第五話
そして翌日。
「おはよー」
「おはよう」
「おはよお〜」
『お......おはよう』
「......ん?ネプ、どうしたんだ?」
なんか反応が昨日と違う気が......
『べ、別に何もないよっ!』
ま、まさか......!
「反抗期か......!?」
『えっ......そ、そうだよ!僕、反抗期なだけだからっ!なんでもないよ!』
「ど、どうすりゃいいんだ!大丈夫なのか?」
「ネプちゃん、拗ねてるのよ」
「えっ?......拗ね」
『わー!わー!ち、ちょっと、何言ってるのさ!!』
「蒼空が、本当にしてほしいことを言わなかったからって......」
『も、もう!言わないでって言ったのにぃ!』
え、本当のことって......?
......まさか、第三現実のことか?
「なにか言ったのか?ネプに?」
「だって、ネプちゃんが......」
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『——それでなんだけど、創星が僕を作った理由って何?』
「えっ......えーと......蒼空と友達になってもらうためって言ってたわよ。ネプちゃんを起こす直前にね」
『......本当にそれだけなの?』
「も、もちろんよ!」
『(ジー......)』
「うっ、うぅ......」
『(ジーー......)』
「......わ、私は何か別の理由があるんだろうなーって位しか知らないわ!詳しくは創星さん本人から聞いてちょうだい!」
『......わかっ......いや、やっぱりやめとく』
「えっ、なんで?」
『創星は隠そうとしてるのに、僕がそんなの聞いたら、創星に嫌われちゃうかもしれないし......創星には言わないでね?このこと』
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「——ってことがあったのよ......」
そ、それは......
......しょうがない。別にあまり隠す必要はなかったのかもしれない。
前に、前世の記憶のことを話したときの両親の反応からして、第三現実のことを話したとしても拒絶されることはない......と思いたい。
「実は、さ。——」
そして俺は、前世にしてしまった、第三現実関連のことをすべて話した。
「う、うぐっ......ひぐっそんなことが......」
「大変だったんだなぁ......大変だったんだなぁ創星さんっ!!」
『そ、そんなことがあったんだ......』
「きっかけは、俺が世に出してしまった投影装置なんだ......世界が第三現実化してから、半装置の開発にも成功してるんだ。
どんな衝撃を与えても......それこそドラゴンでも、破壊できないようなシールド、もし破壊されたとしても、すぐに第二現実の投影を停止する機能......まぁ色々と安全装置をつけたものを作り出したから、今は大丈夫だと思うんだが......」
「なら、もう大丈夫なんじゃないの?」
「だけど、今の時点ではそれを安全に世に広める方法がない。
現在は第二現実は発見すらされていないし、そんなこと言い出したら、天宙家は、俺が未来の記憶を持っていることぐらいすぐに感づくだろう」
『そう......ん?今の時点、では?』
「ああ。それをする方法が一つある。」
『えっ!何?』
「俺が大学生になったときに、俺——創星の研究室に配属されることだ」
「えっ!そ、そんなの蒼空には学力が......あっ」
「学力は、俺の記憶があるから問題ない。だからあとはどれだけ自然に創星の研究室に配属され、創星に未来で起こること、そして対策法を教えるかだ。
......あとお母さん、僕のことさり気なくディスるのやめてほしいんだけど......」
「ご、ごめん」
『それで、結局どうするつもりなの?』
「それが——」
『ここからは僕に言わせてほしいな』
お、おう。わかった。
「——僕は、第三現実化すること自体は別にいいと思ってるんだ。
問題は、それを利用して人に危害を加えたりする人がいることだと思う」
「そう......さっき言ってた、フェアヴァルターとか?」
「うん。でも、その人も元々は悪い人じゃなかったんだ。創星さんがあまりかまってあげなかったから、間違った道に進んじゃっただけなんだよ」
か、かまって......まぁ間違いでは......無いのか......?
「......天宙家に目をつけられないようにってよく言ってるけど、そんなにやばいの?その天宙家って」
『ここからは俺が説明させてもらう』
『うん』
「ああ。日本を裏から牛耳ってる......いや、これからは表にも出てくるようになるが......血筋的にも天皇家と深い関わりがある家だ」
「て、天皇様と......」
「......そしてその権力を笠に着て、裏ではやばいことをやってるんだ。拷問、人体実験、洗脳、etc...
とにかく、目をつけられたら即終了だ。
俺の両親は別だったが......あいつらは、血が繋がっていたとしても自分の利益の為なら構わず相手を痛めつけるような奴らだ。
......俺の両親も、あいつらが原因で死んだんだ」
前世では天宙家では俺しか第二現実にアクセスできなかった。
その理由を解明するため......いや、自分の力にするために俺は拷問を受けそうになった。
だが、両親の手によってそれはギリギリで防がれた。
......二人の命と引き換えに。
そして天宙家の当主が亡くなったため、時期当主は俺になった。
いくら頭の狂ったあいつらでも、当主を実験に使うことはなかった。
そのため、それからは俺は天宙家絡みの命の危険がなくなった。
......両親が死んでしまったからこそ俺は命の危険がなくなったわけだが、そんなことわかっていても両親が死んだときは辛く、悲しかった。
その頃で唯一俺に優しく接してくれた人達だから。
その頃は知らなかったが、今は知っている。
第二現実に人をデータ化して保存することが可能だということを。
......それを知ったのはフェアヴァルターとの戦いの時。
かつてともに戦い、散っていった仲間が......敵の手によって現れ、俺たちに牙を向いてきた。
その時ご丁寧にフェアヴァルターが教えてくれたよ。
......話は戻るが、創星が方法を知ってさえいれば、両親を第二現実に一度移し、投影機で投影することによって再び会うことが可能なのだ。
表向きには死んだことにしないといけない。
そうじゃないと、創星に天宙家関係の死の危険が訪れてしまうからだ。
創星が死ねばこの世界も安全なままじゃないのか?と思う人もいるかもしれないが、創星は俺だ。
俺が死ぬことをなぜ黙認しなければならない。
それも頭のおかしい奴らの私欲のためにだ。
もし、万が一第二現実へのアクセス権があいつらに渡ってしまった場合、現実世界の第三現実化はもちろん、他にも様々な悪いことが起きるだろう。
世界の崩壊すらもあり得る。
......勘のいい人なら思ったかもしれない。
『フェアヴァルターがいないんだしそれでいいんじゃないか?』
と。
勿論天宙家のあいつらに渡ったら、私利私欲のためにデータを第三現実に投影するかもしれない。
(世界が第三現実化したあとは投影機がなくともデータを投影できる。)
だが、それを抜きにしてもとある問題があるのだ。
......第三現実でのみ起こるが、人間に神代の神の魂が宿る現象......神憑が稀に起こるのだ。
それが起こった人間は人格が神の人格に上書きされ、前の人間の人格は消滅する。
運がよく、神格が低い神だったら、その人間の人格のまま、神格を手にする場合もある。
だが万が一、主神クラスの神が神憑したら、
その主神の戯れで世界はすぐに滅ぶだろう。
今、神はこの世界に存在していない。
すべて魂......データ化され、第二現実の中に眠っている。
俺ですらアクセスできない深層に。
だが世界が第三現実と化せば、割と高い可能性で神憑が起こる。
俺と瑠璃がいたから神憑者の暴走は抑え込むことができ、それによる世界滅亡はなかったが。
俺が......創星が死ねば、それも無理になる。
自惚れてるわけではないが実際問題、味方の中で俺と同等以上の神格を持っており、神格の取り扱いに慣れている人間は......瑠璃くらいしかいなかった。
だがそれも今のこの俺の話である。
現時点での創星は神格の取り扱いに慣れていない。
だからこそ俺が伝えなきゃいけないわけだが。
それに、創星に対してもう一つのアドバイスをしなければならない。
研究室に投影機のデータを置いたまま、遠出をするな、とな。
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