第一話
※今話の文章中の"俺"、"僕"は人格的な意味をしています。
"俺"は天宙 創星の人格、
"僕"は天音 蒼空の人格です。
主人公、蒼空は、創星と蒼空の人格と記憶を持っていますが、多重人格とはまた別のイメージです。
今話は人格が一つに混ざっているので、会話以外の部分は創星、蒼空両者の意思です。
「そらー!またなー!」
「うん!そうまくんもまたねー!」
僕は天音 蒼空!小学二年生だよ!
明日から待ちに待った夏休み!来月は......
『ザ...ザ......明、日も――の研――か。
たま――あ、る休――ぐ、らい――――たいもの――――な』
うん......?なんだろう今の声......?
声っていうより、聴覚野に直接電気信号を流された感覚に近...あれ?ちょうかくや......?でんきしんごう......って、何?
ゔ......頭......が......!!
『何故......!?何故だ!!何故、危険だと解っているのに強行する!!人が大勢死ぬことになるんだぞ!!』
『......だ、誰か!!助け......!』
『あ、あなた!あなたーー!!』
『パパーー!!!』
『おい......嘘だろ......?待ってくれよ......なんなんだよ......なんなんだよこれは!!!
この地獄はよ!!!!』
『......やぁ、キミは......ふむ。天宙家の人か。
......ん?...いや、すまない。今のこの世界では、家系なんて関係ないな......ボクは、月夜 瑠璃。
キミに、協力してあげるよ』
『創星、キミは逃げるんだ!こいつは今のボク達に敵う相手じゃない!君が生きてさえいればまだ反撃の兆しはある!
......ボクの力だったらこの異空間から外に転移させられる!
......ボクもすぐに追いかける。だから、逃げるよ!』
『はぁ。キミは、本当に強情なやつだな。
......いいよ。地獄の底までお供してあげるよ!』
『すまないね......やっぱり、ボクは......かなわなかった......
ボクはね、君のことは割と嫌いじゃなかったよ。異性として好んでいたとも思う』
『ははっ......そうだな。
今更言うなんて......ボクは本当に......
......ごめんね創星。君を逃がすことさえ、出来なかったよ』
『......そんな、泣きそうな顔しないでよ。
先に待ってる......とでも言えばいいかな?
できれば、あと50年くらいは来ないでほしいけど......この状況じゃ、無理かなぁ......』
あ、あ、あぁ......アァァァ!!!!!
どうして今まで忘れてたんだ!
僕は...俺は瑠璃を助けることができなかった!!
今は......2042年か。......まだ、16年ある。
いや......もう、16年しか無いのか。
ていうか、何故俺は過去へ......?
まず考えられるのは、死ぬ直前に見る夢、もしくは死後の世界説だ。死ぬ前に自分の見たい夢を見ているとか......
......いや。そんなことは考えてもわからない。
ならば考えるだけ無駄だろう。
早く帰らないとパパとママに怒られるし......
......あぁ、そうか、僕には家族がいるんだった。
どう言われるのか不安だなぁ。
パパもママも嫌いにならないでほしいなぁ。
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「ただいまー!」
「おかえりなさい!蒼空!遅かったけど、どうしたの?明日から夏休みだから早く帰るって言ってたじゃない」
「ご、ごめん」
実はもう五時過ぎ。下校時間が4時だから、なかなかに遅い時間だと思う。
「早くお風呂に入りなさい。もう沸かしてあるから」
「あ、ありがと。入ってくるね」
「はーい」
さて、どうしよう......
僕、蒼空としては、両親に隠して行動したとしても、体はまだ7歳。いずれバレると思う。
そしてバレたときに、何故隠していたのかと怒られることになる。
それは嫌。絶対に。
俺、創星としては、親とは限らず、誰かしら後ろ盾があったほうが都合がいい。
それに、家という活動拠点もあるわけだし。
蒼空の、今まで育ててくれた記憶からも、親とは離れたくない。
それに隠し事も良くないと思うし。嘘もなぁ......
「ふぅ......俺としては約5年ぶりの入浴か......」
ずっと忙しかったからなぁ......たまにはゆっくりしたかったが......あの惨状では無理だった。
「瑠璃は、どこにいるんだろうか」
ずっと一緒に戦ったあの娘――俺の目の前で死んだ、瑠璃は、
今はまだ生きているはずだ。
......でも、瑠璃は"創星"が好きなんだ。
それも数年間一緒に戦った俺と。
今の、それも"蒼空"としての俺は気にも止めないだろう。
だから、瑠璃のことは、後回しでいい。いいんだ。どうせ会っても向こうはわからないだろう。
それよりもやることがある。
まずは両親への説明だな。
「......よし。あがるか」
「お風呂あがったよー」
「ん。わかった。お父さんもうすぐ帰ってくるって」
...打ち明けるなら、夕飯の時がいいかな?
両親どちらとも居るし。
「......うん......ねぇお母さん、大事な話があるんだけどさ......」
「ん?なになにどうしたの?通知表?」
ゔっ......そういえば"僕"はあまり頭は良くないんだった......
「......いや、違う......違わないけど違う話だよ。それと、この話はお父さんも帰ってきてから話したい」
「え、えぇ。わかったわ。......じゃあ、ご飯持ってくの手伝ってくれる?」
「わかった」
「ただいまー」
どうやらお父さんが帰ってきたようだ。
「おかえりなさーい」
「おかえりー」
「ご飯ついでるから早く手洗いしてきてー」
「りょーかーい」
......心の準備ができているとは言い難い。
もしかしたら気持ち悪いと言われ、家を追い出されるかもしれない。
「ねぇー悠衣さーん、つめ変えの石鹸どこにあるっけー」
「棚の中じゃないかしらー」
そんなことをする家族ではないと"僕"は信じているけれど、やはり怖い。
『ガサゴソ......』
「あれー?無いよー?」
「おかしいわねぇ......あ、棚の上じゃない?」
だが、前世で周囲の人間を見て学んだことがある。
隠し事をしたり、嘘をついたりする人間は、遠からず人に見捨てられて悲しい人生を送っていた。
「うーん......あ、これかな?」
「早く戻ってきなさいよー」
「わかってるー」
まぁ当たり前のことだと言う人もいるかも知れないが、それをしてしまう人間は意外といる。
それに"俺"としては、"僕"の両親に頼れなければ、誰に頼っていいかわからない。
「あ!これシャンプーだった!」
「何やってるのよー!同じような場所にあるんじゃないの?」
"僕"は前世の知り合いとは誰とも面識はない。
それに、"僕"の友人は年齢は8歳ほど。
学校の先生もこの話をする程に信用できない。
仕事に関係のない話だ。どうせ軽く流されるに決まっている。
「これは......コンディショナーかー」
「もう......何やってるのよ......早く来ないとご飯冷めるわよー」
「ごめんごめーん!」
別に全国の学校の先生にケンカを売ろうってわけじゃない。
ただ、"僕"の担任の先生はそういう性格の人だってだけだ。
「あっ!......なんだ...漂白剤か」
「どうやったら詰め替え石鹸と漂白剤を間違えるのよ! 容器自体が違うじゃない!」
「いやーそれほどでもー......」
「褒めてないわよ......まったくもう......蒼空、ちょっと待っててね」
......。
「ここにあるじゃない!!」
「あっ、そんなところに......」
「すぐ目の前じゃないのよ......はやく戻ってきなさいよ!」
「わかってるー」
......何か色々あったようだが、もうそろそろお父さんが戻ってくるようだ。
「さあ、食べようか!」
「やれやれだわ......」
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