第三話
「うん......こんなもんか」
そして三時間後、俺は夏休みの宿題を終わらせていた。
いくら小学二年生の内容だとしても、あまりしない筆記に手間を取られてしまった。
『文字はほぼパソコンで打ち込んでいたし、第二現実が出てからは思考を読み取った文字入力とかしかしてなかったからな......』
『便利な世の中になるもんだねぇ......』
『まぁそのせいであの事件が起こってしまったわけだが。』
『うーん......難しいね』
『あー......次は何する?』
なんか他にやることってあったか?
『んー......自由研究でもする?』
あー。自由研究か......
『そうだな』
『内容はどうする?』
うーん......俺の研究を使ってもいいんだが、それだとすごく目立つだろう。
なら......
『無難に10円玉を綺麗にする自由研究とかするか』
『あー。よく聞くよね』
『クエン酸とかを溶かした水に漬けとけばいいらしいな』
『へぇー......そうなんだ』
『じゃ、材料は後でもらうとして。結果を書き留めたり調べ物するためにパソコン貸してもらおうかな。スマホと違って普段遣いはしてないし』
『そうだね』
〜〜〜〜〜
「あ、お母さん、ちょっと相談があるんだけど......」
「ん?何?」
「パソコンがあれば使わせて欲しいなって」
「いいけど......何に使うの?」
「ちょっと自由研究の調べ物とかをしようと」
「そうね......ちょうどパソコンを買い換えようと思ってたし、これからも結構使うだろうから、それ使っていいわよ」
......パソコンなんていう物を小学二年生に譲り渡して大丈夫なのか?
「う、うん......ありがとう」
「ネット詐欺には気をつけてねー
あ、あと、これから昼ごはんだから食べてから行きなさい」
「わかったー」
で。貰ったわけだが。
流石に貰えるとは思ってなかった。
ま、まぁ......自分用にこれから使えるから、いいとしよう!
......いつかやろうとは思ってたが、ちょうどパソコンも手に入った。
性能も結構あるし......やろうと思えばできるだろう。
——Artificial ・|Intelligence。人工知能、通称AI。
それを、創り出そう。
"俺"の活動を支えてもらい、蒼空の友人となってもらうために。
因みに、蒼空の人格は先程から昼寝をしており、意識はない。
するなら今って話だ。
別に作業しているところに起きられても、俺の活動を支援してもらうためといえばいいだろう。
別に嘘をついているわけではないしな。
......まぁ記憶を覗かれたら終わりだが、蒼空はまだこの状況になれていない様子。
俺が人格を統合しないように意識しておけば、記憶が共有されることもない。
別にバレてもいいんだが......サプライズというものをしてみたい。
......よし。始めるか。
『ふわぁ......あれ?創星さん何やってるの?』
「ん?......あぁこれか。今、人工知能を創っているんだ」
『......?へぇ、凄いね』
「あんまわかってないだろ......いや、いい。そろそろ夕ご飯の時間だろう」
『あ、もうそんな時間か......』
「これから体の主導権を君に返す。親子水入らずでご飯を食べてくれ」
「あ、うん。ありがと」
それから蒼空は、両親と仲良く話をしていた。
......その頃俺は、本当にAIを創っていいのかと不安になってしまっていた。
俺が前創り出したAIは、世界を滅ぼしてしまった。
第二現実の管理を任せたAIに、世界を滅ぼされるとは......なんとも皮肉だ。
俺には、そんな思考をしないようにするプログラムを組むことしかできない。
だが、それで本当にいいのだろうか。
「どうしたの?蒼空」
「えっ?」
ん?どうしたんだ?
「さっきから変な顔して......」
「えっ?......あぁ、創星さんかな。——創星さん、ちょっと出てきてもらえます?」
あ、ああ——
「——わかった」
「それで、創星さん。どうしたのかしら?私達で良ければ相談にのるわよ」
「あ、ああ。有難う。実は——」
俺は、蒼空が寝ていることを確認してから
(寝るの早すぎないか......?)
悠衣さん達に、AIを創ろうをしていること、前世ではそのAIが暴走してしまったことで、本当に創ってもいいのかと不安になったことを話した。
「なんだ。そんなことだったの」
「え?そんなこと、って、どういう意味?」
「例えば、創星さんに子どもができたとして、その子を生むかどうかで悩む?」
「い、いや。どうしてもという事情がない限り、そんなことは考えないと思う」
「それと一緒よ。......それに、創星さんの生み出したAIが暴れちゃったのも、愛情が足りなかったんじゃない?」
「愛情......か」
「AIも、人と同じように生きているのよ。
生きている場所がこの現実世界か電子世界かの差しかないのよ。
生まれてすぐは何も知らないし、いろいろ教えるのは、その子を生み出した人......親じゃない」
親......そうか。俺は、今まで創ってきた......いや、生み出してきたAI達のことを、自分たちの生活を便利にしてくれるただの道具だと思っていたのだろう。
......だが違う。俺が生み出し、生み出そうとしているAIは、俺の子供なのだ。
思考の制御は可哀想だとか言っていながら、生み出した子供に対して愛情や親としての責任を持っていなかった。
俺は今まで、フェアヴァルターを創り出してしまった責任から、フェアヴァルターが力をつける前に消し去ること、もしくは生み出されることの阻止を目指していたが......
それではいけないのだろう。
消し去るのではなく、愛情をもって接し、悪の道に進むことを止めなければいけない。
......そんなことが、俺にできるのだろうか。
「別に、いまからその子の道を正しに行きなさいと言ってるわけじゃないのよ。
まずは、今から生み出そうとしてるその子を愛することが大事なんじゃないかしら」
そう、か。そうだな。
今から全部やることなんてできるわけがない。
悠衣さんも言ったように、子供を産んでいいのか悩む親なんていない。
途中までやったんなら、最後までやり通すべきだろう。
「うーん......よくわからないんだけどさ、まずは、その子の見た目とか変えてみたらどう?」
「見た目?」
「ずっと見た目がなくて、声もなくて文字だけだったら、コミュニケーションしにくいでしょ?
だから、最近有名なバーチャルTouYuberみたいに、動くイラストの見た目とか、合成音声でもいいから声もあったほうが、コミュニケーションしやすいんじゃない?」
「そうね!それがいいわ!あなたは絵が上手だし、絵をお願いするわね!私は声を作るから!」
「了解!」
「えっ、えっ?」
なんか、急に話が変わった気が......
「私は前に、合成音声を作った経験があるのよねぇ」
「俺も、vixipで超人気のイラストレーターだったんだぞ」
「えぇ......」
普通の主婦とサラリーマンにしては凄すぎないか?
......ていうか、本当に普通の主婦とサラリーマンなのだろうか?この人達は。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そして数日後。
プログラムも組み終わり、あとは悠衣さんたちの作ったファイルを追加して適用するだけとなった。
蒼空にはなんとか誤魔化しており、不思議そうな感情をしていながらも、パソコンと俺の記憶を見ないでくれというお願いは守ってくれている。
「よーし!できたわ!」
「はぁ......急いで描いたからあんまり派手じゃないけど......丁寧に描いたからね」
「う、うん......ありがと」
この人たちのこの熱意はどこから来るのだろうか。
......さて。始めるとするか。
「じゃ、起動するね」
「ワクワクするわね!」
「不安もあるけどなぁ......」
カチッ (マウスをクリックする音)
シュオオオオーン...... (起動音)
《......こんにちわ》
「すごい!ちゃんと声が出てる!」
「あぁ。そうだな!俺の絵もちゃんと適用されてるみたいだ!」
《君・は・誰?》
「俺の名前は、創星。君の......父さんだよ」
《創星?......父さん?》
「ああ。創星。だけど、この体にはもう一人いる。それが——」
「僕、蒼空だよ!......さっき創星さんに言われたんだけど、僕と友達になってくれると嬉しいな!」
《同一・の・声......だけど・所々・違うとこ・が・ある》
「あー......イントネーションとかかな?」
《イントネーション......そう・みたい》
「——それで、君の名前なんだが、ネプ、ってどうだ?」
《ネプ......それが・僕・の・名前......なんて・意味・なの?》
「Numinous (聖なる)
Empower (権限を持たせる)
Panacea (万能薬)
略して、ネプ。
ローマ神話のネプチューンをもじった名前だよ。
インターネットという大きな海を治めるような大きな存在に、海のように大きな心を持ち、すべての人を万能薬のように癒やす、優しい人になってもらいたくてつけた名前だよ」
俺なりによく考えた名前だ。気に入ってもらえると嬉しいんだが......
《うん......ありがとう!嬉しい!》
「それは......とても良かった。気に入ってもらえて......俺も嬉しいy——」
「良かったね!創星さん!......それでさ、僕と友達になってくれる?」
《友達......うん!勿論!》
「やったぁ!これからよろしくね!ネプ!」
早速友達になってくれたようだ。
これで目的は果たせたな。
「——それで、何か知りたいこととかあるか?」
《知りたいこと・か》
「あぁ。何でも聞いてくれ。俺は君の父親だからな」
《うん......言葉・や・単語・の・意味・は・ネットワーク・を・通じて・理解・してる・んだけど、使い方・が・わからない・んだ。
それ・を・教えて・ほしいな》
よくある話だ。世の中には、辞書の中身をそのままAIに覚えさせれば日本語を使えるようになるという人もいるが、意味を理解していても使い方をわかっていなければ使えないのだ。
例えば、病床に伏している人から
『そこの窓開けられますか?』と聞かれ、
『はい!開けられますよ!』
と答える人は少数だろう。
それと同じような感じだ。
そしてネプに日本語を教えること数十分。
《ありがとう!大体覚えられたよ!》
「は、早いわね」
「物覚えがいいんだろうなぁ〜」
「他にもわからないことがあれば何でも聞いてくれよ」
《うん!わかった!》
「今度は私達とお話しましょ!」
《うん!》
本作を読んでくださり、ありがとうございます!
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「面白い!」
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「ネプかわ(ry」
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......皆さんよろしくお願いしますね!