第3話 ~お買い上げ~
奴隷商会には様々な人間が訪れる。
金満商人にゴツい軍人、
明らかにヤバイ雰囲気な奴まで
なぜ自分はこんな状況にあるのか
未だに理解出来ない
………だが、
この状態から逃れる手っ取り早い方法は
良さげな主人に自分をお買い上げして貰うこと。
この二週間は生き残るだけで精一杯で
服はボロボロ、
一日一食のせいで体重は……
何故か変わらないw
だけど一日一食なんてひもじすぎる。
一刻も早くここから抜け出さなくては。
まずは前向きに
自分をアピールする事にした。
言葉が通じなくても
俺には身体言語がある!
見よ!
この素晴らしいオーバーアクションを!
今なら間違いなくリアクション芸人の
出◎師匠を越える自信があるよw
知っててよかった身体言語!
目指せ芸人!
ありがとう!ありがとう身体言語~!!
……ふぅ、
やり過ぎて腰が痛くなりましたw
ちょっとテンション上げすぎて
可笑しなことになってるわ。
身体が若返ったせいか精神が引っ張られる感覚か。
いかんね、
気持ちを切り替えて次行こつぎ。
お、今度はべっぴんさんが来たよ。
アピールっアピールぅ♪
見せつけてやるぜ!
うなれ我が三段腹!
れっ~つ、しぇいきんぐぅ!!
ぶるるるるるるるんぶるるるるるるるぶるるるるるるるんっ!
ぶるるるるるるるぶるるるるるるるぶるるるるるるるぶるるるるるるるぶるるるるるるる!
唄って踊れるおでぶを目指すw
みなぎるぜ!
俺の熱いパトスを解放してやんぜ!
=͟͟͞͞(๑•̀=͟͟͞͞(๑•̀д•́=͟͟͞͞(๑•̀д•́๑)=͟͟͞͞(๑•̀д•́)))
フォォォォォォォオオオ~~!!!!!!!!!!!!
「ふふふ。なにこの子、面白いわね」
えっ!?
日本語が聞こえるだと!?
「あなたは私と同じ日本語が話せるんですか!?」
リンネル製薄茶色のペチコートが良く似合う彼女は
この薄汚れた牢屋にあって掃き溜めの中の鶴のようだ。
「日本語?何かしらそれは?ただ英語なら貴方も話しているじゃない」
彼女は流暢な日本語を話しているはずなのに英語と言う。
むう、これは研究案件だが
今は貴重な通訳を逃す訳にはいかない!
「そうなのですね。この出会いもひとつの縁です。お嬢様、どうか私を雇ってみませんか?」
素早く足を揃え右手を後ろに回し左手を胸に当て
恭しく畏まって敬う。
それを見て彼女は唇に手を当て微笑む。
「そうね、ちょうど英語の話せる補佐役が欲しかったのよ。
貴方は、何ができるの?」
「私は交渉と操船に自信があります。役にたってみせますよ」
へぇ、っと頷くと
感心したように上目遣いで覗き込んできた。
「そうね、あとは値段かな」
そう言うと彼女は奴隷商人となにやら交渉しだし、
数分ほどで無事交渉が成立したようだ。
~~~~~~~~~~~~
一階にある庭に移り二週間振りに水浴びをし、
すこし小綺麗なチュニックを着させられて待合室へ。
待合室では優雅に紅茶を嗜む彼女が佇む。
「あら、だいぶ綺麗になったわね」
紅茶カップはマイセンであろうか
気になるところだが先ずは感謝を
「私はダーノ=レオンと申します。
お申し付けの際はダーノと御呼びください」
先程と同じように恭しくお辞儀する
「うん。じゃ、早速行きましょうか」
紅茶を飲み干しカップをテーブルに戻す。
ん~やはり初期のマイセンっぽいなぁ
持ち帰って嫁の土産にしたいもんだ。
いつ帰れるかわからんけど
「何処までもお嬢様のお供をさせて頂きます」
「ダーノ。お嬢様って呼び方はやめて、シンシアと呼んで」
そう言うと懐から鍵を取りだし、俺の首輪をそっと外す。
「宜しいのですか?シンシア様」
奴隷というものは
首輪をつけて物扱いにされるはずだ
「まだ固いな~、もっと砕けた口調で良いのよ。
ちゃんと働いて自分を買い取れば問題はないわ。
首輪は見映えが悪いしね」
「ありがとうございます!そのうちに改めますよ。
ではまずは何処に参りましょうか?」
最大限の角度でお辞儀をし、改めて敬意を表す
それを見て
彼女は満面の笑みを浮かべてこう言った
「まずは本拠地である、ロンドンに戻りましょう」