい、行きます」
チークにも来てもらい、怪しいエルフを追って移動する。
そのエルフは村から出て行き、走って近くの森に駆け込んでいくのだった。




